第83回(2017年度)総会報告

一般社団法人日本考古学協会第83回(2017年度)総会報告

 日本考古学協会第83回(2017年度)総会は、5月27日(土)、28日(日)の両日、大正大学において開催された。大正大学は大正15年に設置された仏教系三宗四派の連合大学で、ガラスを多用した明るく開放的な建物が印象的であった。大正大学での総会開催は今回が初めてで、御堂島正実行委員長のもとにおよそ80名のOBや学生などの方々の尽力によって、円滑に総会が進行した。
 27日には、礼拝堂(8号館)において、総会と講演会、およびセッション1が開催され、その後、鴨台食堂で懇親会が催された。翌28日には5号館と7号館で口頭発表(3会場)、セッション(3会場)、ポスターセッション、高校生ポスターセッションが、5号館で図書交換会が行われた。参加者は27日380名(会員309名・一般71名)、28日1,046名(会員685名・一般361名)で、合計1,426名に上った。なお、2017年3月末時点での会員数は4,091名であり、前年度の物故者15名、退会者60名であった。
 27日午前10時から開催された総会冒頭で、坪井清足会員はじめ15名の他界された会員への黙祷が捧げられた。次に、谷川章雄会長から開会の挨拶があり、昨年京都で開催された第8回世界考古学会議への後援・協力や、平成28年熊本地震の復興支援、および2018年に日本考古学協会が設立70周年を迎えるにあたっての記念事業や、災害対応委員会の設置などについて、説明と今後の方針が表明された。続いて御堂島実行委員長による歓迎の挨拶が行われ、斎藤忠氏が大正大学で14年間教鞭をとったことや、「手紙から見た日本考古学史-斎藤忠所蔵資料から-」の展示が開催されていることの紹介があった。その後、司会から総会が成立要件を満たしているとの報告があり、定款によって会長が議長を務めることが紹介され、議長から副議長と書記の指名が行われ議事に入った。
 はじめに、「第7回日本考古学協会賞の報告並びに承認、表彰」が行われた。協会賞選考委員会から、廣瀬覚会員の『古代王権の形成と埴輪生産』が大賞に、上條信彦会員の『縄文時代における脱殻・粉砕技術の研究』が奨励賞に推薦され、理事会で承認を得たことが報告され、表彰が行われた。次いで「入会資格審査報告並びに承認」が行われ、入会資格審査委員長から51名が入会審査を通過したとの報告があり、承認された。ただちに新入会員が登壇し、代表して久末弥生会員(大阪府)が抱負を述べた。
 続いて、2016年度事業報告(総大会・公開講座・理事会・年報・機関誌等)が行われた。その後、各委員会報告として、陵墓報告、研究環境検討委員会報告、広報委員会報告、国際交流委員会報告、社会科・歴史教科書等検討委員会報告、埋蔵文化財保護対策委員会報告、東日本大震災対策特別委員会報告、平成28年熊本地震対策特別委員会報告、諸規則・規定等見直し検討会報告、将来構想検討小委員会報告、文化財に関する諸問題検討会報告が行われた。東日本大震災対策特別委員会は、『日本考古学協会東日本大震災対策特別委員会報告書』を刊行し、5年間の活動を締めくくることとなった。また、諸規則・規定等見直し検討会報告では、賛助会員規定や、著作権規定などについて報告があった。引き続き、2017年度事業計画、2017年度予算、および協会設立70周年記念事業について報告があった。
 次いで審議事項にうつり、財務担当理事から2016年度決算として貸借対照表・正味財産増減計算書・平成28年熊本地震募金特別会計報告についての説明が行われた。また、監事から監査報告が行われ、適法かつ正確であることが報告され、質疑応答の後、決算は承認された。続いて、災害対応委員会の設置について、および事務局長の再任について審議が行われ、承認された。災害対応委員会は、常置委員会としてさまざまな災害に迅速・柔軟に対応することを目的としている。以上の審議をもって総会は終了した。
 引き続き午後2時から記念講演会が開催された。谷川会長の挨拶の後、大正大学の大塚伸夫学長からご挨拶をいただき、坂詰秀一会員(立正大学名誉教授・元大正大学講師)によって「斎藤忠と日本考古学史」と題する講演が行われた。午後3時10分からは同じ会場で、セッション1「日本考古学における学史の継承と展開-斎藤忠の遺した研究課題を中心に-」が開催され、5件の発表があった。終了後、鴨台食堂に会場を移し、懇親会が開催された。
 28日には口頭発表が、3会場に分かれて午前・午後を通して行われた。第1会場11件、第2会場10件、第3会場10件、計31件の研究発表が行われ、併せて5つのセッションが開催された。セッション2「パプアニューギニア民族誌研究から縄文土器型式の成立をさぐる」では、4つの研究発表が行われた。また、セッション3「白保竿根田原洞穴遺跡の調査と研究」(日本人類学会骨考古学分科会との共催)では6つの研究発表が行われた。直前に新聞報道が行われたこともあり、会場は立ち見がでるほどの盛況であった。セッション4では「水中文化遺産と考古学-その動向と展望-」と題し、5つの研究発表が行われた。セッション5では日本考古学協会英文機関誌編集委員会によって「日本考古学の国際化-意味・意義・方法-」と題し、4つの研究発表が行われた。セッション6は日本考古学協会平成28年熊本地震対策特別委員会「平成28年熊本地震による文化財被害とその復興が抱える諸問題」で、現地からの報告を中心に4つの研究発表が行われ、文化財の被害の深刻さを改めて確認することとなった。
 ポスターセッションでは24件の発表が行われ、午後1時~2時には発表者による解説が行われた。昨年度から始められた高校生ポスターセッションでは、宮城県から福岡県にわたる高校から9件の発表があり、多くの参加者でにぎわった。午後1時から高校生による説明を受けた後、表彰式が行われ、徳島文理高等学校・森﨑陸斗「藍作地域の高地蔵を考える」と福岡県立糸島高等学校歴史部(春口将輝)「火山の烽火台調査」が最優秀賞に、埼玉県立伊奈学園総合高等学校歴史研究会(小林萌恵子・天海悠似)「埼玉県行田市将軍山古墳の蛇行状鉄器と酒巻14号墳出土の蛇行状鉄器付馬形埴輪について」が優秀賞に選ばれた。
 以上のように、今回の総会は晴天のもとで多数の参加者を得て、盛況に開催することができた。これも大正大学の多大なご支援と、総会実行委員・学生の皆様方のご尽力によるものであり、厚く御礼申し上げたい。

(総務担当理事 新納 泉)

一般社団法人日本考古学協会第83回(2017年度)総会(抄録)

日 時 2017年5月27日(土) 午前10時00分~午後0時20分
会 場 大正大学礼拝堂(8号館)
 2017年5月27日(土)午前10時、橋本裕行理事の司会で開会した。開会にあたり、司会から、現在の会員数が4,091名(3月31日現在)で、本日の総会出席者98名(午前10時現在)、委任状預かり分1,250名、合計1,348名となり、この総会が成立する旨の報告があった。次に、開会にあたり、一般社団法人日本考古学協会を代表して、谷川章雄会長から開催の挨拶があった。続いて、第83回総会実行委員会の御堂島 正委員長から挨拶があった。また、審議に先立ち前年度の物故会員15名に対して黙祷を捧げた。
 次に、司会から本総会の議長は、定款第16条の規定に基づき谷川章雄会長がこれにあたるとの説明があり、また、副議長及び書記については、茨城県の黒澤彰哉会員、群馬県の谷藤保彦会員、書記には埼玉県の田中広明会員、東京都の丸山雄二会員を指名し、会場出席者の承認を受けた。次に総会議事録の署名者については、議長から千葉県の酒井清治会員・濱崎雅仁会員を指名して両会員の了承を得て審議に入った。
 審議の冒頭、議長から報告事項の「日本考古学協会賞の報告並びに表彰」、審議事項の「入会資格審査報告並びに承認」は、審議の都合上冒頭で議案とするとの提案があり承認された。

【報告事項】

〈1〉2016年度事業報告
1.日本考古学協会賞の報告並びに表彰
 関根達人理事から第7回日本考古学協会賞選考委員会の選考結果が報告され、8名の応募者の中から大賞に廣瀬 覚会員の『古代王権の形成と埴輪生産』、奨励賞に上條信彦会員の『縄文時代における脱殻・粉砕技術の研究』が推薦され、理事会で了承されたことが報告された。直ちに決議され拍手をもって承認され、谷川会長から賞状と記念品が授与され、受賞者の2名の挨拶があった。

【審議事項】

〈2〉入会資格審査報告並びに承認
 入会資格審査委員会の藤田典夫委員長から、本年度は応募総数55名があり、第1回審査で資格基準を満たす者50名、2名が審査基準に達しておらず、保留3名を再審査とした。第2回審査で、保留3名のうち1名は資格基準を満たすと判断し、51名を入会資格該当者とし、入会資格該当者に対する異議申し立ては無かったとの説明があった。
 議長は51名の入会について承認を求め、拍手をもって承認された。新入会員は登壇し、新入会員を代表して大阪府の久末弥生新会員から自己紹介と抱負を含めた挨拶があった。
 議長から表彰、新入会員の承認事案が終了し、議事を総会資料の次第に戻るとの説明があり、報告事項に移った。

【報告事項】

〈1〉2016年度事業報告
2.総会・大会・公開講座等、3.理事会等、4.年報・会報・機関誌等
 佐藤宏之理事から総会資料に沿って、2・3・4について一括報告があった。

5.陵墓報告
 新納 泉理事から日本考古学協会は、陵墓関係16学協会の幹事学会として、陵墓公開運動を推進しており、理事会から杉井理事、橋本理事と新納が担当しているとの説明があった。2016年度の主な活動は、立会調査見学として三重県亀山市の能褒野古墳群ほか5件、立入り観察として「奈良県天理市行燈山古墳(崇神陵古墳)」との報告があった。また、8月には神戸市で「陵墓公開をめぐる成果と未来-箸墓古墳・伏見城の立入り観察成果と『陵墓』の名称-」というテーマで、16学協会のシンポジウムを開催したとの報告があった。

6.研究環境検討委員会報告
 堀内秀樹理事から委員会の活動内容について説明があり、2016年度は主に考古学の抱えている研究環境と後継者育成を課題とし、大学アンケートを実施した結果を「考古学研究における後継者育成と現状」と題したポスターセッションで公開したとの報告があった。また、今後の活動として文化財の活用、地域活用資源、考古学の専門性と資格に関する協議を継続していくとの説明があった。

7.広報委員会報告
 小澤正人理事から協会の広報活動について検討を加え、特にマスコミ対応のためのマニュアルを作成したとの報告があった。また、協会ホームページは基本的な更新は完了したが、今後も事務局と連携をとりながら充実を図っていくとの説明があった。

8.国際交流委員会報告
 佐々木憲一理事から、海外向け活動の一つである「発掘された日本列島展2016」の図録から8遺跡を選定し、英文翻訳を協会ホームページに掲載したとの説明があり、国内向け活動であるアジア考古学四学会の合同講演会は10回を数え、3月4日、早稲田大学を会場に「アジアの天空」を開催したとの報告があった。また、2016年8月には第8回世界考古学会議(WAC-8)が同志社大学を会場に開催され、日本考古学協会は考古学史をテーマにした基調セッション、主要な遺跡発掘調査を紹介するポスターセッションを実施し、合わせて本協会の英文パンフレットも作成して配布することができ、世界に日本の考古学を発信する良い機会となったとの説明があった。

9.社会科・歴史教科書等検討委員会報告
 佐々木和博理事から2016年度は、委員会4回を開催、総会・弘前大会でポスターセッションを実施したとの報告があった。委員会では次期学習指導要領に対するパブリックコメント、新しい学習指導要領については3月に会長名でパブリックコメントをまとめた。この学習指導要領案には、小学校で遺跡や文化財の調査活動の文言が含まれ、また、博物館などの利用が加わり、委員会のパブリックコメントが反映されたものとの感想があった。なお、小学校学習指導要領での旧石器時代の記述は狩猟採集という表現にとどまっているので今後注視していき、合わせて日本列島の北と南の文化に関する研究活動も委員会として取り組み、学校の教育現場に考古学の成果が適切に活用されるよう発信して行くとの説明があった。

10.埋蔵文化財保護対策委員会報告
 小笠原永隆理事から埋蔵文化財保護対策委員会の体制及び組織についての説明後、委員会、幹事会、情報交換会の開催報告があった。昨年の要望書については、鎌倉市円覚寺西側結界遺構、北九州市城野遺跡、加古川市中道子山城、筑紫野市前畑遺跡の保存に関する4件の要望書と回答についての報告があった。

11.東日本大震災対策特別委員会報告
 渋谷孝雄委員長から東日本大震災対策特別委員会は2016年5月15日の委員会開催をもって5年間の活動を終えたことが報告された。なお、同会議では被災3県の現状と課題、3月10日に行われた文化庁面談の報告、3月11日に開催された文化遺産防災ネットワーク推進会議の報告、復興関連埋文アンケート調査の分析等が協議され、東日本大震災対策特別委員会報告書の刊行計画が確認された。報告書は各委員をはじめ、文化財レスキュー、新聞報道等の委員以外の方にも執筆していただき、2017年3月31日、日本考古学協会東日本大震災対策特別委員会報告書として刊行されたとの報告があった。また、最後に委員長として会員の皆様から多くの御支援をいただいたことについて、御礼の挨拶があった。

12.平成28年熊本地震対策特別委員会報告
 宮本一夫委員長から、平成28年熊本地震対策特別委員会が昨年設置され、委員長に宮本、副委員長に杉井 健理事、及び8名の委員が就任したとの説明があった。活動として、6月24日に文化庁と懇談し、被害状況、文化庁の方針、現地教育委員会の問題等に関する情報交換を行った。7月17日には熊本城ほか釜尾古墳等々の遺跡の被災状況、収蔵施設等の現地調査を実施し、熊本城、装飾古墳等の史跡及び文化財が大きな被害を受けていることを確認した。また、現地で第1回の特別委員会を開催した。10月15日、弘前大会で「平成28年熊本地震に伴う埋蔵文化財保護ならびに文化財の復興に関わる会長声明」を出し、11月29日、文化遺産防災ネットワーク推進会議に杉井副委員長が参加、2017年3月16日には文化庁との懇談会を開催したとの報告があった。

13.諸規則・規定等見直し検討会報告
 石川日出志副会長から(1)賛助会員に関する規定・内規、(2)著作権規定、(3)規則、規定、内規の一部改正、(4)災害対応委員会規定、(5)名誉会員について、以下の報告があった。(1)賛助会員は新制度であることから、会員から意見を求めながら慎重に検討を重ね、その都度総会、会報等で説明してきたが、本総会を最終案として、次回7月の理事会で制定・施行を決議し、8月会報で募集案内するとの説明があった。
 (2)著作権規定については、総会資料にそって最終案に至る経緯の説明があった。本規定は発議から総会、会報等で会員からの意見を求め検討を重ねたもので、本日の総会で、条文2箇所の変更をもって最終案とし、7月理事会の承認をもって制定・施行するとの報告があった。変更は、①規定第4条第1項の「各出版物の投稿規定による」を削除し「…著作物について原稿を受理した時点で協会に帰属する。…」と改める。②規定第7条第2項は「著作者自身が所有するサーバもしくは著作者が所属する他の機関が運営するサーバに、」を削除とし、「…発行後1年を経過した論文等を機関リポジトリ等の電子媒体を…」と変更する。また、昨年度の総会、会報で複数の会員から異議の申し立てがあった、「著作権は著者に帰属し学会は使用権に限るものである」、「規定施行以前の著作物の取り扱いについての問題」については、著作権の保護は協会が責任を持つことを定め、施行以前の著作物については著者からの申し出があった場合には認めるとしたが、趣旨が不明確との指摘があり、昨年『会報』189号で修正案として、第2条第1号を「なお、著作者人格権を定めた第18条(公表権)、第19条(氏名表示権)、第20条(同一性保持権)は、第59条(著作者人格権の一身専属性)の定めにより本規定の対象外となる」に修正した。次に、第6条(研究成果の公開促進)は「著作者から第2条第1号に定める著作権の譲渡を受けた協会は、第3条各号で公表した研究成果について、著作者の権利を保全するとともに、より広く一般の利用に供するよう努める」条文を第6条として新たに設置した。
 第7条第5項の著作権利用への対価の発生した場合については、当初案を修正し、「その取り扱いについて著作者と協議する」と変更した。次に、第5条第2項は、当初案の「著作者からの著作権譲渡承諾書の提出を要しない」を改め、第2項を設け「本規定施行後3か年の公示期間を経て特段の異論がない場合、著作権は協会に帰属するものとみなす」と修正した。また、「著作者からの異議申し立て」については、附則の第1項で「著作権が協会の帰属とみなされた著作物について著者から別段の申し出があった場合、双方の協議の上、この規定の各号の準用を判断する」と定めた。
 (3)その他の規則、規定、内規の一部改正については、旅費規定、文書管理規定、事務局長の職務及び勤務に関する規定について修正等の報告があった。旅費規定は本協会規則第35条「協会が主催する会議や事業等、もしくは協会がかかわる会議や行事等に、会長から参加の要請を受けた者には、別に定める規定によって旅費を支給する」の定めにより改定を実施した。改定にあたり「旅費基準」、「英文機関誌編集委員会の海外旅費に係る申し合わせ事項」、「職員旅費支給基準」は廃止し、従来不備であった出張届、出張報告、交通費、日当、宿泊料について整備し、合わせて旅費支給要綱を定めた。旅費規定は2017年5月13日理事会で決議され、同日制定・施行とした。なお、旅費規定の改定により、本会規則第36条「交通費」の表記を「旅費」に改めた。
 文書管理規定の一部改正は、改正個人情報保護法の全面施行を前に整備した規定で、合わせて情報公開内規も合わせて設置し、5月13日理事会で決議し同日制定・施行とした。
 事務局長の職務及び勤務に関する規定の一部改正は、1月の理事会で定款に則した条文の改訂と事務局長の定年年齢を65歳から70歳へ変更するなどの一部改正を行った。(4)災害対応委員会規定は、甚大な災害については後方支援対応として特別委員会を設置して活動しているが、今後各種の甚大な災害が発生することが充分予想されることから、蓄積を継承しながら迅速に適切な対応が取れるよう常置委員会として設置することとし、3月25日理事会でこの規定を設けることで承認された。この設置により協会規則第27条は「8常置委員会」と改正された。
 最後に(5)名誉会員制度の運用については、昨年理事会で名誉会員に関する規定と内規を定め、名誉会員1名を推薦して総会で承認され表彰した経緯があり、理事会では長年の学界への顕著な貢献者を対象に名誉会員として、できれば来年総会で推薦するべく今年度理事会で検討する予定であるとの報告があった。

14.将来構想検討小委員会報告
 近藤英夫副会長から、将来構想検討小委員会は主に協会の中長期的な課題を整理して理事会に検討を要請することを目的とした委員会との説明があり、昨年度は(1)文書管理規定とアーカイブ、(2)賛助会員の運用について、(3)災害対応委員会の常置委員会の設置、(4)学会連合、(5)会費徴収システム化(キャシュレス化への取り組み)等の事案について課題の現状を分析して協議した。特に会費徴収システムの改善は重要課題の一つであり会員の皆様のご理解をお願いするとの報告があった。

15.文化財に関する諸問題検討会報告
 近藤副会長から、文化財に関する諸問題検討会は不法に持ち込まれた文化財の取り扱いについて会員からの質問に端を発して理事会に設けられた検討会との説明があった。昨年度は東京学芸大学総会で検討内容をポスターセッションで発表した。また、昨年は2015年2月に国連安保理で決議された「テロ等の資金源になっている不法に持ち出された文化財の不法取引を認めない」について識者を講師として検討会を実施した。この文化財の不法取引とは、シリア、アフガニスタン、パキスタン等の国から文化財が不法に持ち出され、海外のネットオークションで取引されているもので、今後継続的に検討を加えていくとの報告があった。
〈2〉2017年度事業計画
 佐藤総務担当理事から総会資料に沿って2017年度事業計画の一括説明があった。総会は大正大学、大会は10月21・22・23日、宮崎公立大学で開催を予定している。
 日本考古学協会は北海道アイヌ協会及び日本人類学会と共同で、アイヌ人骨・副葬品に係る今後の取り扱いの在り方に関するラウンドテーブルに参加しており、このラウンドテーブルについては報告書としてまとめられ協会公式サイトで公開している。本事業は、三学協会が持ち回りで公開講演会を開催しており、昨年度は札幌市で北海道アイヌ協会の主催で日本人類学会と日本考古学協会が参加する講演会を開催したが、今年は2017年12月に日本考古学協会主催で東京大学を会場として公開講演会を開催する予定である。
 次にアジア考古学四学会合同講演会は1月に開催する予定で、理事会、年報・会報・機関誌等は昨年度と同様の形で刊行していく予定である。陵墓、研究環境検討委員会、広報委員会、国際交流委員会、社会科・歴史教科書等検討委員会、埋蔵文化財保護対策委員会、日本考古学協会賞、平成28年熊本地震対策特別委員会、諸規則・規程等見直し検討会等の活動を今年度も引き続き実施するとの説明があった。
〈3〉2017年度予算について
 都築恵美子財務担当理事から2017年度予算書について説明があった。収入の部は会費収入40,990,000円、国庫補助金収入3,500,000円、雑収入に2,695,000円、利息1,000円で当期収入合計は47,186,000円、前期繰越収支差額が3,800,141円で、収入合計は50,986,141円となり、これに対して支出合計は49,488,000円で収支差額2,302,000円、当期繰越収支差額が1,498,141円との説明があった。前年度比の主な増減は、外注費827,000円減、旅費交通費371,000円減、印刷製本費593,000円減との説明があった。
 次に特別会計報告(平成28年熊本地震募金)予算書については、収入が前期繰越収支差額562,346円に今後の募金収入を見込んだ10,000円を加え572,346円とし、支出は旅費等を140,000円とする説明があった。
〈4〉協会設立70周年記念事業について
 谷川会長から2018年に日本考古学協会設立70周年を迎えるにあたり、事業を推進する委員会として協会設立70周年記念事業小委員会を設置したことが報告された。記念事業のテーマは、「転換期を迎えた日本考古学と日本考古学協会」(仮称)とし、社会の大きな変化で日本考古学の枠組みも転換期を迎えたこと、設立70周年を契機とした協会の転換期であることを70周年事業の趣旨とする説明があった。次に小澤理事から記念事業の実施期間を2017年4月から2020年3月までとする具体的な事業内容の説明があった。(1)日本考古学協会の創設期を中心にした協会関連資料の収集・整理・保管を行い資料のアーカイブ化を図る。(2)協会に長年在籍してご貢献いただいた会員の顕彰。(3)記念出版物として日本考古学研究の最新成果を語る『日本考古学レビュー2018』(仮称)の刊行。(4)考古学研究の成果を広く公開する記念講演会の開催。(5)『日本考古学と日本考古学協会1999~2018年』(仮称)の刊行、について説明があった。
 以上で予定されていた報告事項が終了し、議長は次第の〈その他〉で追加報告を理事会に求めたが追加はなく、各報告事項の一括質疑に移り会場から質問を求めたが質問はなく、議長は報告事項の一括決議を求め拍手をもって了承され、引き続き審議事項に入った。

【審議事項】

〈1〉2016年度決算承認の件
 都築理事から正味財産増減計算書にそって説明があり、当年度の経常収益計4,7142,324円のうち、主たる経常収益は会費収入41,229,844円、募金収入566,748円、国庫補助金収入2,500,000円であり、これに対して経常費用計は45,101,160円となった。前年度比では、旅費交通費1,616,920円減、 通信運搬費328,366円減、印刷製本費1,308,137円減の大幅な減額があり、当期経常増減額は2,041,164円で、正味財産期末残高は29,781,389円との説明があった。
 次に特別会計報告(平成28年熊本地震募金)収支計算書については、募金収入が566,748円、支出額は熊本地震募金の振込用紙印字代4,402円で、収支差額562,346円となり、次年度の繰越金とする説明があった。
 議長から監査報告が求められ、吉田哲夫監事から以下の報告があった。監査は唐澤監事と共に一般社団法人日本考古学協会定款第25条に基づき一般社団法人日本考古学協会第14期事業年度の事業報告、計算書類、その他理事の職務執行について実施した。事業報告は法令および定款に従い当法人の状況を正しく表示している。理事の業務執行に関しては、法令、定款に反する重大な事実はなく、法人業務、理事会決議の内容は適正であった。計算書類は当法人の財産および損益の状況をすべての重要な点において適正に表示しているとの報告があった。
 議長は審議事項〈1〉2016年度決算承認の件について、会場に質問を求めたが、質問はなく直ちに決議に入り、拍手をもって原案どおり承認された。
〈3〉災害対応委員会の設置について
 引き続き副議長から〈3〉災害対応委員会の設置について、理事会からの説明を求め、佐藤理事から説明があった。設置趣旨は、近年災害による文化財損壊および復興に伴う埋蔵文化財調査等が頻発し、その対応に特別委員会を設置しているが、今後こうした災害について日常的な活動が望まれおり、常置委員会として災害対応委員会を設置するとの説明があった。
 なお、委員には石川副会長、近藤副会長、宮本総務担当理事、杉井理事、菊地芳朗会員、岡村勝行会員、渋谷孝雄会員を予定しており、当面の活動は、文化遺産防災ネットワーク、文化庁等との連携を主に、発災時の対応マニュアル等を作成するとの説明があった。議長は審議事項〈3〉災害対応委員会の設置について、質問を求めたが、質問はなく、直ちに決議に入り、拍手をもって原案どおり承認された。
〈4〉事務局長の再任について
 続いて議長から審議〈4〉事務局長の再任について、理事会からの議案説明が求められ、谷川会長から昨年度1月理事会で事務局長の職務及び勤務に関する規定の一部改正が行われ、事務局長の委嘱期間を2年、定年を70歳に改正としたとの説明があり、3月の理事会において定款第31条第3号、会長、副会長、常務理事の選定および解職に基づき常務理事の再任が決定され、長瀬事務局長の再任の議案説明があった。
 議長は審議事項〈4〉事務局長の再任について、質問を求めたが、質問はなく、直ちに決議に入り、拍手をもって原案どおり事務局長の再任が承認された。
 以上をもって、2017年度第83回一般社団法人日本考古学協会総会の議案はすべて終了し、閉会にあたり近藤英夫副会長から閉会の挨拶があった。(午後0時20分)

2016年度事業報告

1.日本考古学協会賞の報告並びに表彰

2.総会・大会・公開講座等
(1)総  会  2016年5月28・29日     於:東京学芸大学
(2)大  会  2016年10月15・16・17日  於:弘前大学
(3)アジア考古学四学会合同講演会
         2017年3月4日        於:早稲田大学
(4)世界考古学会議第8回京都大会
         2016年8月28日~9月2日  於:同志社大学

3.理事会等
(1)理 事 会 2016年4月23日(協会事務所、以下特に記載のないものは同じ)、5月27日(東京学芸大学)、6月25日、7月23日、9月24日、10月14日(弘前大学)、2017年1月28日、3月25日
(2)臨時理事会 2017年5月28日(東京学芸大学)
(3)監   査 2017年5月10日(2016年度事業及び会計監査)

4.年報・会報・機関誌等
(1)年 報 第67号(2014年度版)2016年5月25日発行、第68号(2015年度版)編集
(2)会 報 №188(2016年8月1日発行)、№189(2016年12月1日発行)、
          №190(2017年3月1日発行)
(3)機関誌 『日本考古学』第41号 2016年5月25日発行
       『日本考古学』第42号 2016年10月14日発行
       『日本考古学』第43号 編集
       『Japanese Journal of Archaeology』Vol.4,No.1 2016年9月1日刊行
         『Japanese Journal of Archaeology』Vol.4,No.2 2017年3月29日刊行
       『Japanese Journal of Archaeology』Vol.5,No.1 編集
(4)公式サイトの更新

5.陵墓報告
(1)懇 談(2016年7月8日)
(2)見 学(2016年12月6日、2017年1月13日、1月19日、2月2日、2月16日)
(3)立入り観察(2017年2月24日)

6.研究環境検討委員会報告

7.広報委員会報告

8.国際交流委員会報告

9.社会科・歴史教科書等検討委員会報告
10.埋蔵文化財保護対策委員会報告
(1)委員会等
   委員会:2016年5月27日(東京学芸大学)
   幹事会:2016年4月16日(協会事務所、以下特に記載のないものは同じ)、5月21日、6月18日、7月16日、9月17日、11月19日、12月17日、2017年1月21日、2月18日、3月20日
   情報交換会:2016年10月16日(弘前大学)

(2)要望書等 
   〈要望書提出4件〉
    2016年4月28日 埋文委第1号「鎌倉市円覚寺西側結界遺構の保存に関する再要望書」
    2016年7月20日 埋文委第2号「北九州市城野遺跡の保存と活用に関する再々要望について」
    2017年2月2日 埋文委第8号「加古川市中道子山城の保存に関する要望書」
    2017年3月31日 埋文委第12号「筑紫野市前畑遺跡の保存に関する要望書」
   〈回答4件〉
    2016年6月10日 鎌道路第177号 鎌倉市長 松尾 崇
             「鎌倉市円覚寺西側結界遺構の保存に関する再要望について(回答)」
    2016年6月10日 鎌教委文第453号 鎌倉市教育長 安良岡靖史
             「鎌倉市円覚寺西側結界遺構の保存に関する再要望について(回答)」
    2016年8月4日 北九市文文第1402号 北九州市市民文化スポーツ局長 大下徳裕
             「北九州市城野遺跡の保存と活用に関する再再要望書に対する回答について」
    2017年2月15日 加危管第764号 加古川市長 岡田康裕、加古川市教育長 田渕博之
             「加古川市中道子山城の保存に関する要望について(回答)」

11.東日本大震災対策特別委員会報告

12.平成28年熊本地震対策特別委員会報告

13.諸規則・規定等見直し検討会報告
(1)賛助会員に関する規定及び内規の制定について
(2)著作権規定の制定について
(3)その他の規則・規定の一部改正について

14.将来構想検討小委員会報告

15.文化財に関する諸問題検討会報告

2017年度事業計画

1.総会・大会・公開講座等
(1)総  会 2016年5月27・28日     於:大正大学
(2)大  会 2016年10月21・22・23日  於:宮崎公立大学
(3)公開講座(国際先住民族の日記念事業)
(4)アジア考古学四学会合同講演会

2.理事会等
(1)理事会 年間7回(2017年5月・5月・7月・9月・10月、2018年1月・3月)
(2)総務会 随時
(3)監 査

3.年報・会報・機関誌等
(1)年 報 第68号(2015年度版)2017年5月発行、第69号(2016年度版)編集
(2)会 報 №191・№192・№193
(3)機関誌 『日本考古学』第43号 2017年5月発行、『日本考古学』第44号 2017年10月発行、
        『日本考古学』第45号 編集
        『Japanese Journal of Archaeology』Vol.5,No.1 2017年9月刊行
        『Japanese Journal of Archaeology』Vol.5,No.2 2018年3月刊行
        『Japanese Journal of Archaeology』Vol.6,No.1 編集
(4)公式サイトの更新

4.組織
(1)入会資格審査
(2)理事選挙

5.70周年記念事業

6.陵墓問題

7.研究環境検討委員会

8.広報委員会

9.国際交流委員会

10.社会科・歴史教科書等検討委員会

11.埋蔵文化財保護対策委員会  
(1)委員会等 委員会(2017年5月26日)・幹事会毎月1回・研修会1回・情報交換会1回
(2)要望書提出
12.日本考古学協会賞の選考

13.平成28年熊本地震対策特別委員会

14.諸規則・規定等見直し検討会