第5回「今、何をやるかを改めて考える」 谷畑 美帆

昨年度末から総会開催が危ぶまれ、今年度の研究発表は紙上発表のみとなってしまいました。発表者の方々はもちろん運営側の人間の精神的疲労や負担はいかほどであったか・・・。私自身、旧理事会に席をおき、さまざまな業務に携わらせていただきましたが、引継ぎなど、そのけじめをつけることができなかったことがとても残念です。

協会はIT化が進んでいないとよく言われますが、今回の騒ぎで少し進展したように感じます。理事会のうち1割ほどはメール審議でもいけるのではないか、ZOOM会議も1割程度なら導入できるのではということで導入されたように私は思いました。これは不幸中の幸いかもしれません。しかし、対面での話し合いが、なくなるべきではないことは言うまでもありません。そのため、今までの制度を根本から変えることは、現段階ではないと思います。

 また今年は、オンライン開催に踏み切った学会もいくつかあり、大きな問題はなかったようです。「遠隔のため、いつも参加できないが今年はできた」という声もありましたし、交通費がかからないオンライン学会には利点があります。ただある学会では「パソコン操作が難しく、毎年参加しているが今年はどうしてもだめだ」とわざわざ研究室までお電話をくださった方がいらっしゃると聞き、考古学の場合は完全なオンライン開催は難しいと感じました。

私見ですが、さまざまな会員のニーズにこたえるために以下のような2段構えでいくのはどうかと思うのです。

  • オンライン開催にて参加
  • 会場にて参加

*感染拡大などによって会場(対面の)開催ができない場合、都道府県ごとに小ホールを借りて、オンラインをそこで見ていただくなど(理想論?)

大学のオンライン講義にしても、いい面とそうでない面があります。先日、たまたま学生の声を聞くことができたのですが、オンライン講義に3年生以上は適応しているようです。1年生の場合は、入学後、友人をつくる機会がないためつらいこともあるでしょうが、上の学年になると通学時間を節約できるので、大教室の講義は今後もオンラインを希望すると言っていました。また、こんな学生もいて驚きました。

入学後、一度も大学に登校せず自国でオンライン講義を聴講しているという韓国からの留学生がいたのです。感染リスクが少なく、自由に行動できるのでコロナ騒ぎがおさまるまではしばらく日本には来ないと言っていました。私が学生の時には想像すらできなかった学生生活を彼らは展開しているようです。ただ講義の中にはゼミや実習のように、対面でないとだめな場合もあります。

 今、私は大学院生を一人みていますが、やはり近くに来てくれないとだめなことがたくさんあります。月に何回か会って、色々な話をしながら進んでいく、これは絶対です。本で学べる事、資料を一緒に触りながら学べる事があるからなのですが、これはオンライン化が進展しても変わることはないでしょう。

考古学は究極のエンターテイメントでもあります。この側面をもっと出しながら学会の活動を進め、フレンドシップ会員(この種の会員は霊長類学会には多いと聞きます)の方々と共に実施していかなければならないこともあるでしょう。暗いニュースが続きますが、考古学の側から明るい情報を発信しつづけることが何よりも必要だと今感じています。

また通勤などの無駄な時間が減り、原稿がどんどん書けるかと思っていたらそうではありませんでした。緊急事態宣言解除から結構時間が経って、今、改めて何をやるか、何ができるかを考え、焦りながら、仕事を少しずつ進めています。 


学生と共に金鈴塚古墳の見学をする(昨年度の台風被害が痛々しい)。