第11回「コロナ禍の学校教育~対面とオンラインのハイブリッド教育~」 八田 友和

 私は、クラーク記念国際高等学校芦屋キャンパスで教員をしています。クラーク高校は、登山家やプロ・スキーヤーとして有名な三浦雄一郎先生が校長を務める通信制高校です。全国に55か所キャンパスがあり、私は兵庫県芦屋市にある芦屋キャンパスで教員をしています。芦屋キャンパスでは、全校生徒のうち7~8割の生徒が小学校や中学校在籍時に不登校を経験しており、「高校からもう一度頑張ろう!」「高校からリスタート(再出発)しよう!」という思いを抱き日々生活しています。

 さて、そのわが勤務校も昨年4月に発令された緊急事態宣言を受け、休校措置が取られました。従来から通信制高校の強みを活かしてWEBキャンパスや電子図書館の整備などを行っていたため、それらも休校期間中の学びを支えるツールになりました。しかし、それだけでは不十分であったため、すぐに生徒への連絡ツールとしてslackが導入され、オンライン授業実施のためにZOOMも導入されました。

 そして、私の担当する日本史Bの授業もオンラインで配信することになり、旧石器時代、縄文時代・弥生時代・古墳時代の学習を全てオンラインで実施しました。

 私は普段、対面授業を実施する際、なるべく“五感”を使った授業を心がけています。「見る」「聞く」はもちろん、黒曜石や弥生土器の欠片を準備して「触れる」、三角縁神獣鏡チョコを子どもたちと作って「味わう」など、五感での学びを大切にしています。というのも、「見る力」や「聞く力」が弱い生徒や、それらの力があっても正しく認知できない生徒も一定数存在するからです。なるべく多くの感覚に働きかけることで、生徒たちの認知や理解を助けることができればと考えています。

 しかし、オンライン授業によって「触れる」「味わう」「匂う」が封じられてしまいました。強みが封じられてしまった…、しかも初めてのオンライン授業…、画面上でのやり取り…など、不安は募るばかりでした。ただ、実際にやってみると「普段、なかなか学校に足が向かない生徒が授業に出席してくれている」「スライドに資料を貼り付けることで、一度に多くの資料を子どもたちに提示できる」などの利点もありました。子どもたちからもアドバイスや意見をもらいながら、慣れないオンライン授業を乗り切りました。生徒たちやアドバイスをくれた先生方に感謝の毎日でした。

 オンライン授業から分散登校に切り替わると、感染防止対策をとったうえでですが、子どもたちに弥生土器の欠片や金印の複製資料などを提示することができるようになりました。「うわ!すごい!」「思ったより軽い!」など、子どもたちの表情・動作・発言…どれをとっても、ポジティブなものばかりでした。これらを通し、多くの感覚に働きかける大切さを再確認しました。

 今後は、対面のもつ強みと、オンラインのもつ強みを活かしたハイブリット型教育が大切になると考えています。否応なしにはじまったオンライン授業のおかげ?で、対面授業を客観視でき、対面授業だからこそできる教育を考えるきっかけにもなりました。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、オンラインでの学習は避けては通れなくなっています。そのような時代において、資料に触れることにどんな意義があるのか、どのように生徒の学びに寄与するのか、しっかり見つめ、考えていこうと思います。

クラーク高校校舎