越谷遺跡(御所池地区)の調査に関する要望書の送付について

埋文委 第2号
2022年6月25日

 

文化庁長官       都倉 俊一 様
大阪府知事       吉村 洋文 様
大阪府教育委員会教育長 橋本 正司 様
島本町長        山田 紘平 様
島本町教育委員会教育長 中村 りか 様

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 山田 康弘

 

 

越谷遺跡(御所池地区)の調査に関する要望書の送付について

 標記の件について、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであり、貴職におかれましては、適切な対策が講じられることを改めて要望いたします。

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2022年7月22日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

 

 1 提出書類
   別添のとおり 1通

 

 


埋文委 第2号
2022年6月25日

文化庁長官 都倉 俊一 様
大阪府知事 吉村 洋文 様
大阪府教育委員会教育長 橋本 正司 様
島本町長 山田 紘平 様
島本町教育委員会教育長 中村 りか 様

 

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 山田 康弘

 

 

越谷遺跡(御所池地区)の調査に関する要望書

 

 後鳥羽上皇の別業として知られる水無瀬離宮は、周辺に複数の関連施設を有した非常に大規模な施設であったことが従来の研究で明らかになっています。御所池はその水無瀬離宮の本体部分と推定される地区から南西方向約1.5kmに位置し、周知の埋蔵文化財包蔵地としては、越谷遺跡に該当します。特に御所池及びその南側の農地(以下、「南側農地」と仮称)は、昭和30年代の奈良国立文化財研究所による測量調査によって、「平安時代初期の宮苑遺跡である旧嵯峨院園池(大沢池)などと類似のもの」と評価されています(森蘊「遺跡・庭園の調査」『奈良国立文化財研究所年報』1960)。「南側農地」には西から東へ池汀線が岬状に伸びる州浜状地形を数年前まで見ることができました。その西側で1991年から1993年にかけて名神高速道路内遺跡調査会が実施した調査では、鎌倉期の遺構が多数検出され、報告書では「居館等の中心的な施設は検出していないが、調査区にあたる部分は重要地域であったことは(中略)容易に想定できるのである」と評価されています(名神高速道路内遺跡調査会『越谷遺跡他発掘調査報告書』1997)。

 2021年4月(仮称)JR島本駅西土地区画整理事業に関わる試掘調査では、南側農地の道路予定地に南北方向のトレンチが入れられ、その結果、東西方向に延びる盛土遺構が検出されました。これは、ちょうど上記の州浜状地形の部分にあたります。さらにこの盛土の時期は、出土遺物より13世紀初頭と推定されることから、まさに後鳥羽院政期に該当します。すなわちこの試掘結果により、南側農地は御所池と一体の園池であり、水無瀬離宮を構成した重要な施設である蓋然性が高くなりました。

 以上のことから、一般社団法人日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、越谷遺跡(御所池)地区の調査および今後の保護活用の観点より、以下の通り要望します。

 

 

1. 越谷遺跡の調査に際しては、中世の遺構面の段階で情報開示を行い、有識者の指導を得て検討し、遺構の適切な評価を行うこと。

2.遺構の実態解明のために必要な場合は、範囲を拡張して調査を実施し、性格究明に努めること。

3.遺構の重要性が明らかとなった場合、今後の遺跡の取り扱いについて開発者と協議し、庭園遺構の保存・活用に努めること。