第90回(2024年度)総会報告

一般社団法人日本考古学協会第90回(2024年度)総会報告

 2024年5月25日、26日の日程で、千葉大学西千葉キャンパスにおいて第90回総会が開催された。千葉大学西千葉キャンパスにおいて総会が開催されたのは2004年第70回以来20年ぶりとなる。JR西千葉駅と京成みどり台駅がキャンパスのすぐ近くに位置し、交通の便が非常に良い、緑の多いキャンパスである。今回の総会からは、これまでコロナ感染症で自粛していた懇親会や図書交換会も再開し、制限のない総会を実施することができた。総会は千葉大学山田俊輔実行委員長のもと、阿部昭典教授と千葉大学関係者の皆様を中心に、日本考古学協会企画担当理事が協力して運営された。なお、前日の24日は同キャンパスにて理事会、埋蔵文化財保護対策委員会が開催された。

【第1日:5月25日(土)総会・公開講演会・セッション1・懇親会】

 第1日目は総合校舎1階G2講義室を会場にして開催した。9時より受付を開始し、10時から進行の田尻義了総務担当理事より開会が宣言された。総会の対面出席は66名、委任状1,406名、合計1,472名であり、総会成立の定数を満たしていることが報告された。
 辻秀人会長の挨拶に続き、山田俊輔実行委員長から歓迎のご挨拶があった。総会審議に先立ちこの1年間で他界された16名の会員の方々に対し、黙祷を捧げ、弔意を示した。総会審議では定款第16条に則り辻会長が議長となり、副議長には四柳隆会員、松田光太郎会員、書記には宇井義典会員、國分篤志会員が選出された。議事録署名人には定款第21条の規定により総会出席代表者2名の小笠原永隆会員、芹澤清八会員が指名された。
 第1号議案は新入会員の承認に関する件について、田尾誠敏入会資格審査委員会委員長と谷畑美帆担当理事から説明があり、共に承認された。今年度の新入正会員は46名、賛助会員のフレンドシップ会員1名、学生会員5名である。その後、総会に出席している新入会員15名が登壇、自己紹介を行い、代表として塩屋慎介新会員が挨拶した。
 第2号議案の2023年度事業報告・収支決算承認に関する件では、最初に日本考古学協会賞に関する事業について澤田秀実担当理事から説明があった。協会賞大賞は三阪一徳会員の『土器製作技術からみた稲作受容期の東北アジア』(九州大学出版会 2022年)、奨励賞は土井正樹氏の『古代アンデスにおけるワリ国家形成 小集落からみた初期国家の出現過程』(臨川書店 2022年)、上田直弥会員の『古墳時代の葬制秩序と政治権力』(大阪大学出版会 2022年)、優秀論文賞は米元史織会員の「MSMsの時期的変遷からみる江戸時代武士の行動様式の確立」(日本考古学協会『日本考古学』第54号 2022年)、内田純子会員の「Gender Structure in Pre-Qin China with Focus on Anyang Yinxu」(『Japanese Journal of Archaeology』第10巻第1号 2022年)が報告された。
 続いて谷口榮総務担当理事が2023年度事業報告について説明し、各委員会活動は、下記のとおり順次各担当理事が説明した。陵墓報告(日高慎)、研究環境検討委員会報告(亀田直美)、広報委員会報告(野口淳)、国際交流委員会報告(足立拓朗)、社会科・歴史教科書等検討委員会報告(水本和美)、埋蔵文化財保護対策委員会報告(藤野次史)、災害対応委員会報告(田尻義了)、将来構想検討小委員会報告(藤沢敦)、アーカイブス小委員会報告(足立佳代)、理事選挙制度検討小委員会報告(小菅将夫)。続いて、2023年度収支決算について財務担当の肥後弘幸理事より説明があり、都築恵美子監事から、萩野谷悟監事との監査の結果、適正かつ正確であることが報告された。以上、第2号議案については、原案どおり承認された。
 第3号議案は理事の選任に関する件で、選挙管理委員会委員長の志村哲会員から開票結果の報告があり、新たに23名の理事が提案され、承認された。
 第4号議案は監事選任に関する件で、佐藤宏之副会長が説明した。萩野谷悟監事の退任に伴い、新たに谷口榮会員の選任が提案され、承認された。
 第5号議案の名誉会員の承認に関する件は、大竹幸恵副会長より、髙倉洋彰会員を選任するとの説明があった。髙倉会員は、本会在籍51年を数え、1994年から2015年に至るまで委員・理事を歴任し、2008年と2012年には、あわせて2期4年に渡り副会長として、2014年からは1期2年の会長として協会運営を支え、学会活動の発展に寄与された。提案については、拍手をもって原案どおり承認された。
 第6号議案「その他」として、石川日出志会員より追加議題として、新たに大学教育と考古学に関する小委員会の設置について提案され、了承された。
 続いて報告事項が説明された。第1号報告として2024年度事業計画に関する件について総務担当岩本崇理事より、2024年度収支予算について肥後弘幸担当理事から報告された。第2号報告の永年在籍会員表彰の件については、佐藤宏之副会長から報告された。今年度の永年在籍表彰会員は43名である。最後に第3号報告として追加報告等、会場への質問、意見が確認されたが、特に質問等はなく、拍手をもって了承された。以上で第90回総会議長団は解散・退席し、総会が無事終了した。
 壇上では引き続き名誉会員、永年在籍会員及び協会賞受賞者の表彰式が開催された。名誉会員の髙倉洋彰会員は欠席のため、田尻担当理事が謝辞のメッセージの代読を行った。また、総会に出席された永年在籍会員を代表して渡辺貞幸会員に賞状が辻会長より手渡された。引き続き協会賞の表彰は、大賞の三阪一徳会員、奨励賞の土井正樹氏、上田直弥会員が出席され、辻秀人会長より表彰状が授与された。それぞれの方より受賞の挨拶が述べられ、会場からあたたかい拍手が贈られた。最後に佐藤宏之副会長より閉会の挨拶があり、総会終了となった。
 午後1時より臨時理事会が開催され、会長副会長の選出が行われ、新たに石川日出志会長、大竹幸恵副会長、宮本一夫副会長が承認された。午後1時半からは石川日出志新会長が挨拶を行い、新たな理事会の発足を会員の皆様に宣言した。
 午後2時からは講演会に先立ち千葉大学大学院人文科学研究委員長である内山直樹先生からの歓迎の祝辞をいただいた。その後、講演会として岡本東三千葉大学名誉教授による「房総半島の海に学ぶ-その風土、風習、そして人-」が開催され、多くの会員や関係者が会場を埋め尽くした。引き続きセッション1として「縄文時代における洞窟・岩陰遺跡の調査研究と成果」が開催された。阿部昭典先生の趣旨説明に続き、5本の研究発表が行われた。
 午後6時からは4年ぶりとなる懇親会が大学生協で開催され、久しぶりに会員同士が交流を深めることができた。懇親会場では次回の開催地である島根大会(会場:島根大学)の松本岩雄実行委員長と、第91回総会(会場:筑波大学)の滝沢誠実行委員長からの挨拶があり、次回大会、総会への期待が高まった。

【第2日:5月26日(日)研究発表会(口頭発表・セッション・ポスターセッション・高校生ポスターセッション)・図書交換会】

 研究発表会では、口頭発表、セッション、ポスターセッション、高校生ポスターセッション、図書交換会が実施された。口頭発表は第1会場(106教室)と第2会場(101教室)で、№1から№26までが発表された。セッションは、第3会場(105教室)から第5会場(203教室)を使い、セッション1から7までが発表された。口頭発表、セッションは、いずれも対面とオンライン同時配信のハイブリッド方式で、大きなトラブルもなく実施できた。参加者は2日間で対面参加数延べ869名(会員550名、一般319名)であった。
 ポスターセッション27件と高校生ポスターセッション16件は、ともに法経済学部棟の1階2階の廊下を会場とし、あわせて協会公式サイトに5月26日9時30分から6月7日17時までそのデータが公開された。高校生ポスターセッションの審査は会長・副会長があたり、会場で表彰式が執り行われ、会長により講評があった。優秀賞は、岐阜県立関高等学校地域研究部の「東美濃三カ所城』の調査―戦国期の国衆と城下町―」、鳥取県立青谷高等学校青谷学Ⅱ(文学歴史コース)・弥生文化探求の「青谷上寺地遺跡水田の復元―実験水田とバケツ栽培からのアプローチ―」、福岡県立糸島高等学校 歴史部の「荒牟田1号墳出土象嵌鍔の検討」の3件で、いずれも地域の歴史を調査・研究する力作であった。
 また4年ぶりに開催となった図書交換会では118件の出展があり、様々な団体の研究報告や書籍が机の上に並んでいた。ここでも各所で関係者が旧交を温め、情報交換を行っていた。
 以上、2日間にわたる総会が滞りなく開催できたのは、共催していただいた千葉大学大学院人文科学研究院のご協力と実行委員長の山田俊輔先生率いる大学関係者、学生、同窓生の方々をはじめとする関係者のご尽力の賜物であり、心から厚く感謝申し上げたい。
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことで、完全に元の総会の在り方に戻ることになったが、以前に比べてオンライン配信という新たな業務も加わることとなった。実行委員会の皆様にはこれまで以上に大きなご負担をお願いしてしまったが、対面で交流することの大切さと共に、遠隔地の大学生が協会との距離を縮め広く関心を持ってもらうことは意義のあることだと考えている。これからも開催校の負担軽減を図りながら、多くの考古学関係者が幅ひろく関わり合える日本考古学協会でありたいと考えている。
 関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。引き続きよろしくお願いいたします。 (総務担当理事 田尻義了)

 

一般社団法人日本考古学協会第90回(2024年度)総会議事(抄録)

日 時 2024年5月25日(土) 午前10時00分~12時05分
会 場 千葉大学西千葉キャンパス総合校舎1階G2講義室
議長団 議長:辻秀人会長、副議長:四柳隆会員・松田光太郎会員  司会:田尻義了理事

 本日の司会は本協会の総務担当理事の田尻義了が務め、総会開催を告げる。

 続いて、2024年5月25日現在の会員数は3,717名、うち本日の総会対面出席者数は、午前10時の時点で66名、委任状預り分1,406名、合計1,472名となる。総会議事を進めるにあたり、この1,472名は当協会の定款第18条の総会の決議に定める総正会員数の1/8以上(人数465名)を上回っており、本日の総会議事は成立する旨の報告があった。また、本総会のオンライン視聴者は事前に委任状を預かっており、視聴のみで発言権がない旨を確認し、総会を開始する。
 開会にあたり、一般社団法人日本考古学協会を代表して辻秀人会長から次の挨拶がある。本日の総会・大会に至るまでに山田俊輔実行委員長、阿部昭典先生はじめ千葉大学の多くの皆さん、そして、ご協力を頂いた皆さんのご努力の結果、総会に臨むことができ心から感謝を申し上げたい意が先ず伝えられた。
 さらに、「日本の考古学研究者が、全国組織としてこうした機会を持っていることが非常に大切なことである。コロナ禍もあって難しい事もあったが、協会を維持し更に発展させたいと思っている。本日は岡本東三先生の公開講演をはじめ、明日からは多くの研究発表が予定をされており、本総会が考古学という学問にとって前進をする一つの機会になれば良いと思っている。皆様も積極的にご参加いただいて研鑽の場としていただければ大変ありがたく思う」という旨を述べた。
 引き続き、第90回総会の実行委員を代表して、 千葉大学教授、山田俊輔実行委員長から歓迎のご挨拶があった。「2日間にわたり皆様に楽しい時間を過ごしていただけるように努力をしていく。今回はコロナ禍以降の総会としては、 懇親会、図書交換会も含めて完全に元の総会の形に戻った。唯一違うのがオンラインを併用したハイブリッドで行うことである。しかし、総会というのは情報や知識を得るだけではなく、人と人との繋がりが得られるような会になれる、会であるべきであろうと思っている。そのため会場構成を非常にコンパクトにしている。図書交換会、研究発表が隣接しているところがあるが、皆様が久しぶりに会う、旧交を温める、新しい交流を生む、そうした機会として頂けたらと思っている」と結んだ。
 次に審議に先立ち、司会からこの一年間に他界された16名の会員の氏名を読み上げ、参加者全員起立の上、黙祷を捧げた。

議 事

 協会定款第16条の規定により総会議長は辻会長が議長となり、副議長・書記の選出方法については、定款では特に定めがなく、会場からの立候補もなかったことを受けて、実行委員会で準備をしていた人選で参加者からの承認を得た。副議長には千葉県の四柳隆会員、同じく松田光太郎会員、書記は東京都の宇井義典会員、神奈川県の國分篤志会員があたる。また、本日の総会議事録の署名には、協会定款第21条の規定により千葉県の小笠原永隆会員と栃木県の芹澤清八会員に議長から指名があり、先の議長団と同様、会場からの了承を得る。議長から議事進行の概略等の説明がある。

[審議事項]

第1号議案 新入会員の承認に関する件

 日本考古学協会の会員には、正会員と賛助会員の2種類があり、先ず正会員について入会資格審査委員会の田尾誠敏委員長から説明があった。入会申請50名であり、2023年12月9日開催の第1回審査委員会で申し込み総数50名のうち資格基準を満たす方44名、満たさなかった方3名、保留3名とされた。その後、追加資料を基に翌年の1月12日に第2回審査委員会では保留3名の内、2名が入会資格基準を満たすと判断され、1名が満たさないという結果となった。よって、2024年度の正会員入会資格審査では申し込み総数50名のうち、入会資格基準を満たす方46名となった。この結果は2024年1月27日に開催された定例理事会で報告され、了承が得られた。さらに、3月上旬に正会員に入会適格者46名の一覧表を送付し、意見を求めた結果、特に異議申し立ての意見はなかった。
 次に、谷畑美帆理事から賛助会員についての説明があった。正会員と同じく12月9日及び2024年1月12日に開催された資格審査委員会において、賛助会員申し込みのフレンドシップ会員1名、学生会員5名について審査した。そして、2024年1月27日の定例理事会で審議、承認された。なお、今回は法人会員の応募はなかった。
 議長から第1号議案について、会場に質問を求めた。質問はなく、賛成多数で原案どおり承認された。そこで会場参加の15名の新入会員全員が登壇し、都道府県とともに自己紹介を行った。新入会員46名を代表して、福島県の塩谷慎介会員から挨拶があった。

第2号議案 2022年度事業報告・収支決算承認に関する件

 配布資料記載の順に、最初に事業報告、次に収支決算についての順に説明と審議を行った。事業内容及び各委員会に関わる業務について、担当理事から以下の説明があった。

〈1〉2023年度事業報告

 1.日本考古学協会賞の報告

 澤田秀実理事からの説明。2023年度、第14回日本考古学協会協会賞への応募件数は6件であった。応募審査は12月から開始し、本年3月5日にオンラインによる選考委員会で審査された。2023年度の協会賞選考委員会は、前年度からの4名の委員及び担当理事2名、計6名で構成した。また、以下は3月23日開催の理事会において承認された。
 大賞は、三阪一徳会員の『土器製作技術からみた稲作受容期の東北アジア』(九州大学出版会)、奨励賞には、土井正樹氏の『古代アンデスにおけるワリ国家の形成 小集落からみた初期国家の出現過程』(臨川書店)、上田直弥会員の『古墳時代の葬制秩序と政治権力』(大阪大学出版会)の3篇が選ばれた。また、機関誌編集委員会からの推薦による優秀論文賞には、米元史織会員「MSMsの時期的変遷からみる江戸時代武士の行動様式の確立」(『日本考古学』第54号)、英文機関誌『Japanese Journal of Archaeology』に投稿された論文でJJA編集委員会からの推薦による優秀論文賞は、第10巻1号に掲載された内田純子会員の「Gender Structure in Pre-Qin China with Focus on Anyang Yinxu」が選ばれた。2023年度の特徴を委員長講評では、応募件数が昨年度に比して増加したが、まだ推移を見守り、何らかの対応の必要性があろうとの委員会意見であったと説明。また、継続的な協会賞対象者確保のため、2024年度からPDFによる業績提出を認めることとなった。
 なお、各受賞作の選考理由と講評については、『会報No.212』及び協会ホームページを参照願いたい。

 2.総会・大会・公開講座等 3.理事会等 4.年報・会報等 5.機関誌等

 谷口榮総務担当理事から「総会議案書」に沿って2023年度事業報告の説明があった。2023年度はコロナ禍前の状況へ、いかにして戻していくのかに取り組んできた一年であったと報告。第89回総会は東海大学で開催され、宮城大会は東北学院大学で開催された。いずれもオンラインと対面を併用したハイブリッド形式で行なわれた。宮城大会では限定された規模ではあったが、図書交換会も行なわれた。
 理事会、委員会活動等も対面とオンラインの併用を基本として、従来の状況を概ね実施できた。

 6.陵墓報告

 日高慎理事からの説明。陵墓関係16学協会の幹事学会として、当協会が2023年度も陵墓公開運動全体に関わる連絡調整役を担当した。16学協会には、運動の立案と実務にあたる7協会の運営委員会が設けられており、これまで通り当協会が幹事を務めた。2023年度は、コロナ禍の影響を受けたここ数年と異なり、例年通りのスケジュールで活動できた。
 まず、陵墓関係16学協会運営委員会を6月13日に、全体会議および宮内庁との陵墓懇談を7月6日に開催した。懇談の主な議題は、「令和5年度陵墓保全整備工事について」、「令和5年度事前調査の有無について」、「立入り観察候補について」であった。
 立入り観察については、誉田御廟山古墳(応神陵)について、2023年度は2022年度参加以外の8学協会が立入する事を確認し、2024年3月1日に実施した。2022年度とは逆方向からの立ち入りルートでの実施で新たな知見も確認された。第一次リストの対象として、その他に大山古墳、百舌鳥陵山古墳、多聞城を残しており、引き続き実施可能なように宮内庁との協議を継続していく。このほか、2024年2月2日に塚穴古墳(来目皇子墓)の整備工事予定区域事前調査の限定公開に伴う、急遽の見学実施。また、2023年6月7日に大阪府叡福寺北古墳(聖徳太子磯長墓)、11月30日に奈良県念仏寺山古墳(開化陵)、2024年1月19日に京都府白河天皇陵、2月29日に鹿児島県高屋部事務所修繕工事の立会見学を実施した。
 さらに、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録を契機とした陵墓古墳の登録名称問題について、12名からなる陵墓学術名称ワーキンググループを新期に立上げ、2023年4月6日、6月2日、8月8日、10月13日、12月25日、2024年2月25日にミーティングを開催した。そして、本年3月1日開催の陵墓関係16学協会の全体会議で中間報告案を提示して、この学術名称について各学協会に検討を依頼した。
 また、陵墓関係16学協会へ新規加入希望の学会に対して、2024年2月7日の運営委員会、3月1日の全体会議で提案され、各学協会に加入検討を依頼したことが報告された。

 7.研究環境検討委員会報告

 亀田直美理事からの報告。本委員会は考古学に関わる研究環境を改善し、考古学の発展と広い理解の促進を目的として、行政、大学、博物館、調査機関、民間調査機関等、様々な組織に属する委員で構成された委員会である。2020年度から主にアイヌ民族における研究倫理問題に関する委員会の実務的な窓口として、委員会内に「研究倫理部会」を設置した。ただし、当部会は実務に特化し、情報や問題意識の共有はするが、通常の活動とは切り離されている。
 近年、文化財関連業務の後継者育成と発掘調査技術の継承、さらに報告書の質の堅持を主な課題として取り扱い、総会でのセッション等も開催してきた。2023年度総会では「研究環境検討委員会の問題提起2023-文化財行政における環境変化-」と題したポスター発表を行った。その中で、大学・行政・調査組織・博物館の枠組を超えた連携による人材発掘・育成の必要性を強くうたっており、当協会は、組織体制の整備・制度設計等に向け実践者としての提言を継続すべきであるとした。
 また、当協会のアウトリーチ活動である「カフェde考古学」のうち1回を本委員会が担当し、「考古学の仕事場から パート2 博物館編」と題し、地域博物館や大学博物館等、多様な博物館に従事している方に登壇を願い、仕事の実態と魅力を語るオンライントークセッションを行った。配信会場には、大学生、大学院生も参加し、臨場感あるカフェとなった。昨年度同様、多くの参加者を集め、具体的な考古学に関わる仕事に関する情報が求められているということが理解された。
 さらに、今年度は「考古学研究会」と連携し、「大学における考古学教育に関する実態調査」というアンケートを、現在実施中であるとの報告があった。他団体との連携によって、より多様な視点を持つことができる新たな試みとなっており、協力頂いている方々に感謝の意を表した。
 また、定例委員会をオンラインと対面のハイブリッドで6回開催し、後継者育成だけではなく、博物館法の改正に関わる問題、あるいは近現代遺跡の取り扱いの問題等、幅広く意見交換を行なってきた。今後もその中で提起された課題の解決に向け、積極的に議論、検討、対応すると報告された。

 8.広報委員会報告

 野口淳理事からの報告。本委員会は、会員及び社会に対して、当協会の活動を広く発信するために設置された常置委員会である。主な活動は『会報』の発行、公式サイトの企画・運営、「カフェde考古学」の企画開催・協力である。
 2023年度はオンライン13回、対面1回の委員会を開催し、『会報』はNo.209~211の3号を発行。主な取組事業は、2022年度に引き続き、公式サイトのリニューアルに向けた検討。現公式サイトは2016年度に更新されたもので、デザイン構成の見直し要請、システムのセキュリティ対応の問題が指摘されていた。さらに、総・大会のオンライン・ハイブリッド開催への対応をはじめ、公式サイトが担う役割が大きく変わりつつある状況下で、部分的改修ではなく、全面的更新に取り組むこととしていた。検討に際しては、実務に詳しい会員による検討ワーキンググループを組織した。また、財務担当理事とも調整の上、プロポーザル方式による公式サイトリニューアル実施業者の選定を決定し、2024年度中のリニューアル実施のための発注準備を進めた。なお、プロポーザル選考にあたっては会員及び外部の有識者による審査委員会を組織し、広報委員会と事務局が調整と事務を担当することとしている。
 また、カフェde考古学は昨年度の企画を継続し、2023年3月から2024年4月まで2ヶ月に1回、各委員会によりテーマを設定し開催した。本委員会として、主にポスター・チラシの作成等により開催周知を図っている。その他の活動として、昨年度に引き続き総会会場における図書交換会の開催困難への対応として、公式サイト上で考古学スクエアを実施し、図書交換会の代替とした。しかし、宮城大会から図書交換会の会場実施が再開し、今回第90回総会でも会場での図書交換会が実現した。このため考古学スクエアについてはその役割を果たしたとして、本年度で事業として終了した。
 2024年度は、引き続き『会報』の発行、「カフェde考古学」の企画・開催と公式サイトのリニューアルの実施を行う。「カフェde考古学」については、2024年度からは広報委員会が主担当となること等、体制の変更をした。公式サイトリニューアルについては、6月にプロポーザル審査委員会を組織し、7月に選考、実施業者の決定後、年度内に新規公式サイトへの移行を完了する予定で進めると報告された。

 9.国際交流委員会報告

 足立拓朗理事からの報告。文化庁開催の『発掘された日本列島2023』展の内容に基づき、内容を公式サイトでアップロードを行うのが主な活動である。英語・中国語・韓国語による翻訳をし、予算の許す限りの公開、紹介を行った。

 10.社会科・歴史教科書等検討委員会報告

 水本和美理事からの報告。本委員会では「考古学の学問的特性や研究成果が学校教育に適切かつ有効に活用されるよう図るとともに、必要な働きかけを行うこと」を目的として活動を行っている。具体的には、子ども達が学ぶ歴史教科書や歴史教育の指針となる学習指導要領の分析・検討を継続的に行い、その現状と課題を本協会の総・大会における研究発表の場や各種の誌上発表を通じて広く公開・発信し、情報共有を図っている。
 教科書の記載内容について、昨年度の総・大会でのポスターセッションにおいて、2020年度から全ての教科書より旧石器時代の取り扱いが消えてしまった事実を指摘した。縄文時代については、2011年から全ての教科書にその記述が復活した。しかし、それから10年を経過した今では「国の始まり」よりも前の時代とされる歴史の記載については、旧石器時代の取り扱いに限らず、著しい簡略化が進んでいる。本委員会では、この事実を重く受け止め、旧石器時代から始まる歴史の記載について、日本旧石器学会および日本人類学会と連携を諮り、関係機関をはじめ広く一般に向けて、その意義を発信する活動に取り組むことした。
 アウトリーチ活動として、2023年12月9日に本委員会が主催致した第5回「カフェde考古学」では、「みんなで巡る旧石器時代全国遺跡ツアー」と題し、北海道から沖縄の博物館をオンラインでつないだ。居ながらにして全国の遺跡と研究成果に触れた一般の方々からは、この列島の大地に刻まれた旧石器時代の歴史を、是非、子どもたちの教育に活かすべきであるとのご意見を頂いた。さらに、本委員会では、学校現場での探究学習・GIGAスクール構想に活用できる、旧石器時代から近現代に至る考古資料のWebコンテンツについて資料を収集し、その活用手法についても検討を重ねていくと報告された。

 11.埋蔵文化財保護対策委員会報告

 藤野次史理事からの報告。以下の7項目の活動を報告。①定例幹事会を毎月第2土曜日を基本に、毎月1回、計11回行った。②総会時の対面による全国委員会開催。③宮城大会時の情報交換会の実施。④「広島城三の丸歴史館建設予定地とその周辺の国史跡追加指定および同建設予定地の変更に関する要望書」 ほか、合計7本の要望書提出を行った(詳細については 総会議案書3・4頁参照)。⑤2024年3月25日に発出された「品川開発プロジェクト第2期事業予定地における高輪築堤跡の保存を求める会長声明」に関連して本委員会として協力した。⑥2024年3月4日に文化庁と懇談を行った。懇談のテーマは、保存要望書提出遺跡に関わる話題、その他の埋蔵文化財保存に関わる話題、 近現代遺跡の取り扱いと調査・保存・整備に関わる話題。能登半島地震に伴う埋蔵文化財被災に関わる話題、近年の埋蔵文化財行政・人材育成に関する話題等である。⑦日本考古学協会主催の2023年度「カフェde考古学」について、第1回「近現代遺跡をどう守り伝えるのか」を企画、実施した。

 12.災害対応委員会報告

 田尻義了理事からの報告。2023年度は2023年6月、2024年1、2、4月の4回オンラインで会議開催。それ以外は委員会委員において、メールを中心に災害による文化財の被害状況の情報共有を図った。特に、2024年1月1日に発災した令和6年能登半島地震に対して、被害の情報共有や当協会として何ができるかを議論させていただいている。能登半島地震では、地震の被害状況を共有するため、新たに石川県2名、富山県1名の委員3名を追加した。また、毎週開催されている能登半島地震被災文化財救援事業の会議に出席し、情報共有をしている。さらに、文化財レスキュー事業に4月22日より5日間、災害対応委員会の委員1名が参加し、地元の文化財の救出の手伝いをさせていただいた。
 その他、2024年2月10日の第6回「カフェde考古学」において、「近年の災害と埋蔵文化財について」リモートで事業を開催した。平成28年熊本地震における被災文化財への対応を紹介するとともに、能登半島地震による文化財被害の状況について速報して、今後の課題について情報共有また意見交換を行った。
 なお、国が主体として推進している「文化遺産防災ネットワーク推進会議」に昨年度2回(5月31日・6月5日)出席をして、当協会として埋蔵文化財に対する復旧の状況やその課題、防災への取り組みについて報告した。また、その他の文化遺産分野における災害対応について情報交換・意見交換を行っている。

 13.将来構想検討小委員会報告

 藤沢敦理事からの報告。当協会では、社会や経済の変化を見据えながら、協会の将来的な課題について協議するために、理事会とは別に、本小委員会を設けている。委員会構成は、正・副会長と総務担当理事及び常務理事という総務会と同メンバーである。開催は不定期。2023年度は、総務会終了後に2回開催。5月6日は、『年報』のPDF化について検討。PDF化については、移行期間を設ける必要があること、PDFの配付方法については協会公式ホームページでの会員専用ページの設置や運営などとも密接に関係すること等を確認した。それを踏まえ7月15日に、今後の協会運営の簡素化、効率化を実現し、持続可能な構造を実現することを大目的として、公式ホームページへの総・大会申し込みシステムの組込み、会員専用ページ作成に向けての検討を行った。会員専用ページへの付与機能は、総・大会参加申し込み、研究発表申し込み、会員名簿の閲覧、『年報』・『会報』のPDF化と会員専用ページを使っての配布等を想定している。さらに、7月22日の理事会後の理事懇談会において意見交換を行い、これらを前提に公式ホームページの改修を進めていく中で、今後の在り方を検討していくこととなった。

 14.アーカイブス小委員会報告

 足立佳代理事からの報告。本小委員会は当協会の歴史的な歩みについて、証拠立てる文書等の記録を収集・整理し、その社会的責任をどのように果たしてきたのかを明らかにするとともに、将来的な検証・評価に備えるなど、当協会のアーカイブ資料の構築を目的に、2019年9月に設置された。現在、矢島國雄委員長ほか計4名で構成。
 2023年度は、資料のデジタルデータ化、分類・保存袋入れ、資料確認を実施。資料のデジタルデータ化は、『日本考古学年報』41~68・70巻、冊子の『会員名簿』21冊について外部委託によりデータ化を実施し、終了。定期刊行物のデジタルデータ化についてはこれでほぼ完了。協会創設期から法人化された2008年までの各委員会活動資料調査については、関係協会図書に関わる特別委員会の資料整理、小委員会関係では「データベース作成委員会資料」、「法人化資料」、「陵墓関係資料」の整理についてデータ打ち込みが終了。科研費関係の公開促進費の補助を受けた事業では『日本考古学年報』、『日本考古学』、「データベース」のデータ打ち込みが完了。会員調査票は作業は終了しているが、会員394名の入会年度のデータの追加記載及び中間法人化以前の新入会員関係書類の調査をも実施。いずれも協会事務所において委員が作業実施。特別委員会、小委員会、事務局資料で未了、未着手資料があり、今年度以降実施する予定であるが、当小委員会は2025年度で解散予定であるため、今後、協会資料のアーカイブ化の継続、デジタル資料の保存活用のシステム構築等を実施するため、当委員会の継続、更新についても検討する必要があると報告された。

 15.理事選挙制度検討小委員会報告

 小菅将夫理事による報告。本小委員会は、当協会理事選挙制度に関わる法人企画の確保と選挙事務の効率化について検討し、提言を行うということを目的として活動している。活動は、選挙制度に関わる「日本考古学協会規則」を改訂し、諸規定間の整合性及び投開票事務の簡素化、効率化を図り、2022年理事選挙制度に反映されている。
 また、コロナ禍により影響を受けた、前々回の理事選挙開票状況に鑑み「危機管理マニュアル」を整備するなど、当初の活動目的を達成することができた。さらに、2ケ年の活動を総括し、投票権の格差是正や理事選公募の欠員に関する規定などについて、今後の審議課題として理事会に報告した。

〈2〉 2023年度収支決算

 肥後弘幸理事からの報告。貸借対照表及び正味財産増減計算書により、要点のみ説明。貸借対照表は財務状況を示し、固定資産の基本財産は前年度と動きがない。流動資産41,887,717円あるが、その中には未収会費5,925,000円が含まれている。これは2022・2023年度2ヶ年度分の会費滞納額の合計となる。さらに、貯蔵品は販売用の図書類。仮払金は、今年度はなし。貸借対照表の考え方では、未収会費も債権という資産に含まれる。現在、会員の年会費は前納をお願いしている。滞納会員には、事務局あるいは理事から督促を行って会費の確保に務めた。会員の皆様には会費の納入に関して重ねてご協力をお願いしたい。負債の部で、未払金が大きく減っている。これは、2009年に有限責任中間法人が一般社団法人に移行する際に、当時の税制対策上、移行時にあった会費等の一部約520万円を未払金として扱っていたものを、税理士の提案を受け、債務免除金として整理した。正味財産は、現在の当協会の資産の合計で、3,872,939円が前年度に対する当年度増。債務免除金520万を含んでいるので、実質132万円ほど、収入に対して支出が超過した。
 正味財産増減計算書で説明。経常収益42,138,175円、内訳は会費が大部分。会費収入が730,000円減っている。収益全体で約111万円の減少。支出の給与手当の増は、10月に事務局職員の給与改定を行っためである。昨年度に比べ旅費が180万円ほど増えている。なお、未払金の債務免除益は経常外収益として計上している。
 特別会計報告であるが、2022年の事業を繰り越したが、最終的に旅費の残額を学術振興会に返還することとなった。

 監査報告

 都築美恵子監事からの報告。監査は、決算その他を含め、萩野谷悟監事と共に、5月9日に当協会事務所にて財務担当理事2名及び常務理事1名との対面で実施した。そして当日、下記の監査報告書が提出された。
(1) 事業報告及び付属明細書は法令及び定款に従い当法人の状況を正しく表示しています。
(2) 理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令もしくは定款に違反する重大な事実はありません。
(3) 当法人の業務の適正を確保するために必要な体制の整備等についての理事会の決議の内容は相当です。
(4) 計算書類とその付属明細書は当法人の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示します。
 以上、2024(令和6)年5月9日 一般社団法人日本考古学協会 監事 都築恵美子、監事 萩野谷悟
 次に質問等を受ける。質問はなかったため、第2号議案は原案どおり承認された。

第3号議案 理事の選任に関する件

 選挙管理委員会、志村哲委員長から開票結果を報告。理事選挙は2023年11月8日に告示をし、26名の立候補があった。2024年2月18日に選挙公報を出し、3月11日から4月5日までを選挙運動期間及び投票期間とした。4月6日協会事務所において選挙管理委員会が開票作業を行った。その結果は議案書9頁の通りである。有権者数3,799名、投票者数1,078名、投票率28.4%、投票率は2022年度よりも1.8%の増加。有効投票枚数1,069枚、無効9枚、有効記名欄数8,870票、無効記名欄数29票、無記名欄数7,136票、立候補者得票数8,870票。上位23名が次期理事候補者と決定。
 次期理事候補者23名と常務理事1名の24名の選任を諮る。質問等はなかったため、第3号議案は原案どおり承認。

第4号議案 監事の選任に関する件

 佐藤宏之副会長から提案説明。本協会の監事の任にあった都築恵美子監事が、定款第26条2項の規定に基づき、2期4年の任期を満了した。ついては、定款第13条1項2の規定に基づき、新たに谷口榮会員を監事に推挙すると説明。
 質問等を受ける。特になかったため、第4号議案は原案どおり承認。

第5号議案 名誉会員の承認に関する件

 大竹幸恵副会長から提案理由説明がある。名誉会員の推薦に際し、名誉会員選考委員会より「名誉会員に関する規定」第3条に示す推薦基準に基づき、2024年度の名誉会員として髙倉洋彰会員の推薦が提案された。理事会では2023年12月理事会で承認。続いて髙倉会員の経歴や業績、推薦理由についての概略説明がある。
 髙倉会員は福岡県立九州歴史資料館主任技師として太宰府政庁をはじめとする福岡県内の発掘調査と研究に従事し、1990年から西南学院大学教授、同大学博物館館長として考古学を学ぶ学生の育成に従事し、2014年に西南学院大学名誉教授を授与されている。本会在籍51年を数え、委員・理事を歴任されて、2008年からは副会長、そして会長として本協会の組織基盤構築と学会活動の発展に尽力をされてきた。その研究活動は、東アジア全体を視野に置く弥生時代の社会構造の解明をはじめ、多方面にわたる多大な研究業績を上げている。また社会的活動としても、九州国立博物館の建設をはじめ、広い見識をもとに各地の博物館建設構想委員会の委員長を多数務め、精力的に地域の文化財、その保存活用に取り組まれてきた。これらの多大な貢献と長年の功績に感謝と敬意を込めて、名誉会員の称号を贈ることを説明。
 質問を求めたがなく、第5号議案は拍手により原案どおり承認。

第6号議案 その他

 石川日出志会員ほか3名の会員からの要望として、「大学教育と考古学に関する小委員会(仮称)の設置について」の追加議案が提出された。
 代表して石川会員からの議案提出の概要説明がなされた。議案書の別紙「審議事項の提出について」で説明。本小委員会設置の必要性及び協会の常置委員会である研究環境検討委員会との接続・連携は必須であるが、当委員会とは別の独立した小委員会として設置する等の趣旨、取り扱う4項目の事項、留意事項等について説明がなされた。

 (質問等)

 秋田県の小林会員からの意見、要望。行政内研究者に学位を授与するような機会を、検討課題の中に加えてほしいとの要望。
 その他、質疑、意見等なかったため、本提案は決議された。

[報告事項]

第1号報告 2024年度事業計画・収支予算に関する件

〈1〉2024年度事業計画

 総務担当岩本崇理事からの説明。例年と異なるものを中心に説明。2024年度総会は、千葉大学で対面とオンラインを併用しながらの開催となり、懇親会・図書交換会も実施することとなった。秋の大会は島根大会となり、同じく対面とオンラインの併用での開催予定である。また、9月8日(日)明治大学リバティホールを会場に、邪馬台国の時代を考古学から検証するという公開シンポジウムの開催を計画している。また、当協会公式サイトリニューアル事業を計画している。加えて、当協会の英文機関誌である『Japanese Journal of Archaeology』は1号の刊行を計画している。

〈2〉2024年度収支予算

 肥後弘幸理事から説明。先ず一般会計。収入について、正会員が66人少ない3,771人で、正会員と賛助会員を含めた会費収入が37,846,000円、シンポジウム等での雑収入を含めた収入合計が41,608,000円。これに前年度の繰越差額25,755,000円を加えた収入合計が67,363,000円である。支出については、会費収入の減少が著しいことから、切り詰めたものとなっているが、物価高騰などもあり、全体に増加傾向にある。給料や手当は、前年度に比べて955,5000円増。外注費は公式サイトシステムの構築費 8,000,000円を計上している。旅費・印刷製本費の増は、シンポジウム等の開催に伴う支出、印刷製本費の高騰に伴うものである。予備費10,853,000円は、次期繰越金に当たるものである。前期繰越金 25,755,000円に対して1,500万円ほど大幅に減少。総じて協会の財政は厳しい状況のため、事業収入(雑収入)の増加に期待した予算である。

第2号報告 永年在籍会員表彰の件

 佐藤宏之副会長からの説明。当協会では、協会設立70周年記念事業の一環として、「会員の顕彰に関する内規」を制定し、2018年度総会において協会に永年在籍し、協会の事業活動に多大な貢献をされた正会員69名の方々を称え、表彰させて頂いた。翌年度、内規を一部改正し、永年在籍者の条件の一つに「正会員として50年在籍し、本会の発展に寄与したもの」を加えた。2019年度総会では1966年から1969年に入会された49名の該当会員を顕彰させて頂いた。本年度も引き続き、50年在籍された1975年度入会の43名の正会員を対象者として顕彰させて頂いた。また、対象の正会員の方々には、そのご貢献を称えて協会からシニア・フェローの称号を贈らせて頂く(拍手)。

第3号報告 その他

 理事会から追加報告の提案はなく、さらに質問を求めたが特になく、報告事項を終了する。

 

 辻会長により、閉会の挨拶があり、本日予定の議案報告事項はすべてを終了し、議長団の職を解く。以上をもって、第90回総会を終了とした。

 

表彰式・記念撮影会の実施

 名誉会員、協会賞受賞及び永年在籍会員の表彰式を執り行い、その後、会場にて記念の写真撮影が行われた。名誉会員に表彰された髙倉洋彰会員から開始。表彰状の読み上げの後に、当日欠席により髙倉会員からの「謝辞」のメーセッジが田尻義了担当理事から代読披露された。次に、先に報告された日本考古学協会賞大賞、奨励賞、優秀論文賞授与者には、壇上において会長からの表彰状の読み上げがあり、終了後に挨拶を頂く。対象となった著作、論文のポイントの解説や今後の研究に対する抱負等が語られた。続いて、永年在籍会員の表彰式が行われ、43名を代表して、島根県の渡辺貞幸会員に表彰状が授与された。

 コロナ禍を経て対面を再開し、オンラインと共にハイブリッド方式という形の進行は、つつがなく終了した。この抄録には逐一掲げられなかったが、企画段階から携わった多くの関係諸氏や役員、また当日、裏方となって支えて頂いた方々も忘れてはならない。本抄録作成にあたり、特に、書記及び千葉大学の実行委員会皆様の協力を頂き、前述に掲げた議長団、議事録署名の諸会員によるご協力を頂いた。深く感謝申し上げる次第である。
                                  (常務理事兼事務局長 山﨑和巳)