第33回「コロナ禍だからこその活動をめざして~岐阜県立関高等学校の場合」 林 直樹

高校の郷土史研究クラブの近況と課題

高等学校の郷土史研究クラブは、全国的にクラブ数・部員数が激減し退潮傾向にあります。部活動で研鑽を積んだ高校生が大学で考古学を専攻し、地域の文化財保全・活用に尽力する時代はとうに終わりを迎えています。現状改善のためにも、高校生の郷土史研究への支援は、考古学界にとっても喫緊の課題だと考えます。

 

日本考古学協会の高校生ポスターセッション

その意味では、日本考古学協会総会で開催される高校生ポスターセッションは、参加者にとって得難い機会となっています。受賞の喜びもひとしおですが、そうでなくとも、地方の高校生が、研究者や他校の生徒と直に語らう機会は実に貴重であり、このイベントの真骨頂はまさにそこにあると思います。コロナ禍で一昨年は中止、昨年はポスター審査となりました。やむを得ないことですが、語り合う場がなかったことは残念でした。ただ、後日会長自ら高校生向けにコメントをいただけたことにより、部員の士気は高まりました。記して感謝申し上げます。2022年の高校生ポスターセッションは、すでにオンライン開催が決定していますが、わずかでも質疑応答の時間を確保していただければ幸いです。

 

世代・地域を越えた学びの場

高校生には、日本考古学協会以外にも奈良大学や徳島県主催の全国コンクールがあり、切磋琢磨の場となっています。小中生にもこうした場があればと考えていた矢先、一昨年、WEBサイト「全国子ども考古学教室」で「キッズ考古学新聞コンクール」が始まりました。入賞した作品を見る機会を得ましたが、力作ぞろいで驚かされました。こうした動きと高校生の部活動をつなげるべく、「探ろう!岐阜の歴史」と銘打った小中高生の発表会を関市と共に企画し、12月に関市内で開催しました。関係市町の担当者に加え、考古学研究者の橋本裕子氏にも臨席していただき、世代や地域、立場を越えた学び合いの場となりました。

 

学校と自治体・博物館・大学の連携

こうした活動には、地元の自治体や博物館、大学との連携が不可欠です。本校では、地元自治体と連携し戦争遺跡の測量調査や歴史観光ツアー立案などを、コロナ対策に万全を期しながら進めています。コロナ禍以前は、遠隔地で活動することもしばしばありましたが、コロナ禍であるからこそ、学校や自宅からほど近い地元でフィールドワークを行う機会が増えました。

他方、リモートによる交流も思わぬ展開、成果を生みつつあります。2022年1月には、鹿児島大学の渡辺芳郎教授のオンライン講義が実現しました。本校若手教員と連携して日本史授業を行うという試みです。当日は江戸期の対外交流の考古学を、授業の展開にあわせ講義していただきました。研究室と教室とをオンラインで結ぶ授業は、まさにコロナ禍であるからこそ生まれ得たものです。

コロナ禍だからこその地元密着であり、遠隔地とのリモート交流。今年はこうした活動をさらに充実したものとする1年でありたいと常々考えています。

 

関市と連携した戦争遺跡の測量