鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の保存に関する要望書

埋文委 第1号
2024年5月16日

 

 文化庁長官   都 倉 俊 一 様
 千葉県知事   熊 谷 俊 人 様
 千葉県教育長  冨 塚 昌 子 様
 鴨川市長    長 谷 川 孝 夫 様
 鴨川市教育長  鈴 木 希 彦 様
 南房総市長   石 井   裕 様
 南房総市教育長 三 幣 貞 夫 様

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 山 田 康 弘

 

鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の保存に関する要望書

 

 標記の件について、別添書類のように、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容を有するものであり、貴職におかれましては、適切な保存の対策が講じられることを改めて要望いたします。

 

 なお、まことに恐縮ですが、当件に係る具体的な措置および対策につきまして、2024年6月14日(金)までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。

 

 1 提出書類
   別添のとおり 1通


埋文委 第1号
2024年5月16日

 文化庁長官   都 倉 俊 一 様
 千葉県知事   熊 谷 俊 人 様
 千葉県教育長  冨 塚 昌 子 様
 鴨川市長    長 谷 川 孝 夫 様
 鴨川市教育長  鈴 木 希 彦 様
 南房総市長   石 井   裕 様
 南房総市教育長 三 幣 貞 夫 様

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長  山田 康弘

 

鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の保存に関する要望書

 

 日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の遺構に対する適切な保護を要望します。
 嶺岡牧は、延喜式に記された銖師牧に遡り、近代まで続いた希有な牧として知られています。とりわけ江戸幕府直轄牧となった嶺岡牧で、8代将軍徳川吉宗が酪農を始め、11代将軍徳川家斉のとき岩本正倫が嶺岡牧を囲い込み近代の扉を開けた日本近代化の記念地であり、ぐるみ社会特有のアジア型近代化で、公的利益を前提とする未来づくりを実現する実践例でもあることから、世界遺産を超えるとも評価されている極めて重要な歴史遺産です。しかも、首都圏にありながら保存状態が良く、江戸幕府直轄牧で唯一全貌をみることが出来ます。それにより、2009年からの嶺岡牧調査で、近世から牛馬の飼養区画を細かく区切り管理型放牧が行われていたことや、30間おきに木戸を設け日常的に住民が牧に出入りしていたこと、牧内のコモンズ利用を通し江戸幕府と野付村の住民とが互酬性により牧経営が維持されていたことなど、これまで確認できなかった江戸幕府直轄牧経営の実態が明らかとなりました。
 しかし、こうした歴史的価値が極めて高い嶺岡牧の遺構が破壊される事例が、ここのところ多発しています。山中にある遺構の価値を理解しない開発事業者による届出の無い無秩序な開発や地形改変がもたらすもので、遺跡指定されている野馬土手や八丁陣屋跡が損壊されたことが認められています。近年著しくなった野生動物による被害を含め、国指定史跡に匹敵する遺跡としての価値が減じている状況です。
 以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記の通り要望いたします。

 

 

1 仮囲、木戸、仕切土手、牛馬の水呑場、雨凌小屋、水場、通路などの跡で、嶺岡牧管理の基礎となる嶺岡牧に関する遺構を周知とすること。
2 嶺岡牧の価値を広く周知するとともに、今後遺構の破壊行為が行われないよう、監視体制を強化及び徹底すること。
3 露出している嶺岡牧遺構の3D測量など記録化を早急に行い、破壊された場合でも復原ができるようにすること。
4 国指定史跡をにらみ、遺跡の保存活用を行うこと。
5 行政内において、上記の対策を行うための体制を整備すること。