2025年高校生ポスターセッション報告
高校生ポスターセッションは、考古学に関連する調査研究について公募し、制作したポスターの掲示・解説による発表会である。この取り組みは、高校生および高校の教育現場と考古学研究者を結ぶコミュニケーションの場であり、本年で10回目となる。また、発表は考古学協会の会長と二人の副会長によって審査され、そのなかから3件が優秀賞として表彰される。近年、応募件数が増加しつつあり、今回は18件となった。近年の傾向としては、歴史部や郷土部などの部活動のほか、個人の参加も見られるようになってきた。こうした高校生たちが一人でも多く、考古学の魅力を感じながら、この道に進んでくれることを願いたい。
ポスター発表のデータは、日本考古学協会公式サイトで公開され(5月25日から6月16日)、『日本考古学協会第91回総会研究発表要旨』に概要が掲載されている。会場設営と運営にご尽力頂いた筑波大学実行委員会の皆様に厚くお礼申し上げる。
(企画(高校生ポスターセション)担当理事 黒澤 浩)
優秀賞受賞者および発表題目/石川日出志会長による講評
今回の審査では、公正を期すために、(1)研究発表要旨、(2)ポスター、(3)会場での研究発表・説明、の三項目を採点して行った。
K12 法政大学第二高等学校 社会科学歴史研究部「所蔵瓦からみる武蔵国古代影向寺」
まず評価したいのが、長年部室に「放置されていた遺物」に影向寺遺跡で採集された資料が含まれることに気づき、自発的に整理を行い、指導を得るべき専門家にたどりついて適切な比較検討を進めた点である。第二に、資料の数を確認し、拓本を作成し、部位やタタキ目による分類を行った点である。先行研究の調査とその理解も的確である。楽しんで研究を進める様子がよく分かる。
K14 徳島県立脇町高等学校 園田映音「『吉野川域における塚穴』第六種に関する考察ー中井伊與田は何を見たのかー」
日本考古学の創成期の1892年(明治25)の論文を取り上げ、現在の古墳時代後期の横穴式石室の研究成果と照らし合わせて、位置付ける試みである。研究発表要旨の構成・記述が的確であり、専門家の助言を仰ぎつつも、単独で詳細な比較研究を進めている。研究の進め方・論理展開も的確で専門性の高い研究となっている。論題の表現も魅力的で、執筆者を伏せれば高校生の研究発表とは思われないであろう。
K18 鹿児島県立古仁屋高等学校 まちづくり研究所部「史跡の保存と活用における地域の課題ー史跡「奄美大島要塞跡」の活用についてー」
同部は、昨年度も「国史跡『奄美大島要塞跡』を活用した集落活性化の試み」で研究発表を行った。今回は、さらに周囲に所在する縄文時代・古墳時代併行・中世の3つの史跡も加え、高校生による史跡案内や島唄演奏、大学や企業との連携などの実践経験をもとに、高校生を含めた住民が中心となることが重要だという提言は、現在、全国で進められる歴史・文化遺産の活用事業の参考にもなるであろう。私たち専門家も大いに学ばせてもらった。