当協会の事業・活動に対し、日頃よりご理解、ご支援を賜り感謝いたします。
さて、当協会では、福山市鞆地区の歴史的景観および港湾文化財の保全・保護の必要性に強い関心を持ち、別紙のような内容でお願いをいたしたく、ここに依頼文を送付させていただきます。
意のあるところをお汲み取りのうえ、よろしくご高配賜りますようお願い申し上げます。
日頃より、本協会の活動につきご理解ご協力を賜り、厚く感謝申し上げます。
私ども日本考古学協会では、一昨年より広島県と福山市が推進する鞆地区道路港湾整備計画に基づく「鞆の浦」の埋立て・架橋工事に対して、同地区の歴史的景観および港湾施設にかかる文化財を保全・保護すべく、計画の見直しを要望してきました。
ところが、開発の主体者である福山市や広島県は、本整備計画の見直しはいっさい行わず、従来どおり埋立て・架橋工事を推進する方針に変更はない、とうかがっております。このまま工事が実施されれば、遙か古代から現在まで良好に伝えられ保存されてきた埋蔵文化財や歴史的建造物群を含む町並みや寺社をはじめ、近世の港湾関連遺構群である「雁木」、「常夜燈」、「波止」、「焚場」、「船番所」、「亀の甲」など、貴重な歴史的文化遺産に対し、計り知れないダメージを与えることになるのは必至であります。
昨今、我が国においては新たに「景観法」が制定され、文化財保護法においても「重要文化的景観」の定義とその保護が謳われるなど、地域に継承されてきた歴史的、文化的景観の保護やその修景に努め、自らが暮らす地域に誇りを持てる日本として市民の意識を高揚する方向性が強く示されています。そればかりか、こうした方向の実現をより確かなものにするため、歴史まちづくり法(「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」)も制定されたところです。このように、地域の歴史的景観や歴史的建造物等を再評価し、地域の生活・文化とともに保存し、後世に継承していこうとする機運が官民あげてますます高まっている状況にあります。
このような点からも、日本考古学協会は、福山市鞆地区が歴史的風致に恵まれ、固有の文化的価値を有する港町として、その文化遺産を永く後世に伝えていくことこそが、近年の国や市民の動きのなかで、新たな町づくりの原動力になるものと確信いたします。私どもは今後も、福山市および広島県に対し、港湾と町並みが一体となった鞆地区固有の歴史的景観ならびに港湾文化財を全面的に保全・保護し、将来にわたって活用されることを強く願い、また求めていく所存です。
ここにご参考までに、日本考古学協会がこれまでに各方面に提出した鞆地区の保全・保存問題にかかる下記の書類を添付させていただきます。
ご多用中まことに恐縮ではありますが、私どもの要望の趣旨をお汲み取りいただき、鞆地区道路港湾整備計画を抜本的に見直す勇気あるご英断をいただきたく存じます。このことが、地域の活性化のための最良の策であると深く確信しておりますことを改めて申し添えさせていただきます。