旧門司駅関連施設遺構の保存に関する要望書

埋文委 第7号

2024年2月21日

文化庁長官       都倉俊一 様

福岡県教育委員会教育長 吉田法稔 様

北九州市長       武内和久 様

                                                一般社団法人日本考古学協会

埋蔵文化財保護対策委員会

委員長 山田康弘

 

旧門司駅関連施設遺構の保存に関する要望書

 表記の件につきましては、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであり、貴職におかれましては、適切な調査・保存の対策を講じられますことを要望いたします。

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2024年3月19日(火)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答をお送りくださいますようお願いいたします。

1.提出書類

  別添の通り 1通


埋文委 第7号

2024年2月21日

 

文化庁長官       都倉俊一 様

福岡県教育委員会教育長 吉田法稔 様

北九州市長       武内和久 様

                                                一般社団法人日本考古学協会

埋蔵文化財保護対策委員会

委員長 山田康弘

 

旧門司駅関連施設遺構の保存に関する要望書

 門司港地区複合公共施設整備事業に伴う発掘調査が行われた地点は、明治・大正期にかけて造られた初期の門司駅の駅舎跡・機関車の車庫跡と周辺の土地利用の変遷が確認できる貴重な場所です。大正3年に北側に造られた重要文化財門司港駅(旧門司駅)本屋にも近く、門司港地区の歴史、また日本近代交通史を考える上でも両者は一連のものと考えられます。

 このような重要な地区において、近代遺構を周知の埋蔵文化財包蔵地として取り扱い、試掘調査、発掘調査と段階を踏みながら、遺構検出を行い機関庫の一部を明らかにされたことに敬意を表します。北九州市が日本の近代を語る上で重要な都市であり、今回検出された遺構が九州の鉄道の発着点となった門司駅の一部であることが判明したのは、まさに貴市の着実な発掘調査の成果といえるでしょう。今回発見された一連の遺構群は、アジアに開かれた北九州市の理念を示した遺跡の一部である、といっても過言ではありません。

 しかし、2024年1月25日(木)の定例会見において市長は、検出された遺構の記録保存と一部移築という方針を発表しました。われわれはこの点については非常に強い懸念を抱いています。

 「移築保存」とされた範囲は、調査区全体に広がる建物遺構の全体の中でもごく一部であり、この遺跡の重要性と意義を十分に体現しつつ後世に遺こすものではなく、「移築保存」の範疇からは大きく逸脱したものと言わざるを得ません。そもそも設計変更により施設内で遺構を保存できる可能性があるにもかかわらず、その検討自体を行うことなしに、遺構の大部分を滅失させるという方針を示したことについては、北九州市の文化財保護行政という観点からも非常に問題があるものと考えます。

 さらに、旧門司駅関連施設遺構の下層には、中世以前の港湾施設などの重要遺構が遺存している可能性もあり、現調査区下層、並びに影響を受ける可能性のある現調査区周辺の調査が十分に行われる必要があります。上述のような観点からも、旧門司駅関連施設遺構については、現地での現状保存と長期的な調査・研究が望まれます。

 以上のことから、一般社団法人日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記の点について要望します。

 

1 旧門司駅関連施設遺構の建物について、現地保存を最優先とし、建設予定の複合公共施設の設計変更について検討すること。

2 現在の調査区下層、並びに影響を受ける可能性のある周囲の未調査区についても十分な調査を行うこと。

3 北九州市は今後も埋蔵文化財の取り扱いに近代遺構を積極的に含みこみ、地域の歴史を明らかにし、街づくりに活用していくこと。

以上