長崎市小島養生所関連遺構の保存に関する要望書(回答2)

長 議 議 第393号
平成29年12月21日

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢  敦 様

 

 

長崎市議会議長  野 口 達 也

 

長崎市小島養生所関連遺構の保存に関する要望について(回答)

 

 日頃より長崎市議会の運営に格別のご支援を賜り、感謝申し上げます。

 2017年12月12日付埋文委第2号によりご要望をいただきました件につきましては、平成29年第5団長崎市議会定例会における第151号議案「長崎市の小島養生所等遺跡の完全保存に関する住民投票条例について」及び第92号議案「工事の請負契約の締結について(仁田佐古小学校建設特殊基礎工事) Jの審査の経過並びに結果についての概要をお知らせすることにより、回答にかえさせていただきます。

 

1 審査概要(平成291212日、13日及び14日の教育厚生委員会)

(1 ) 151号議案「長崎市の小島養生所等遺跡の完全保存に関する住民投票条例について」

 委員会におきましては、条例制定請求代表者による意見陳述の後、同請求代表者等に対し、全面的な遺構の発掘調査は終了しているという市の見解と全面調査を求める請求内容の相違点や、早期の学校建設を求めている地元住民の声に対する見解、遺跡を完全保存する場合に係る費用とその財源に対する考え、国の史跡指定は困難とする文化庁の見解に対する考え、6年にも及ぶ学校建設に係る地域住民との協議について真剣に協議がなされていなかったとする考えの真意について質しました。

 その後の審査におきましては、教育行政に関する重要な案件であることから、教育長に対して出席を要請した上で、理事者に対し、市は全面調査が終わったとするものの、請求代表者等からは、まだ調査を求められていることへの見解について質しました。

 この点、理事者から、市の文化財審議会からの追加調査の要請があったため調査を行ったところ、新たな遺構が出てきたが、それらは全て9月28日に開催した文化財審議会で報告しており、全容が判明したとの結果が出ているため、調査は終了したと捉えているとの答弁がなされました。

 さらに、委員会におきましては、理事者に対し、日本医師会長や長崎大学医学部長などから出されている要望への対応が必要となる中、長崎大学学長と医学部長の連名による、積極的に協力する意思に変更がないとする9月30日付の文書と方針が変わりない旨については、12月5日の学長からの口頭の回答のみであることに対する見解について質しました。この点、理事者から、長崎大学からの9月30日付の文書にあるように、大学は、市が多様な観点から総合的に判断するものと理解するとされていることからも、市としては遺構の保護と学校建設のそれぞれの最大限の成果を求めて、両立の方針で進めさせてほしいとの答弁がなされました。

 そのほか、学校統廃合に係る地元住民との合意形成に至るまでの経緯、初めから佐古小学校を想定し、市がその方向に誘導したとする請求代表者等の見解に対する市の考え、遺構の露出展示に当たり、長崎大学が所有する古写真を活用するなど大学と連携を図る考えの有無について質すなど、内容を検討し1たしました。

 さらに、委員会におきましては、長崎大学の意向については、理事者の説明と請求代表者等の説明とで食い違いがあることから、長崎大学との協議を行った田上市長に大学の意向を直接確認するため、市長の出席を要請いたしました。この点、市長から、12月5日に河野学長から電話があり、9月30日付の文書の内容については、前学長時代のものであるが、新学長になってもこの内容は変わらない。また、当日示した2つの保存案については、市文化財審議会の委員の意見などを聞いた上でし最終的な判断については市の専権事項であるので、市で決めてほしいという趣旨であった。そして、12月12日付で医学部長名も含めた文書が出ており、大学の中でさまざまな動きがあるかもしれないが、大学全体としての意思は9月30日の文書と何も変わっていないということをしっかりと伝えてこられた内容で、あった。市としては、学校建設と遺構の保存は2っとも価値のあることであるため、その総和が最大になるように両立を目指してしっかりと取り組んでいきたいとの答弁がなされました。

 さらに、市長に対して、日本医師会などの機関から提出されている要望書への対応の考え方について質しました。この点、市長から、住民投票条例請求に対する意見書や9月30日付の長崎大学からの文書を基本に回答をしていきたいとの答弁がなされました。

 その結果、一部委員から、学校の建設、遺構の完全保存を訴える両方の声に応えていくためには、一度立ち止まり再考すべきであり、幅広い市民の意見を聞くために住民投票を行うべきとの立場から、本議案に賛成したいとの意見が出されました。

 一方、体育館に併設する展示については、子どもたちと分けた出入り口をっくり、体育館の外観については、誰が見ても旧養生所跡とわかるような外観となるよう十分検討してほしいとの意見が出されるとともに、原案に反対する立場から、小島養生所等遺構の完全保存という専門的な判断を要する個別の政策課題について、その是非を直接、住民投票に委ねようとすることには違和感を禁じ得ない。15,776人の署名の重みは理解するが、学校建設の早期着手を求める地域の強い要望もあっており、住民投票に付することが地域を二分することにつながりかねないため、地域との協議を積み重ねて政策決定されたプロセスを覆してまで、全市民に問わなければいけないとする主張には、くみすることはできない。市が小島養生所等の遺跡の保存と学校建設の両立を目指す方向性を示していることは、本請求の趣旨や、学校建設を待ち望んでいる児童、保護者、地域住民の願いを酌み取った判断であると評価する。遺構の最適な保存方法とされる埋め戻しによる保存を基本とした形で、現状のまま保存し、一部を展示することに賛成するため、全市的に意見を問う住民投票にはそぐわない。子どもたちに新しい学校を早く建ててほしいという強い要望があり、地域住民も期待しているが、住民投票をすることにより、開校する時期が延びることなどを主な論拠とする反対意見が出されましたので、採決の結果、賛成少数で原案を否決すべきものと決定いたしました。

(2) 第92号議案「工事の請負契約の締結について(仁田佐古小学校建設特殊基礎工事)」

 本件は、仁田佐古小学校建設特殊基礎工事の契約を締結しようとするもので、先の9月定例会に提案されたものでありますが、さらに慎重な審査が必要で、あったため、継続審査としていたものです。

 委員会におきましては、全面的な遺構の発掘調査は終了しているという市の見解、今後、遺構が発掘された場合に建設工事が中断する可能’性の有無について質すなど、内容検討の結果、教育委員会が進めてきた合意形成のあり方については問題があり認められないこと、また、今回の工事により遺構の価値が損なわれることで、二度と国指定文化財に成り得ないことから認められないことなどを主な論拠とする反対意見が出されました。

 一方、市の全面的な発掘調査は終了しており、学校建設と遺跡の保存については、長崎大学からは、市の専権事項であり、遺跡の保存方法について報告した結果、大学からは今後の遺構保存・活用については協力するとの回答を得ているなどの賛成意見が出されましたので、採決の結果、賛成多数で原案を可決すべきものと決定いたしました。

 なお、委員会におきましては、附帯決議を付すべきとの意見が出され、養生所・医学所遺跡は近代的な医学・医療の、分析究理所遺跡は近代的な薬学・化学・物理学の発祥の地であり、それらの遺跡の保存と活用に当たっては、長崎大学を初め、日本医師会、長崎県医師会などの医療関係者の意見を聴取するとともに、これまで出された意見などを尊重し、進めることを要請する旨の附帯決議を全会一致で決定いたしました。

2 議決結果(平成29年12月14日の本会議)

(1 ) 第151号議案「長崎市の小島養生所等遺跡の完全保存に関する住民投票条例について」

記名投票を行った結果、原案に賛成7人、原案に反対31人で否決となりました。

(2) 第92号議案「工事の請負契約の締結について(仁田佐古小学校建設特殊基礎工事)」

賛成多数で可決となりました。

(3) 議第9号議案「第92号議案「工事の請負契約の締結について(仁田佐古小学校建設特殊基礎工事)J に対する附帯決議について」

全会一致で可決となりました。
※同附帯決議を添付いたしております。

 

第92号議案「工事の請負契約の締結について(仁田佐古小学校建設特殊基礎工事)J に対する附帯決議

 本議案は、仁田佐古小学校建設特殊工事の契約を締結しようとするものであり、慎重な審査を行うため、継続して審査を行ったところである。

 仁田佐古小学校の建設については、長年、地域住民との協議を重ね、平成26年11月に校地を旧佐古小学校跡とする方針を決定しているものの、旧佐古小学校解体後、小島養生所や分析究理所の遺構の出土があったことから、これまで遺構の価値について長崎市文化財審議会ヘ諮問してきている。

 このような中、平成29年9月28日の同審議会において、分析究理所の埋蔵されている残存遺構は、ほぽ完全に検出したとの審議結果を出されていることからも、平成29年9月に継続審査とした理由の1つである同審議会や長崎大学が求めていた調査については完了したものと考える。

 また、継続審査としたもう1つの理由である長崎大学との調整については、協議が難航し、最終的に文書による回答に至っていないままの状態で議案審査に臨まざるを得ない状態となったことは、大変遺憾であると言わざるを得ない。

 さらに、継続審査の決定後に、日本医師会を初めとするさまざまな団体から、養生所等遺跡の保存についての要望が出されていることについては、市は重く受け止める必要がある。

 しかしながら、長年の地域住民との議論を行ってきたことによる年月の経過に加え、既に現時点、においても当初計画より1年近くの遅れを生じていることからも、子ども達をこれ以上待たせることはできないため、仁田佐古小学校建設特殊基礎工事については速やかに着手すべきと考える。

 なお、寄せられている要望の趣旨を十分くみ取り、今後、同工事に着手するに当たっては、次の点について強く要望する。

1 養生所・医学所遺跡は近代的な医学・医療の、分析究理所遺跡は近代的な薬学・化学・物理学の発祥の地であり、それらの遺跡の保存と活用に当たっては、長崎大学を初め、日本医師会、長崎県医師会などの医療関係者の意見を聴取するとともに、これまで出された意見などを尊重し、進めること。

 

  平成29年12月14日

長 崎 市 議 会