(公印省略)
広文振 第787号
令和5年2月22日
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 山 田 康 弘 様
広島市長 松 井 一 實
(市民局文化振興課)
史跡広島城跡一帯における文化財の総合的な保存・活用に関する要望について(回答)
令和5年1月27日付け埋文委第9号で要望のありました件について、次のとおり回答いたします。
1 現在進められている広島城三の丸歴史館の建設場所および三の丸跡の整備計画について文化財および歴史的景観保護の観点から再検討を行うこと。
(回答)
広島城の魅力向上事業は、浅野氏広島城入城400年記念事業を契機とする歴史・文化の発信拠点としての関心の高まりや、旧広島市民球場跡地へのイベント広場等の整備、中央公園広場へ のサッカースタジアムの開業など、広島城を巡る環境や人の流れが大きく変化することが見込まれることなどを背景として、歴史・文化の発信拠点、また観光拠点としての広島城の魅力の向 上を図るものであり、このうち広島城三の丸の整備については、令和元年度から令和3年度までの検討を経て、現在、整備事業として推進しています。
広島城三の丸の整備の検討に当たっては、「史跡広島城跡保存管理計画」(昭和63年4月策定) や、その具体的な展開を図るための整備の指針として、三の丸エリアにサービス・管理ゾーンを配置することなどを示す「史跡広島城跡整備基本計画」(平成元年3月策定)も踏まえており、 その具体的な成果として、令和2年5月には、「広島城基本構想」を策定しました。
「広島城基本構想」は、同基本構想の2ページの記載のとおり、広島城(以下、この項において「広島城区域」を指します。)全体と広島城区域を構成する各エリアの基本的な考え方を示しながら、「史跡広島城跡整備基本計画」で示された方向性のうち取組が十分に行われていない事項や優先的に推進すべき事項を抽出するとともに、「史跡広島城跡整備基本計画」では詳細に示されていない「三の丸」の施設整備や最新技術の活用、ソフト面の取組等に関する方向性を示すなど、今後の取組の基本的な指針として策定することとし、あわせて、史跡広島城跡に関する保 存活用計画の策定に向けた検討を行うこととしたものです。
「広島城基本構想」の策定に当たっては、令和元年10月以降、「広島城のあり方に関する懇談会」において意見交換を行い、令和2年2月から3月にかけて市民意見募集を行いました。また、「広島城基本構想」において広島城への来訪者の「おもてなし拠点」を目指すとした「三の丸」については、令和3年7月、新たな機能導入の方針並びに整備計画及び管理運営に係る基 本的な条件を定めた「広島城三の丸整備基本計画」を策定しました。
「広島城三の丸整備基本計画」の策定に当たっては、アストラムライン路線や共同溝等の地下の既存施設等の状況、整備予定のペデストリアンデッキの位置、近世における建物等の配置状況も想定しつつ、展示収蔵施設となる「広島城三の丸歴史館」の配置計画を設定しており、前述の「広島城のあり方に関する懇談会」において公開で意見交換を行い、令和3年5月から6月にかけて市民意見募集を行っています。
その後、「広島城三の丸歴史館」の詳細については、「広島城の展示整備に関する懇談会」にお いて公開で意見交換を行い、令和4年1月に「広島城展示等基本計画」を策定しました。
こうした過程を経て検討を終了し、広島城三の丸の整備のうち、Park-PFIを活用した 三の丸にぎわい施設の整備に関しては、令和3年12月に、事業者の選定に関する事項を審議する審議会を設置するための条例改正を市議会本会議において全会一致で議決され、広島城三の丸歴史館の整備に関しては、令和4年3月に、公の施設としての設置・管理に関する条例制定を同じく全会一致で議決されており、こうした手続を経て、現在、それぞれ整備事業として推進しているものです。
「広島城三の丸歴史館」は、近世の広島の歴史及び文化並びに広島城の歴史に関する博物館施 設です。現在、施設の1階、総合ガイダンス展示において、かつての三の丸がどのような場所であったかを分かりやすく紹介する展示を行う予定としています。
要望書にある「広島城三の丸歴史館の建設場所」及び「三の丸の整備」については、令和3年度までの間に、有識者を始め広く意見を頂きながら丁寧に検討を行った上で、市議会の承認を得て「建設場所」を決定し、整備事業として推進しており、今回の要望書の御指摘を踏まえた再検討を行うことは考えていません。
なお、要望書では、「史跡広島城跡保存管理計画」において「史跡広島城跡に付随したものとして追加指定し、保存を図る必要がある」とされている旨の記述がありますが、これは「広島城三の丸歴史館の建設予定地」に関する記述ではありません。したがいまして、「史跡追加予定地である三の丸」とあるのは誤認であることを申し添えます。
2 史跡広島城跡とその周辺区域を含む文化財の総合的な保存・活用に関する計画を策定した上で、 関連事業との調整を行い、具体的な事業を進めること。
(回答)
「史跡広島城跡保存管理計画」及び「史跡広島城跡整備基本計画」は、策定から既に30年以上が経過しています。この間、史跡広島城跡を巡る環境や人の流れ、社会情勢なども変化してきており、新たな課題なども生じつつあります。このため本市では、令和3年度から「史跡広島城跡保存活用会議」を開催し、有識者の意見を聴きながら「史跡広島城跡保存管理計画」の内容をベースに、新たに「史跡広島城跡保存活用計画」として取りまとめる作業を進めています。
現行の「史跡広島城跡整備基本計画」では、史跡広島城跡が広島のまちづくりにおいて果たす基本的な役割として、①歴史としての広島城跡、②緑としての広島城跡、③景観としての広島城跡を挙げ、「広島城跡が単独で発揮する役割として捉えるのではなく、都市的な視点で周辺の諸機能とのネットワークを図ることによって、より魅力的なものとすることが重要である」としていました。このことは、史跡広島城跡整備の課題が、文化財的な観点からのみで解決されるものではなく、「一つの整備内容を提示するにも関連する事項を十分把握するなど、多方面からのアプローチが必要となる」ことを念頭に置いたものです。
「史跡広島城跡保存活用計画」の策定に当たっては、こうした考えを踏まえ、史跡広島城跡の本質的な価値を改めて明確にするとともに、これまでに策定した個別の分野別計画や関連計画を整理し直した上で、令和5年度中に同保存活用計画を策定することとしています。
同保存活用計画策定後は、整備の基本的方向とその具体化について体系的に整理し、整備を総合的かつ計画的に進めるための指針として「史跡広島城跡整備基本計画」の改訂作業に着手していくことにしています。