2018.8
埋文委ニュース 第74号
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会
埋蔵文化財保護対策委員会*******2018.5.25
本年度の日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、2018年度総会に先立って明治大学リバティタワー1085教室を会場として、担当理事及び委員等34名の参加を得て開催された。藤沢敦前委員長による挨拶の後、事務局推薦により議長に田尻義了(福岡県)・馬淵和雄(神奈川県)、書記に関口慶久(茨城県)・山崎吉弘(埼玉県)を選出した。主な議事内容は以下の通り。
1.2018-2019年度委員の改選について
小笠原担当理事から、先の理事会で122名の委員を一括承認したことが報告された。なお、岩手県の委員は現在空白となっているため、後日追加承認を図る予定であることも併せて報告された。
2.委員長・副委員長の選出
委員長に藤沢敦委員(再選)、副委員長に山田康弘委員(再選)・吉田広委員(新選出)が満場一致で承認された。この後、新委員長の挨拶があり、文化財保護法改正案等が国会に上程され、文化財保護行政が大きな転換点に立っている中、より良い方向性を目指していきたい旨の発言があった。
3.2017年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動報告及び決算報告
月例幹事会の開催(9回)、長崎県長崎市小島養生所関連遺構・奈良県奈良市登大路瓦窯跡群の保存に関する要望書提出、福岡県筑紫野市前畑遺跡・静岡県沼津市高尾山古墳をはじめとする多数の遺跡に係る保存等の検討、総会時の全国委員会、大会時の情報交換会、ポスターセッション、文化庁との懇談等の各概要が報告されるとともに、決算内容が報告された。
4.2018年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動について(藤沢委員長報告)
2018年度の活動方針及び予算案が提示・報告された。特に注力すべき活動として、10年総括(2004-14年度アンケート)を『日本考古学』第47号(日本考古学協会70周年特集号)誌上で取りまとめること、文化財保護法改正に対する協会の一連の対応について、これまで埋文委が原案を取りまとめる等の取組を進めていたことから、今後も施行までのプロセスを引き続き注視し、適宜対応していくことが報告された。
5.2016・2017年度埋蔵文化財をとりまく状況の調査結果報告(新アンケートの集約報告)
①北海道・東北地区(藤沢委員長)
風力発電・太陽光発電等の開発に伴う遺跡(景観)保護問題、職員採用の地域偏差、遺物の保管問題、宮城県被災文化財等保全連絡会議の解散、福島県の震災対応問題等が報告された。
②関東甲信越静地区(松本富雄委員)
山梨県内の史跡整備、東京都世田谷区殿山横穴墓群の調査、茨城県ひたちなか市十五郎横穴墓群の史跡指定に係る課題、専門職員の退職後の措置、文化財関連部署の組織名変更等が報告された。
③北陸地区(伊藤雅文委員)
北陸新幹線開発に伴う発掘調査、石川県加賀市分校古墳群の保護活動、石川県の民間調査組織の活用問題、専門職員の状況、調査成果の公開制限、石川考古学研究会の要望活動等が報告された。
④中国地区(藤野次史委員)
岡山県岡山市犬島貝塚等の保存、広島県広島市原爆ドーム関連遺物の取扱い、専門職員配置、遺物の収蔵、大学と自治体との協働のあり方、博物館等の老朽化、鳥取県中部地震に伴う被災資料の保全、近世遺跡の取り扱いに係る課題等が報告された。
⑤四国地区(吉田副委員長)
国史跡指定後の整備状況、専門職員の配置、大規模圃場整備に対応する発掘調査体制問題、ポジ資料の褪色、災害時被災文化財救援体制整備に係る動向等が報告された。
⑥九州・沖縄地区(田尻義了委員)
九州北部豪雨や熊本地震の文化財復旧状況、図書館における報告書の取扱い状況等が報告された。
◯総括(藤沢委員長)
今回初めての試みとなる新アンケートの集約報告について、今後も方法を改善し続けていくこと、集約資料(未報告のものも含む。)についてフィードバックの方策を検討する旨の総括があった。
6.地域連絡会からの報告
①関東甲信越静地区連絡会(田村隆太委員)
・静岡県沼津市高尾山古墳/H案(トンネル+橋脚工法)を採用し保存方向が固まった。
②関西地区連絡会(山川均委員)
・奈良県奈良市登大路瓦窯跡/県立美術館の整備内容に注視していく。
③中国地区連絡会(藤野委員)
・遺物の収蔵庫問題、史跡指定後の整備問題を調査していく。
・山口県岩国市中津居館遺跡/調査と取扱いを協議していく。
・島根県松江市魚見塚遺跡及び朝酌渡/調査と取扱いを協議していく。
・広島県福山市鞆の浦/雁木の調査が実施された。
・広島大主催シンポ「発見!掘って分かった城下町の暮らし」/近世遺跡の調査成果が発信された。
④四国地区連絡会(吉田副委員長)
・高知県高知市浦戸城跡/龍馬記念館旧館内に浦戸城の展示コーナーが設置、浦土城保存会の活動 が活発な状況にある。
・高知県高知市旧陸軍歩兵第44連隊弾薬庫と講堂/県指定文化財指定あるいは国登録文化財登録相 当との答申があった。
⑤九州・沖縄連絡会(田尻委員、山本正昭委員)
・宮崎大会における情報交換会での報告、熊本地震による被災文化財の視察、長崎県長崎市小島養 生所の保存問題等の取組報告。
・沖縄県那覇市首里高校内中城御殿跡/遺構を一部保存し高校の校舎が竣工したが、どの程度遺構 が保存されているのかが不明のままになっている。
・沖縄県那覇市首里城世持橋から続く道路遺構/首里当蔵旧水路が良好に検出され、沖縄考古学会 の保存要望活動により全面埋め戻し保存となった。
(文責:関口慶久)