埋文委ニュース 第84号

2024.8

埋文委ニュース 第84号

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

 本年度の埋蔵文化財保護対策委員会は、総会に先立って千葉大学西千葉キャンパス人文社会科学系総合研究棟2階マルチメディア会議室を会場として35名(会場16名+オンライン19名)の参加を得て開催された。吉田広副委員長(愛媛県)による挨拶の後、議長団に菊地芳朗委員(福島県)、會下和宏委員(島根県)、書記に山﨑吉弘委員(埼玉県)を選出し、議事を進行した。

1 2024-2025年度委員の改選について

 事務局より、理事会に推薦する2024-2025年度の委員について提案されたが、名簿案に記載漏れの委員がいたため、これを修正する形で理事会に提出することとした。

2 委員長・副委員長選出

 2024-2025年度の委員長及び副委員長について、委員長に吉田広委員、副委員長に菊地芳朗委員、田尻義了委員(福岡県)が推薦され、満場一致で承認された。

3 2023年度活動報告・決算報告

 幹事会の開催状況、広島県広島市広島城跡・兵庫県南あわじ市門崎砲台跡・島根県出雲市大社基地遺跡群などの保存に関する要望書7件についての提出及び経過、総会時の委員会、大会時の情報交換会、文化庁との懇談、現在進行中の検討事項と今後の課題についての概要、ならびに決算の報告がそれぞれ行われた。

 松本富雄委員(埼玉県)より、近代化遺産や戦争遺跡保存の在り方について、埋文委としての見解を固めるべきとの意見が出され、今後幹事会で協議することとした。

4 2024年度活動方針案・予算案の審議

 2024年度の活動方針、予算案について審議し、全会一致で承認された。なお、埋蔵文化財をめぐる状況調査については、これまでは年度末に実施していたが、当該期は多忙な委員が多く、秋頃の実施で検討することとした。

5 地域連絡会からの報告

①北海道・東北地区連絡会

 菊地芳朗委員より、活動状況の概要報告があった。収蔵庫の老朽化、人材不足、メガソーラー開発等の問題が顕在化しつつあることが報告された。

②関東甲信越静地区連絡会

 日暮晃一・小笠原永隆(千葉県)の両委員より、千葉県南房総市・鴨川市嶺岡牧について、周知の包蔵地が開発行為で一部破壊されたため、5月17日に保存要望書を提出したこと、ならびに現在の状況が報告された。
 松本富雄委員より、埼玉県北本市デーノタメ遺跡の近況について、2023年7月に議会全員一致で保存を前提として区画整理を見直すことが決議され、国指定についても地権者全員から了承を得られたことが報告された。
 橋本博文委員(新潟県)より、令和6年能登半島地震による新潟県内の文化財被災状況(春日山城跡、笹川邸住宅、博物館施設、相川金銀山等)について報告された。

③関西地区連絡会

 一瀬和夫委員(大阪府)より、大阪万博会場のトイレ施設に利用される木津川市残念石の状況が報告された。
 荒田敬介委員(兵庫県)より、幕末期から明治時代にかけての神戸港の開港・築港の変遷に関する遺構が検出された神戸市海軍操練所跡の状況が報告された。

④中国地区連絡会

 會下和宏委員より、地区内各県の動向(島根県松江市の調査体制、広島市における近現代軍事関係施設跡等の取扱い基準変更、岡山県倉敷市酒津遺跡・鳥取県米子市米子城跡・広島県広島市広島城・島根県出雲市大社基地跡の状況等)について報告された。

⑤四国地区連絡会

 吉田広委員より、地区内各県の動向(徳島県徳島市徳島城跡、高知県安芸市瓜尻遺跡・南国市若宮ノ東遺跡等の状況)について報告された。

⑥九州・沖縄地区連絡会

 田尻義了委員より、福岡県北九州市旧門司駅跡問題についての状況、日本考古学協会を含めた関連学会合同保存要望書が提出されたことが報告された。

6 その他の地域からの報告

 三好清超委員(岐阜県)より、能登半島地震で飛騨みやがわ考古民俗館保管の県重文土器に被害があり、県博協によるレスキュー活動が行われたことが報告された。
 高橋浩二委員(富山県)より、富山県内の能登半島地震被害について、県西部で被害が目立ち、各市町村で文化財レスキューが実施されていることが報告された。

7 令和6年度能登半島地震における文化財保護の現状 と課題

 伊藤雅文委員(石川県)から寄せられた情報(文化財レスキューの経緯と現状、指定史跡等の被災状況)について、小笠原永隆事務長が代読する形で報告があった。
 菊地芳朗委員からは、災害対応委員会が持つ情報の共有があり、今後も連携を図っていくことが確認された。
                                    (小笠原永隆・山崎吉弘)