第2回(2011年度)日本考古学協会賞の発表
第2回日本考古学協会賞は、昨年度の5件に対して10件の応募がありました。2012年2月25日(土)に選考委員会が開催されて、日本考古学協会大賞に舟橋京子氏の『抜歯風習と社会集団』、奨励賞に樋上昇氏の『木製品から考える地域社会-弥生から古墳へ-』が推薦され、3月24日(土)の理事会において報告、承認されました。
この経緯を受けて、5月26日(土)の第78回総会で承認を受け、菊池徹夫会長から各受賞者に賞状と記念品が贈られました。
日本考古学協会大賞
舟橋京子 著
『抜歯風習と社会集団』 すいれん舎 2010年6月16日刊行
推薦文
本書は、縄文時代から古墳時代にかけての抜歯風習について、東アジア各地との比較を行いながら総合的に考察し、抜歯風習とその背後にある社会集団の解明へと迫った研究である。詳細な研究史の検討から問題の所在を明らかにしたうえで、抜歯鑑定の基礎となる歯科学的方法から検討し、考古学・自然人類学の方法を駆使して抜歯型式の再検討、遺跡での出土状況および抜歯の施工年齢・順序、血縁関係や出産経験の有無等の基礎的事実を明らかにし、起源・系統論、社会的機能に関する考察を行い、抜歯がソダリティ表示の成人儀礼として盛行することなど従来の抜歯学説を大きく塗り替える成果をもたらした。
このように、歯科学、自然人類学、文化人類学の知見と方法を考古学の枠組みの中で融合させた本書は、抜歯研究や骨考古学の分野のみならず、先史社会研究において今後避けて通れない一書であることから、選考委員会は本書の著者、舟橋京子氏を第2回日本考古学協会大賞候補として推薦する。
日本考古学奨励賞
樋上 昇 著
『木製品から考える地域社会-弥生から古墳へ-』 雄山閣 2010年5月20日刊行
推薦文
本書は、当該期の木器資料を広く集成し、用材、製作技術、使用などに関する基礎的研究を行い、さらに木器流通システムや、木器専業工人の成立過程など意欲的な社会的考察を行ったものである。その基礎的研究は緻密であり、主要用材が広葉樹から針葉樹へ移行するプロセスや農具形態変化の意味の解明のほか、多くの新知見をもたらした。また遺物論と集落論を有機的に関わらせることによって、弥生中期から後期にかけて鉄製工具の普及にともない完成品が木器流通の主体となること、また弥生中期以後に精製木製容器が中核集落で専業的に製作されだし、弥生後期には超精製容器が首長の空間で製作されるようになったことを解明している。木器は非常に多様な用途に用いた重要な器物であり、本書は今後の当該期の生活と社会を考えるうえで不可欠のものになるであろう。以上の理由から選考委員会は、樋上氏の著作を日本考古学協会奨励賞にふさわしいものと一致して判断した。