新型コロナウイルス感染症の拡大によって、遺跡を取り巻く様々な活用事業にも大きな影響が及んでいます。特に、これまで対面で行ってきた活動のほとんどが大きな制約を受け、事業の見直しを迫られました。ここでは、コロナ禍における史跡の活用について、鳥取県立むきばんだ史跡公園の事例を御紹介させていただきます。
例年、むきばんだ史跡公園では、大規模集客イベント(春・秋)、土曜講座(年5回)、弥生の森講座(年2~3回)、弥生のものづくり講座(年2~3回)、ジュニアファンクラブ、女子考古部のほか、地元と連携して組織した「活用実行委員会」による竪穴住居の宿泊体験など様々な事業を実施してきました。このほか、土日祝や夏休みに実施する簡易古代体験を含めて、平成29年度には弥生体験者の数が10,961名に達し、来園者の3~4割の方が何らかの体験に触れていただく状況でした。
ところが、令和2年から始まったコロナ禍で状況は一変します。イベントや講座は中止や延期を余儀なくされ、令和2年4~5月には開園以来初めてとなる臨時休館も経験しました。その後も、講座等の開催方法や定員の見直し、オンラインの併用や動画の配信など、新型コロナウイルスと共存してイベントや講座を開催する方法を模索し続けています。
例えば、大規模集客イベントでは開催日数を複数設定して分散開催するとともに事前予約制を採用して、密の回避と消毒時間の確保に努めました。コロナ禍前であれば、1日で2000~3000名の参加があるところ、コロナ対策を講じた令和2年度は5日間で1146名、令和3年度は2日間で871名の参加となりました。1日あたりの参加者数は減少しましたが、その分、細やかな対応ができたと思います。
また、今では当たり前になってきた「動画配信」や「オンライン配信」にも取り組みました。令和2年7月にYouTube「むきばんだ史跡公園チャンネル」を開設し、少しずつコンテンツを充実させています。また、令和3年度から土曜講座のオンライン配信を開始したところ、関東・中部・近畿など遠方の方に御参加いただけるようになり、新たな可能性も見出すことができました。
このほか、イベントや講座ができなかった分、コロナ禍後を見据えて展示の多言語化やARコンテンツ制作などの取り組みも行っています。コロナ禍のために従来の活用事業は大きく見直しを迫られましたが、コロナ禍がなければ取り組めなかった事柄があるのも事実です。私たちにとって対面による事業の重要性は言うまでもありませんが、コロナ禍で学んだことも数多くありました。今後も、より良い史跡の活用と情報発信の方法を模索していきたいと思います。