2018.12
埋文委ニュース 第75号
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会
埋文委・情報交換会**********2018.10.21
埋蔵文化財保護対策委員会では2018年度静岡大会にあわせて、10月21日(日)午後1時30分から静岡大学教育学部2階B206講義室において、埋文担当理事、委員ならびに会員、計25名の参加を得て情報交換会を開催した。進行役は小笠原永隆事務長が務めた。藤沢敦委員長の挨拶の後、静岡県の状況についての講演、そして各地の埋蔵文化財保護の状況、その他について報告及び活発な意見交換が行われた。
講演「静岡県における史跡の保存と整備」渡井英誉氏(富士宮市教育委員会)
静岡県内の各史跡の保存及び整備の取り組みについて、概要、経緯、問題点及び将来展望などについて報告がなされた。具体的には、伊場遺跡(県指定の解除とその後の取り組み)、登呂遺跡(発見~調査,再整備と保存・活用)、高尾山古墳(保存整備と現状,整備案)、富士山(世界文化遺産の経緯,構成要素の整備)について、詳細かつ興味深い説明がなされた。
報告・提案
杉井健会員(熊本県)より、災害対応担当理事としての立場から、次回総会においてセッション「災害と考古学」を災害対応委員会・埋蔵文化財保護対策委員会・熊本地震対策特別委員会の共同で開催することについて提案が行われた。これに対して、埋文委を中心に各地の状況について情報収集を進め、報告内容など具体的な内容を幹事会で継続して審議することとした。
中国・四国連絡会からは、野崎貴博委員(岡山県)より、岡山県内の豪雨被害について4か所(津山城,造山古墳,尾上車山古墳,両宮山古墳)の状況報告が行われた。また、『考古学研究』最新号掲載の真備町の状況が紹介され、関連案件として高梁川・小田川の合流地点変更の河川改良事業が進むにあたり、埋蔵文化財(南山城跡,酒津遺跡)の保護が懸念されることが指摘された。会場からは、中国地方全体の被災状況についての情報集約、しいては前述のセッションでの報告を期待する意見が出された。また、吉田広副委員長(愛媛県)より、愛媛県内の7月豪雨被害について、宇和島,大洲のほか、今治島嶼部にも被害が及んでいることが報告された。事例として、大洲市遺物整理事務所,松山市難波奥の谷古墳,今治市能島城跡の状況が紹介された。また、えひめ文化財等防災ネットワーク構想の紹介、他に関連案件として、香川県丸亀城,徳島県加茂宮ノ前遺跡の被害について情報提供が行われた。
九州・沖縄連絡会からは、佐藤浩司委員(福岡県)から佐賀県三重津海軍所跡の世界遺産登録に向けた取り組みと視察結果の報告、田尻義了委員(福岡県)から佐賀県基肄城跡の豪雨被害の報告がそれぞれ行われた。基肄城跡については、谷筋に多数の大規模な土砂崩れが認められ、被害は佐賀県基山町から福岡県筑紫野市に跨がり、佐賀県側の基山町では2名の専門職員が対応にあたっているものの、追いついていないのが現状であり、県・国との連携にも不安があるとのことであった。史跡範囲内の大半が国有林で、その管轄は林野庁であるため、災害特別措置法との関連及び文化庁の対応について、情報を収集していくこととした。
他には、北海道胆振東部地震に対する状況の確認のほか、藤沢委員長より文化庁の改組についての情報提供、静岡県考古学会の植松章八会長より静岡県沼津市高尾山古墳に関する市民の反応及び将来展望が紹介された。
以上、各地の埋文委員だけでなく一般会員の参加も得られ、例年になく多数の参加者のなかで、活発で密度の濃い情報及び意見交換が行うことができ、甚だ有益な情報交換会となった。
(小笠原永隆)