長崎市小島養生所関連遺構の保存に関する要望書(回答3)

長文財 第267号
平成30年1月17日

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
 委員長 藤 沢 敦 様

長崎市長 田 上 富 久

 

長崎市小島養生所関連遺構の保存に関する要望書に対する回答について

 

 2017年12月12日付埋文委第2号により提出いただきました「長崎市小島養生所関連遺構の保存に関する
要望書」に対し、次のとおり回答いたします。

1 長崎市小島養生所に隣接する関連遺構群を現地保存すること

 小島養生所及び分析究理所等が、旧佐古小学校敷地に存在した歴史的事実と、近代西洋医学発祥の地として歴史上大きな役割を果たしたことは十分認識しており、そのような認識から、長崎市は、旧佐古小学校の校舎などの解体後に、当該敷地において、文化財保護法に基づく発掘調査を行いました。

 この発掘調査により検出した遺構の残存状況や、これまでの様々な検討の経過を踏まえ、長崎市は、遺構の保存と学校建設の両立を目指すこととし、残存する遺構については、次のとおり取り扱うこととします。

(1)小島養生所
 体育館側敷地に残る小島養生所の遺構については、埋蔵文化財の最適な保存方法とされる埋め戻しによる保存を基本としつつ、一部の遺構は露出展示して、その歴史的価値を伝えられるよう、全て現状のまま保存することとします。

(2)分析究理所等
 校舎・グラウンド側敷地に残る分析究理所等の遺構については、埋め戻しにより現状のまま保存することを基本としながら、新校舎建設の支障となる部分は、精度の高い記録をとったうえで移設することとし、移設する部分については、埋め戻した部分の複製と合わせて、元の姿を彷彿とさせるように敷地内で再現し、保存・活用を図るよう工夫することとします。

2 日本の近代化遺産としてだけでなく、日蘭友好のシンボルとして、今後の整備、活用をおこなうこと

 旧佐古小学校敷地において検出された小島養生所及び分析究理所等に関する遺構の残存状況が良くないことは、文化庁との協議においても指摘されています。保存状態から見た遺跡の評価について、文化庁からは、国指定の史跡には至らないとの見解が示されていますが、遺跡の保存と学校建設はどちらも重要な課題であるため、長崎市は、旧佐古小学校敷地において、その両立を目指すこととしています。

 よって、学校建設に当たっては、体育館に展示室を併設し、小島養生所等に関する遺構や遺物、資料などを展示するとともに、これらの貴重な情報を発信し、その歴史と価値を伝えながら、遺跡の保存・継承を図っていくこととしており、こうした取組みは、オランダとの交流の発展にも大いに寄与するものと考えています。

 以上のとおり、長崎市は、遺跡の保存も学校建設も重要な責務として捉え、それぞれ最大限の成果を求めて両立させることを目指すこととしており、別添資料「小島養成所等遺跡の完全保存に関する住民投票条例請求に対する長崎市の考え方」及び「意見書」については、平成29年11月市議会における審議を経て、市の方針として決定させていただいたところです。

 本件について、ご意見等ありましたら、お寄せいただければ幸いに存じます。