2019.12
埋文委ニュース 第77号
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会
埋文委・情報交換会**********2019.10.27
埋蔵文化財保護対策委員会では2019年度静岡大会にあわせて、10月27日(日)午後1時30分から岡山大学文・法・経講義棟12番教室において、埋文担当理事、委員、会員あわせて27名の参加を得て情報交換会を開催した。進行役は藤野次史氏(中国地区連絡会幹事)が務めた。藤澤敦委員長の挨拶の後、岡山県の状況についての講演、そして各地の埋蔵文化財保護の状況、その他について報告及び活発な意見交換が行われた。
開催地報告①「岡山県遺跡保護調査団の発足の経緯と活動」澤田秀実氏(くらしき作陽大学)
岡山県遺跡保護調査団の概要、発足経緯、問題点及び将来展望等について同調査団委員長でもある澤田氏から、詳細かつ興味深い説明がなされた。これまでの活動をまとめ、簡潔に示され、同調査団が県内遺跡の保護について、重要な役割を果たしてきただけでなく、西日本域をはじめとする遺跡保護に大きく影響したこともよく理解できる内容であった。
開催地報告②「近年の倉敷市周辺の文化財保護について」福本明氏(岡山商科大学)
倉敷市の文化財保護行政の状況、昨年の西日本豪雨災害の被害状況、倉敷考古館の動向について、長らく倉敷市の文化財保護行政に携わってきた福本氏より報告がなされた。この中で、真備歴史民俗資料館の被災状況とレスキューの様子が示され、改めて自然災害に対する文化財の危機管理の重要性を考えさせられた。また、民間で運営されてきた倉敷考古館の活動経緯と現在の状況についても詳しい報告があり、非常に興味深い内容であった。
各地連絡会からの報告・意見交換
北海道・東北連絡会からは、菊地芳朗委員(福島県)・藤澤敦委員長(宮城県)より、10月の台風19号による浸水被害の状況を中心に報告が行われた。福島県・宮城県にまたがる阿武隈川流域を中心とする被害は甚大であり、遺跡はもちろんのこと個人宅に保管されていた文化財の被災状況について情報提供が行われた。被害が広範囲にわたり、生活に関する復旧を最優先にしなければならず、なかなか文化財のレスキュー等に手が回っていないことも報告された。
四国連絡会からは吉田広委員(愛媛県)より、四国各県の状況報告が行われた。昨年の豪雨災害で被災した香川県丸亀城石垣の復旧状況、徳島大学埋蔵文化財調査整理報告に係る費用確保問題、久松家墓所(東京都港区)改葬に伴う出土副葬品の愛媛県内での保存修理・活用にむけた協議状況などの情報提供がなされた。また、各県とも専門職員の人材確保が困難な状況にあることも併せて報告された。
九州・沖縄連絡会からは、田尻義了委員(福岡県)・稲富裕和委員(長崎県)より、長崎県庁跡地の埋蔵文化財問題を中心に報告が行われた。適切な調査を求める地元の動向、6月の基礎撤去工事立ち会い結果に基づく確認調査の実施状況等について情報提供が行われた。
また、災害対応委員会の杉井健委員(熊本県)より、台風19号の被害状況に係る情報収集について、埋文委の協力を得ることについての依頼があり、出席者全員の賛同を得た。
以上、各地の埋文委員だけでなく一般会員の参加も得られるなど、多数の参加者のなかで、活発で密度の濃い情報及び意見交換が行われ、時間の関係から意見交換を途中で打ち切らざるを得ないほどであり、甚だ有益な情報交換会となった。 (小笠原永隆)