第7回「『こんな時だからこそ』の試み」 佐古 和枝

 あけまして、おめでとうございます。昨年は、コロナ対策に明け暮れて、大変でした。

私の勤務校は外国語大学なので、私が担当する考古学・古代史系の講義は選択科目にすぎません。それでも、語学系大学でのモノ珍しさか、毎年総数500名余の受講生がいます。大人数のクラスはオンデマンド形式なので、お互いの顔を見ることもなくPCと睨めっこの毎日。学生も教員も、心身ともに消耗します。しかし、気が滅入るばかりではツマラナイ。コロナ禍の時だからこそ、できることはないものかと考えて、以下のようなことをやってみました。

①インターネットで博物館めぐり~いつもなら、遺跡や博物館の見学をレポート課題にするのですが、春学期は外出自粛モードで、博物館も休館でした。それでも、多くの博物館はHPでいろいろな工夫をし、休館のダメージを補おうとしていましてあ。そこで、学生も「おうちでミュージアム」。歴史系博物館のHPをあちこち見比べて、どこの博物館のHPがよかったかを、さまざまな視点でリサーチさせました。博物館に一度も行ったことがないという学生も少なくないのですが、HPを通じて博物館の多様な仕事ぶりを知り、博物館に対するイメージがガラリと変わったと言います。

 また、わが校は留学生が多いので、留学生には各自の母語で博物館HPを閲覧し、外国人にわかるようなコンテンツになっていたかどうかをレポートしてもらいました。これは、なかなか興味深いものでした。身近に留学生がいたら、試してみてください。

②インターネットで図書館蔵書の検索~春学期は大学が封鎖され、図書館が使えなかったことは、学生にも大きな損失でした。しかし、インターネットで蔵書を検索することはできます。そこで、課題は「図書館で、読んでみたい歴史の学術書をみつけよう」。図書館の検索では本のタイトルと著者名しかわからないので、改めてインターネットで著者の経歴を調べたり、ブックレビューを参照して、1冊を選ぶのです。とはいえ、課題を出さねばほとんど本を読まないという今どきの学生達です。1度も大学の図書館に行ったことがないという学生も少なくありません。歴史の研究者の名前を知る由もなく、研究者と小説家の区別もできません。条件設定をする際に、こちらがいろいろ考えさせられました。ともあれ、漫画しか読まない学生達が、図書館の膨大な蔵書の森にわけ入って、少しばかりは知的興奮を体験したようでした。

②WEBサイト「全国子ども考古学教室」~2020年7月にスタートさせた小学校高学年向けのこのサイトは、歴史専攻ではない大学生にはちょうどいい課題となりました。とくに「行ってみよう」で全国47都道府県の代表的な遺跡が紹介されているコーナーが人気を集めました。自分の出身地を調べるだけでなく、行ってみたい都道府県やイチ押しの「お宝」の紹介など、さまざまな切り口で楽しく盛り上がりました。

 いずれも、コロナ禍の窒息感を解消するための苦肉の策、通常の対面授業では思いつかなかったことでした。しかし、やってみたらなかなかおもしろく、多くの気づきもありました。「禍を転じて福」とまではいかないけれど、せめてこれを奇貨として、次のステップに活かしたいと思います。

 2021年は、どんな年になるでしょう。何はともあれ、昨年より10センチでも5センチでも、良い年になることを祈っています。

 

WEBサイト「全国子ども考古学教室」https://kids-kouko.com/
(制作:NPO法人「むきばんだ応援団」、kid’s考古学研究所)