東大構成員全員にZoomのアカウントが配布されたのは、3月初めのことでした。しばらくは「これは何だ?」という反応でしたが、やがて4月から当分授業はオンラインになるという通知が、本部からやってきました。
それから3週間は、生まれて初めてのオンライン授業(文学部は全てリアル)の教材作成と練習に当てられ、4月末から授業が正式に始まりました。とりあえず講義と演習はPCの画面にひたすら話しかけることでなんとか成立しました(と思っている)が、考古学教育の本領である実習をどうするか、これが最初の課題となりました。
東大考古学の伝統(慣習?)では、60年以上続けている夏の常呂実習施設での発掘実習(ほぼ一ヶ月の必修)の準備として、実測・拓本・測量機器の扱い等を実地で習得する実習が夏学期の必修なのに、これができないことになりました。とりあえず今年は、担当教員がこれらの作業を画像化して配信することでお茶を濁しましたが、これで発掘の知識が習得できるわけがありません。
北海道の片田舎に独立した学生宿舎があったおかげで、常呂の実習は何とか実施できました。それでも三密対策のため、受講生は居室(一人室)から無闇に外には出られず、食堂は使用禁止(飲み会はもちろん禁止)。賄いはなし(自炊禁止。三食弁当調達)。地元の方とは接触禁止。などなど、これでは楽しいはずの発掘も、苦痛以外の何者でもありませんでした。恒例のホタテ・カニ・エビ・サケのBBQもなし、でした。
冬にはこの実習で調査した成果を整理する集中講義が開講される予定ですが、これもオンラインとなりそうです。最近の整理作業は、イラストレーターやドロップ・ボックスを利用して行う様になったので、少しは対応可能ですが、実物に相対しない整理作業ができるか、これから工夫が求められるでしょう。
世間では「新しい生活様式」が求められていますが、大学は「新しい大学」が求められようとしています。さらに「新しい考古学教育」を早急に模索していかねばなりません。教員生活の最後を飾るには、重い仕事になりそうです。