2021.08
埋文委ニュース 第79号
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会
はじめに
埋蔵文化財保護対策委員会は、総会の前日に同じ会場において開催されることが通例となっている。しかし、昨年度来の新型コロナウイルス流行により、総会も変則的な開催となったことから、対面での開催は断念せざるを得ず、5月29日14時からオンライン形式で開催し、39名の参加が得られた。当日は、藤沢敦委員長の挨拶の後、議長として西川修一(神奈川県)と高橋香(神奈川)、書記に寺前直人(東京)を選出した。主な議事内容は以下の通りである。
1.2020年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動報告及び 決算報告について
小笠原永隆事務長より、月例幹事会をメール審議1回、オンライン会議8回の計9回、全国委員会を8月16日付書面にてそれぞれ開催したことが報告された。加えて、長崎県長崎市県庁跡地、福島県いわき市平城跡、東京都港区高輪築堤跡、徳島県徳島市徳島城跡隣接地、高知県安芸市瓜尻遺跡の保存等に関する要望書の提出、鳥取県米子市百塚88号墳、京都府京都市鹿苑寺(金閣寺)庭園、福岡県北九州市城野遺跡のほか、自然災害による文化財被災、改正文化財保護法に伴う自治体の対応状況、公共施設再編に伴う出土品の保管・管理等の問題について検討を行ったことが報告された。また、決算についても報告が行われた。
2.2021年度の埋蔵文化財保護対策委員会活動について
藤沢敦委員長より、2021年度の活動方針及び予算案が提示され、了承された。
3. 地域連絡会からの報告
(1)北海道・東北地区連絡会
菊地芳朗委員(福島県)より、岩手県立博物館の鉄器「切り取り」問題については、委員会により検証が進んでいること、福島県会津若松市攬勝亭(らんしょうてい)の民間開発に対する保存運動については、近世に遡る証拠がみつからなかったこと、現状では国指定にすることは難しいということとなり、現在は宅地として造成が進んでいること、福島県いわき市平城跡は発掘調査が実施され、良好な近世遺構が検出されたことで、当初予定されていたガイダンス施設の建設は取りやめになったこと、福島第一原発の周囲に中間貯蔵施設に関わる工事に伴う埋蔵文化財調査(2遺跡)が実施されていることがそれぞれ報告された。
(2)関東甲信越静地区連絡会
大竹憲昭委員(長野県)より、関東甲信越静地区連絡会についてはコロナの影響もあり、連絡会や見学会が実施できなかったと報告され、今後は地区を北関東や甲信越など細分し、オンラインを介した連絡を密にする方針が示された。また、小笠原事務長より首都圏在住委員を中心に5月21日(金)に東京都港区高輪築堤跡の見学が実施されたこと、その概要ならびに埋蔵文化財保護対策委員会の関わりが報告された。加えて、藤沢委員長からもこれまでのウェブを通じた活動、首相の遺跡見学、日本ICOMOSの声明などが紹介された。
(3)関西地区連絡会
山川均委員(大阪府)より活動概要の紹介後、佐藤亜聖委員(滋賀県)から奈良市菅原遺跡についての説明があった。次に豊田裕章委員(大阪府)より大阪府島本町水無瀬離宮問題について説明があった。
(4)中国地区連絡会
野崎貴博委員(岡山県)より、広島県三原市和霊石地蔵、広島市広島城跡および平和公園内調査、山口県岩国市中津居館遺跡、岡山県倉敷市酒津遺跡、島根県出雲市大社基地遺跡群への取り組みと経過、現状について報告があった。大社基地遺跡群については、会下和宏委員(島根県)より補足の説明がなされた。
(5)四国地区連絡会
吉田広委員(愛媛県)より、徳島市徳島城跡、高知県安芸市瓜尻遺跡への視察や行政との協議等の取り組みの経過、現状について報告があった。
(6)九州・沖縄地区連絡会
田尻義了委員(福岡県)より、豪雨災害の被災状況について協会の災害対策委員会と協力した情報収集、長崎市長崎県庁跡地、福岡県北九州市城野遺跡等への取り組みについて報告があった。佐藤浩司委員(福岡県)から城野遺跡についての補足、北九州市立埋蔵文化財センター移転問題の経過と現状の課題について報告があった。木崎康弘委員(熊本県)からは人吉市と八代市を中心とする豪雨災害のその後のレスキュー活動等の現状について報告があった。
(7)その他の地区
望月精司委員(石川県)より、北陸地区の委員間でオンラインを活用した連絡交換を検討していることが紹介された。
4.その他
東京都高輪築堤跡に関する状況について、広く市民への情報発信の必要性が、複数の出席委員から指摘され、今後検討していくこととした。 (小笠原永隆)