高輪築堤跡の一般公開拡充を求める要望書の提出について

埋文委 第6号
2021年10月14日

 

文化庁長官 都倉 俊一 様
東京都教育委員会教育長 藤田 裕司 様
港区教育委員会教育長 浦田 幹男 様
東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 深澤 祐二 様

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤沢  敦

 

高輪築堤跡の一般公開拡充を求める要望書の提出について

 

 

 標記の件について、別添書類のように、高輪築堤跡の一般公開を大幅に拡充することを要望いたします。

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2021年10月29日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

 

 

1 提出書類
  別添のとおり 1通


文化庁長官 都倉 俊一 様
東京都教育委員会教育長 藤田 裕司 様
港区教育委員会教育長 浦田 幹男 様
東日本旅客鉄道株式会社 代表取締役社長 深澤 祐二 様

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤沢  敦

 

 

高輪築堤跡の一般公開拡充を求める要望書

 

 「品川開発プロジェクト」にともなう事前の発掘調査において検出された高輪築堤跡については、日本の近代化を具体的に物語る存在であり、世界史的に見てもアジアの近代化の過程を示す上で欠くことのできないまことに重要な遺跡です。これまで日本考古学協会では、埋蔵文化財保護対策委員会の要望書を皮切りに、2回の会長声明と、3回にわたる会長コメント、日本歴史学協会との共同要望を発出し、一貫して築堤の全面保存を求めてまいりました。しかしきわめて遺憾ながら、一部保存・一部移築・大半は記録保存して破壊という方針のもと、記録保存にともなう調査が進んでいます。

 私たちは、高輪築堤跡が全面保存されるべき重要な遺跡であり、現地保存される範囲を少しでも広げていくことが必要であると考えています。それと同時に、調査で明らかとなった遺構を一般向けに公開する機会が、これまでごくわずかな範囲に限られていたことに強い危惧を持っています。

港区立郷土歴史館のホームページの、高輪築堤跡に関する「経過」に、現地見学会の開催状況が明記されています。一般向けの現地見学会は、7回、のべ11日間おこなわれています。しかし、その多くは対象を地元関係者、区民、小・中学校向けに限定しており、対象を限定しない見学会は、2回、4日間だけです。しかも、これらの見学会では、新型コロナ感染症への対策のため、参加者の数を限定した措置がとられてきました。本年4月10日に開催された、4街区の一般向け現地見学会は、事前予約による定員制で行われ、300名にも満たない人数しか見学できませんでした。

新型コロナ感染症が広がる中で、一定の制限が行われることはやむを得ない措置ではありますが、高輪築堤跡の重要性を鑑みると、一般公開の機会はあまりにも少ないと言わざるを得ません。9月30日をもって、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は、全都道府県で解除されました。感染対策を継続していく必要はありますが、これまでと比べると、一般向けの現地公開をおこなう際の障壁は下がっているはずです。

 発掘調査で遺構が露わになる時は、遺跡の実像を全身で感じ取れる貴重な機会です。写真や動画では得られない、本物に接した感動を得られる機会です。世界遺産級とも言われる高輪築堤跡は、より多くの人々に公開されるべきです。

 以上により、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記の通り要望いたします。

 

 

1 東日本旅客鉄道株式会社は、港区教育委員会と連携・協力し、高輪築堤跡の一般向け現地公開の機会を大幅に拡充すること。

2 文化庁、東京都教育委員会、港区教育委員会は、高輪築堤の一般向け現地公開を拡充するよう、必要な指導および支援を東日本旅客鉄道株式会社におこなうこと。