広島城三の丸歴史館建設予定地とその周辺の国史跡追加指定および同館建設予定地の変更に関する要望書

埋文委  第1号
2023年6月30日

 

広島市長 松井一實 様

 

一般社団法人日本考古学協会
 埋蔵文化財保護対策委員会
     委員長 山田康弘

 

広島城三の丸歴史館建設予定地とその周辺の国史跡追加指定および同館建設予定地の変更に関する要望書

 

 標記の件について、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであり、貴職におかれましては、適切な保存の対策が講じられることを改めて要望いたします。

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2023年7月21日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

1 提出書類
  別添のとおり 1通

 


埋文委  第1号
2023年6月30日

 

広島市長 松井一實 様

 

一般社団法人日本考古学協会
 埋蔵文化財保護対策委員会
     委員長 山田康弘

 

広島城三の丸歴史館建設予定地とその周辺の国史跡追加指定および同館建設予定地の変更に関する要望書

 

 本年1月27日に松井一實広島市長に提出致しました「史跡広島城跡一帯における文化財の総合的な保存・活用に関する要望書」(埋文委第9号)に対し、貴職から2月22日付で回答文書(広文振興第787号)をいただきました。しかしながら、この回答においては、広島城三の丸歴史館(以下、歴史館)の建設について、これまでの事業経緯が述べられているだけであり、私たちの要望に答える内容とはなっていませんでした。以下に、改めて疑問点・問題点を申し上げます。

 

 第1に、そもそも歴史館建設予定地とその周辺は、1988年4月策定の『史跡 広島城跡保存管理計画書』(以下、『保存管理計画』)において、「史跡保存のため可能な限り追加指定を検討する」(p.100)とされています。1989年3月策定の『史跡 広島城跡整備基本計画書』(以下、『整備基本計画』)においても、「歴史環境保全(緩衝)ゾーン」(pp.64~65・図 2-8、pp.134~135・図 2-45)、「史跡と一体的に整備を行なう範囲」(p.87・図 2-25)に指定されています。近年では、2000年3月策定の『広島城基本構想』や2021年7月策定の『広島城三の丸整備基本計画』においても、史跡追加指定の必要性の有無に関して、国および広島市文化財審議会と協議しながら検討を行うと明記されています。こうした方針を転換し、そのような場所に、充分な検討を行わないまま恒久的な大型建造物を建設しようとしているのは、はなはだ疑問です。
 なお現在、策定が進められている『史跡広島城跡保存活用計画』第4章素案(第3回史跡広島城跡保存活用会議 資料1、p.5・図30)を見ると、「史跡と一体的な整備を実施する範囲」とされている「史跡範囲外周部」から歴史館建設予定地とその周辺が除外されています。当該地を「史跡と一体的に整備を行なう範囲」としていた『保存管理計画』『整備基本計画』の内容を継承していただきたいと考えます。
 第2に、歴史館の建設によって、国史跡追加指定検討地の遺構・造成土が破壊されることは絶対に認められません。 2000年3月策定の『広島城基本構想』では、当該地の開発方針については、「三の丸の試掘・発掘調査の結果を踏まえた柔軟な見直し」(p.15)を行うと明記されています。歴史館建設予定地における充分な試掘・発掘調査を行い、その記録を公開し、調査成果をふまえたうえで当該地における埋蔵文化財の取り扱いについて、国や広島市文化財審議会と協議することを強く求めます。
 第3に、「埋文委第9号」要望書でも申し上げたように、そもそも歴史館建設予定地は二の丸へ通じる通路にあたる要所で、近世城郭において広場的空間を維持することに意味があった場所です。地下の埋蔵文化財の状況にかかわらず、現状を変更して新たな大型建造物を建設することは、文化財としての価値や歴史的景観と眺望を著しく棄損することになります。「広文振興第787号」回答文書では、歴史館において「三の丸がどのような場所であったかを分かりやすく紹介する展示を行う予定」とありますが、そうした施設をこの場所に建設することは、本末転倒であり、不適切と言わざるを得ません。

 以上のことから、一般社団法人日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、次の点を要望します。

 

 

1.『保存管理計画』『整備基本計画』の方針をきちんと継承し、歴史館建設予定地とその周辺の国史跡追加指定を検討すること。

2.現在、策定作業が進められている『史跡広島城跡保存活用計画』の第4章素案において、歴史館建設予定地とその周辺が、「史跡と一体的な整備を実施する範囲」である「史跡範囲外周部」から除外されている理由について明確にお示しください。

3.歴史館建設予定地における試掘・発掘調査成果を公開し、調査成果をふまえたうえで当該地点における埋蔵文化財の取り扱いについて、国や広島市文化財審議会と協議すること。

4.文化財および歴史的景観保護の観点から、歴史館建設予定地を変更すること。