2004年6月7日
文化庁長官 河合隼雄 様 和歌山県知事 木村良樹 様 和歌山県教育長 小関洋治 様 岩出町長 中芝正幸 様 岩出町教育長 数見之男 様
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。
なお、当件の具体的な措置、対策については6月28日(月)までに、ご回答を下さるようお願いいたします。
一、別添書類 一通
以上
文化庁長官 河合隼雄 様 和歌山県知事 木村良樹 様 和歌山県教育長 小関洋治 様 岩出町長 中芝正幸 様 岩出町教育長 数見之男 様
和歌山県那賀郡岩出町に所在する根来寺は新義真言宗の総本山で、保延六年(1140)高野山金剛峰寺から分かれた覚鑁上人が、この地の豊福寺に移り住んだことに始まります。最盛期の戦国時代には、東西2km、南北3kmの範囲に、坊院数四百数十を構える大寺院となりましたが、羽柴秀吉による天正13年(1585)の根来攻めにより、現存する大塔・大師堂を残してその多くが灰燼に帰してしまいました。江戸時代には一部の主要伽藍が再建されたものの、多くの坊院跡は再建されることなく田畑となって今日に至っております。そのため、現在でも寺域内には坊院の区画を示す段や石垣が数多く遺され、中世の歴史的景観を非常に良く留めております。
1976年以降の大規模農道建設に伴う発掘調査を契機とした長期にわたる調査から、寺域内には根来攻め以前の遺構が極めて良好な状態で遺されていることが明らかとなっております。今回の町営駐車場建設予定地の発掘調査では、大湯屋遺構と隣接した穀屋・庭園を伴う坊院跡が良好な状態で発見されております。とくに大湯屋遺構は中世の根来寺を象徴する遺構として、考古学・歴史学的に重要な位置付けがなされております。一方、中世史料にも記載があり伽藍域と境内都市域の結節点に位置する「大門池」では、町立図書館建設による埋め立て計画が進行中で、こうした蚕食的な開発により、貴重な歴史的景観の損失が危惧される状況となっております。
根来寺遺跡はその周囲を防塁で囲むなど、防御施設を持った大規模な寺院跡群で、日本では数少ない宗教都市として「中世の日本三大遺跡」の一つとして全国的にも周知されており、我が国の中世史解明の上で、学術的に欠くことのできない重要な遺跡と言えます。
以上のことから日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、根来寺遺跡の重要性に鑑み、以下の通り要望いたします。
以上