「大社基地遺跡群主滑走路跡」南側の市道予定地の保存に関する要望書

埋文委 第1号
 2022年6月24日

文化庁長官       都 倉 俊 一 様
島根県知事       丸 山 達 也 様
島根県教育委員会教育長 野 津 建 二 様
出雲市長        飯 塚 俊 之 様
出雲市教育委員会教育長 杉 谷   学 様

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員
委員長 山 田 康 弘

 

 

「大社基地遺跡群主滑走路跡」南側の市道予定地の保存に関する要望書の送付について

 

 標記の件について、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであり、貴職におかれましては、適切な保存の対策が講じられることを改めて要望いたします。

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2022年7月22日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

 

 1 提出書類
   別添のとおり 1通

 


埋文委 第1号
 2022年6月24日

文化庁長官       都 倉 俊 一 様
島根県知事       丸 山 達 也 様
島根県教育委員会教育長 野 津 建 二 様
出雲市長        飯 塚 俊 之 様
出雲市教育委員会教育長 杉 谷   学 様

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 山 田 康 弘

 

「大社基地遺跡群主滑走路跡」南側の市道予定地の保存に関する要望書

 

 大社基地およびそれに附属する遺跡群(以下、大社基地遺跡群と呼ぶ)は、アジア・太平洋戦争当時における海軍航空基地の遺構を良好にとどめる、全国的にも例がほとんどない貴重な戦争遺跡です。特に、築造当時の舗装面を残す滑走路は、兵庫県の鶉野飛行場跡と本大社基地遺跡群などしか残されていない、重要な遺構です。

 昨年、国有地であった大社基地遺跡群の主要構成要素である主滑走路跡の大部分が、民間事業者に売却されたとの報道があり、開発工事によってこれが早期に失われることが懸念されたことから、その重要性を鑑み、私たち日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会では、先に要望書「埋文委第1号」を提出し、大社基地遺跡群の現地保存および史跡整備・活用を求めました。

 これに対して出雲市からは、戦争の記憶を後世に伝えることの大切さを踏まえ、滑走路跡の正確な記録をとるための調査を行い、滑走路跡の一部を歴史学習を行うための場所として残し活用することを検討する旨の回答をいただきました。

 しかしながらその後、民間事業者に売却された大社基地遺跡群主滑走路跡の原状保存部分の大半については、住宅地開発が進められ、建設時のコンクリート舗装面が剥がされる事態に到りました。そうした現状に追い討ちをかけるように、現在遺存している大社基地遺跡群主滑走路跡南側の東西約1000mにもおよぶコンクリート舗装面範囲が、市道敷設工事の対象となり、早期に失われる計画があるという情報に接しました。現在、当該市道予定地は、大社基地主滑走路の原状を伝える貴重な文化財としての意義をさらに増しています。当該市道予定地は、国からの売却によって民間事業者の所有に帰した部分とは異なり、出雲市管理の国有地であり、自治体の決断によって保存可能な土地であるはずです。また、当該市道予定地が保存されることによって、滑走路跡としての景観が維持され、例えば遊歩道などの形で利用されることによって、現在遺存している大社基地遺跡群の主滑走路跡残存部分や周辺に残るその他の遺構の保存、および有機的な活用にもきわめて有効であると思われます。

以上により、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記の通り要望いたします。

 

1.大社基地遺跡群主滑走路跡南側の市道予定地を大社基地遺跡群主滑走路跡の原状を遺す貴重な文化財として保存していただくこと。

2.大社基地遺跡群主滑走路跡南側の市道予定地を保存・整備し、周辺の基地関連遺構とともに歴史学習・平和学習の施設として積極的活用を図ること。

 

以上