第86回(2020年度)総会報告

 一般社団法人日本考古学協会第86回(2020年度)総会報告

 今年の3月以来、日本考古学協会は、新型コロナウイルスの感染拡大というこれまで経験したことのない状況に直面している。第86回(2020年度)総会は、5月23日・24日に予定していた専修大学生田キャンパスでの開催を中止し、6月30日に書面議決を実施した。ここでは、書面議決という異例の事態となった第86回(2020年度)総会に至る経緯を記すことにしたい。

 新型コロナウイルスの感染者数が増加しつつあった、3月21日に会長・副会長・事務局長が感染拡大の対応策を検討し、その中で総会の開催に関しては、専修大学の総会実行委員会と連絡をとりながら対応を決定することにした。また、「一般社団法人日本考古学協会定款」(以下「定款」とする)第14条で、事業年度の終了後3ヶ月以内に総会を開催することが定められているため、6月末までに総会を開催して、「定款」による事業報告・決算、理事・監事選任、新入会員の承認、事業計画・収支予算の報告を行う必要があることが確認された。

 その後も新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、3月28日の会長・副会長・総務理事による総務会(首都圏在住者のみが出席した)において、専修大学での総会開催は中止の方向で早急に総会実行委員会と協議することになった。

 この時期、各大学では新年度の授業開始が延期され、オンライン授業やキャンパスの入構制限などの対策がとられることが発表されつつあった。4月3日に専修大学の高久健二総会実行委員長との協議が行われ、総会の専修大学での開催を中止することで合意した。公開講演会・図書交換会・懇親会は中止し、研究発表会(口頭発表・セッション・ポスターセッション・高校生ポスターセッション)は『日本考古学協会第86回総会研究発表要旨』を刊行して「誌上発表」として扱うことにした。なお、これは通常の研究発表ではないため、今後の研究発表申し込みの条件となる発表実績にはカウントしないことになった。その後、図書交換会の中止によって失われた情報交換の場を少しでも補うために、協会ホームページ上に「考古学スクエア2020」を開設した。また、総会は6月30日までに「定款」第19条に基づく書面議決を実施することにした。

 専修大学での総会開催の中止および総会の書面議決を実施する件は、「定款」第34条第2項に定められている、理事会のメール審議によって承認された後、4月8日に協会ホームページでお知らせし、また発表者等および会員にハガキで連絡した。

 総会の書面議決は、議案書を作成して5月理事会のメール審議に付議して承認した後に、会員全員に議案書および議決権行使書・委任状を送付し、その返送期限は6月27日消印有効とした。なお、総会は形式上、6月30日午前10時から日本考古学協会事務所で開催することにした。

 総会の議事は以下のとおりである。

  審議事項
   第1号議案 新入会員の承認に関する件
   第2号議案 2019年度事業報告・収支決算承認に関する件
   第3号議案 理事の選任に関する件
   第4号議案 監事の選任に関する件
   第5号議案 名誉会員の承認に関する件

  報告事項
   第1号報告 2020年度事業計画・収支予算に関する件
   第2号報告 刊行物発送方法の変更に関する件
   第3号報告 諸規定の一部改に関する件

 審議事項および報告事項第1号報告は、定款・内規に基づいた2020年度の協会の運営において必要な議案であった。議案・報告の詳細は書面議決の際に送付した議案書に掲載したとおりである。書面議決の結果および会員から寄せられたご意見とそれに対する回答については、別稿をご参照いただきたい。

 なお、2020年度大会は金沢大学角間キャンパスで開催予定であったが、感染の終息が見えないことから、実行委員会と協議の上、中止することにした。総会・大会が中止になったのは、協会の歴史において1970年度以来50年ぶりのことである。

 その結果、2021年度総会は専修大学生田キャンパス、大会は金沢大学角間キャンパス、2022年度総会は早稲田大学、大会は福岡市という、予定していた総会・大会を順延することになった。この間、各実行委員会や会員の皆様には多大なご迷惑、ご心配をおかけしたことをおわびし、また理事会の対応にご理解、ご協力をいただいたことに厚く御礼を申し上げる次第である。

(前会長 谷川章雄)

一般社団法人日本考古学協会第86回(2020年度)総会(抄録)

日   時 2020年6月30日(火) 午前10時~午後0時
会   場 日本考古学協会事務所(東京都江戸川区平井5-15-5-4階)
当法人会員(社員) 総数3,958名(この議決権3,958個)
出 席 会 員(社員)(委任状による出席を含む) 1,596名(この議決権1,596個)
出 席 理 事 矢島國雄、近藤英夫、高麗 正(議事録作成者)

開催案内状及び議決権行使書の作成

 総会の開催については、前述のとおり書面審議という方式を初めて採用した。ただ、実際の総会の会場を用意する必要があるため、当協会の事務所を設定しているものの、一方では新型コロナウイルス感染予防対策として濃厚接触をさけるため、当該会場への出席はご遠慮頂く旨も、全正会員に対しての開催案内状には明記させて頂いた。

 書面審議にあたっては、「総会議決権行使書」を案内状に同封し、開催日前の6月27日を提出期限日とした。この行使書については、幾つか工夫をしている。例えば、1枚の行使書が正会員の1票となるため、記名も原則自署で、それ以外の方には押印をお願いした。また一式で委任したい会員には、誰に委任したいか(議長または会員名)、さらには判断表記が不鮮明となった場合の集計判断の仕方を予め示すこととするなど、記入する側に集計する時のやり方を事前に案内し、当然、集計する側が正確に判断できるよう配慮した書式とした。

開催当日の経過と結果

 午前10時開始。これまでの通例の会員参集(対面)型の総会とは異なり、事前に提出のあった会員からの封書及び中身の「総会議決権行使書」を会場の中央に配置する。議事に入る前に、〆切日までに事務所に届いた封書から、先ず無効1(代筆と明記のあったもの)を分別し、次に行使書の設定区分により集計を行う手順とした。通例の代表挨拶等々は割愛。実作業にあたり、分類区分と基準の説明の後、2名の出席理事立会いのもと、協会の事務局職員により実施することとした。

 開封、記載内容の確認、枚数等が一定程度集計された段階で、上記に記した員数により総会が成立する旨が、出席理事2名により確認・報告され、以降、詳細な集計作業を進める。

 行使書には、議案1~5号(内容は前述のとおり)の全てに対して議長に一式委任する票(312票)と、各議案ごとに賛成、反対が示された票数を集計した。結果、反対票は第1号議案と第4号議案に対しては各1票、第5号議案には3票があったが、それ以外は賛成の票として集計された。

 以上の集計結果から、第2・3号議案は満場一致(1,595票)、第1・4・5議案については、大多数(1,592~1,594票)の賛成をもって、全5件の議案は、全て可決された。

 なお、上記の総会員の議決権の8分の1以上の議決権を有する会員が出席(委任状による出席を含む)し、協会の定款第18条第1項で定める議決権数を充足したので、以上の全議案に対しては承認されたこととなる。

 今回初めての書面審議という形態となったが、会員への発送枚数3,958枚に対して40%にあたる1,597名の正会員の方に議決権を行使して頂いた。コロナ禍にあって、非常に多数の会員から書面を提出頂いたこと、この場をお借りして感謝申し上げる次第である。

議事内容

 これまでの通常の総会(抄録)においては、各議案の説明、前年度の事業報告と収支決算、それに当年度の事業計画・それに関わる収支予算その他懸案事項、課題、会員への通知事項などが、逐一その概要説明と承認などの結果がまとめて記載されている。

 通常なら総会会場において各々の担当理事から議案・報告事項ごとに説明を口頭で実施していたわけであるが、今回の書面審議においては、総会開催に先駆けて配送された「第86回(2020年度)総会議案書」に、通例の基本資料を全て掲載したうえで、内容及び提案する事由を付して、全体や個別事案についても口頭説明の代わりに全て書面記載とすることで、書面のみでも会員諸氏の理解を得ることを期待して作成したものである。

 そのため、前項及び次頁で結果を示しており、ここでは逐一の説明・報告、決算・予算に関わる金銭事項も含め、全容は「総会議案書」を参照して頂くとしてここでは割愛する。

 なお、今回の書面審議の第5号議案であった、名誉会員に関わる表彰状の授与、挨拶、記念撮影等々は、可能な限り次回に実施する予定である。

会員からの意見にお答えして

 ところで、配送した行使書の書面には、会員の皆様からご意見を頂く欄を用意した。通常の総会会場では、時間の制限もあってか、普段はそう多くの会員からの意見を頂くのは難しい状況にあったが、今回の書面方式にあっては、35名の方から、一部同様な内容もあるものの多数のご意見、ご質問を頂戴することができた。通常、会場で担当理事が補足説明や疑問にお答えすることとしていたが、協会の運営方針や現在実施途上にある件などにも関わる質問・意見も少なくなかったことから、協会ではこの機会に、書面議決依頼時の予告どおり、この機会に本紙『会報』において、後述のように報告することとした。

 同種の質問・疑問を一部まとめたが、会員皆様からの生の声をできるだけ取り上げ、1問ごとに解説又は状況報告をさせて頂いた。なかには、デジタルやネット環境など昨今の時代・社会環境に則した目標の提示、またコロナ禍、ポストコロナの時代を見据えた提案もあり、今後の協会活動に対して多くの会員の方が関心を寄せられていること、また一方では心配ごとなどが多数・多様であることをこの機会に知ることができた。お寄せ頂きながら、なお不十分な回答に終始している件もあろうかと存じますが、ご寛容を頂くとともに、今後の協会にこれまで以上に支援を頂きたく、お願いする次第である。

新理事会によるコロナ禍での船出

 総会による会員からの承認(第2~4号議案)を受けたことで、正式となった役員(理事・監事)による第1回の理事会が7月11日に開催された。会長(代表理事)、副会長、全理事の会務の分担、前期役員からの引継等々が進められた(本誌の理事会議事録参照)。会議終了の後、一般社団法人としての役員の登記を進めるべく諸手続き事務が行われ、関連法規、当定款の規定に基づき、前役員の任務が完了し、間断なく会務を遂行するための期限日にあたる7月13日に無事、登記手続が完了となった。通年の5月総会開催からみると約2箇月遅れの船出となる。

                   (事務局長 高麗 正)

一般社団法人日本考古学協会第86回(2020年度)総会書面議決の結果について

 2020年度総会につきましては、書面議決による開催にご理解・ご協力をいただき、ありがとうございました。その結果について下記のとおりご報告いたします。

 

書面提出者 1,596名(委任状による出席を含む)

 正会員数3,958名に対し、書面提出者1,596名が集まりましたので、日本考古学協会定款第18条第1項に定める総会成立要件である8分の1以上の出席(書面提出者を出席者とみなす)を満たし総会は成立いたしました。

 

審議事項

 第1号議案 賛成 1,594票(委任 312票・賛成 1,282票)・反対 1票
 第2号議案 賛成 1,595票(委任 312票・賛成 1,283票)・反対 0票
 第3号議案 賛成 1,595票(委任 312票・賛成 1,283票)・反対 0票
 第4号議案 賛成 1,594票(委任 312票・賛成 1,282票)・反対 1票
 第5号議案 賛成 1,592票(委任 312票・賛成 1,280票)・反対 3票

 ※各議案とも無効1票

結果

 すべての議案について、日本考古学協会定款第18条第1項により出席者の過半数の賛成をもって承認されました。