南あわじ市門崎砲台跡の保存と活用に関する要望書について(回答2)

南あ教社発第406号

令和5年10月31日

一般社団法人日本考古学協会

埋蔵文化財保護対策委員会

 委員長 山田 康弘 様

南あわじ市教育委員会

教育長 浅井 伸行

 

南あわじ市門崎砲台跡の保存と活用に関する要望書について(回答)

 

 この度提出されました要望書につきましては、下記のとおり回答いたします。

 

(1)今後の方針

 市教育委員会では、南あわじ市文化財保護審議会から提出された建議書の内容も踏まえ、可能な範囲で、本砲台の部分的復元・展示を行うとともに、調査の成果を活用しつつ、歴史遺産としての価値を多くの人に啓発し、後世に継承していくことが望ましいとの結論に至りました。

 砲台は現状のままでは、安全適正に修復及び保存管理することが非常に困難であることから、現場の安全を確保しつつ解体しますが、比較的堅牢性が維持されている砲台前面部を、ワイヤーソーイング工法という特殊な工法により切り出し、近隣の仮置場にて一時保存し、今後の検討により、分析、復元、展示等に有効に活用します。また、残存するコンクリート及びレンガ等の一部を採取し、科学的調査による分析や実物展示に活用します。加えて、発掘調査の成果を活用し、仮想現実による砲台の規模感の再現やジオラマ模型等による形状の再現を行い、適切に展示します。今後の検討を通じ、適切な保存・普及促進措置を実施します。

 

(2)経緯

 発掘調査により、砲台の歴史の全体像が明らかになるとともに、国内最大級の穹窖砲台の一つであることが判明しました。また調査によって、文化財資料としての一部保存及び仮想現実等で遺構を再現するために十分な知見の蓄積が得られました。

 一方、この度の調査の過程において、穹窖状内部のコンクリートで造られた天井頭頂部に陥没が発見された他、天井や壁には大きく深い亀裂が多数確認されました。さらに、コンクリートの経年劣化により、骨材が疎らに露出していることに加え、その材質は均質ではなく、比較的薄い層で積み重ね継ぎ合わされながら形成されたものであると想定されることから、コンクリート層毎の接合強度についてもかなりの低下しているものと考えられます。加えて、重厚な天井を支える2本のコンクリート柱は、後補による鉄筋全体が錆びて露出しており、老朽化したコンクリートが崩壊し、その重量を支え切れない状態であり、現在も剥離や崩落は進行しているものと思料されます。

 このような現状に鑑み、本砲台を現状のまま、安全、適正に保存管理及び修復することは非常に困難と判断し、(1)の結論に達したものです。