鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の保存に関する要望書
埋文委 第10号
2019年1月24日
文化庁長官 宮 田 亮 平 様
千葉県知事 鈴 木 栄 治 様
千葉県教育長 澤 川 和 宏 様
鴨川市長 亀 田 郁 夫 様
鴨川市教育長 月 岡 正 美 様
南房総市長 石 井 裕 様
南房総市教育長 三 幣 貞 夫 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢 敦
鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の保存に関する要望書について
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上極めて重要な内容をもつもので
ありますので、貴殿におかれましては、適切な保存と活用に関する対策が速やかに講じら
れることを要望いたします。
なお、まことに恐縮ですが、当件の具体的な措置、対策については2019年2月25日(月)
までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたしま
す。
記
一、別添書類 一通
以上
埋文委 第10号
2019年1月24日
文化庁長官 宮 田 亮 平 様
千葉県知事 鈴 木 栄 治 様
千葉県教育長 澤 川 和 宏 様
鴨川市長 亀 田 郁 夫 様
鴨川市教育長 月 岡 正 美 様
南房総市長 石 井 裕 様
南房総市教育長 三 幣 貞 夫 様
一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢 敦
鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の保存に関する要望書
日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、鴨川市及び南房総市に所在する嶺岡牧の
遺構に対する適切な保護を要望します。
嶺岡牧は、延喜式に記された銖師牧に遡るといわれ、室町時代の丸咒師谷氏の牧、正木
氏・里見氏の牧、江戸幕府直轄牧、地域畜産株式会社である嶺岡牧社・嶺岡畜産株式会社
の牧と、近代まで続いた希有な牧として知られています。とりわけ嶺岡牧は、八代将軍徳
川吉宗が近代酪農を始めた「日本酪農発祥之地」(千葉県指定史跡)、日本における地域
畜産会社の誕生地、日本の主要製乳企業の誕生地と複合的日本近代化遺産として極めて重
要な歴史遺産です。しかも、保存状態が良く、江戸幕府直轄牧で唯一全貌が残されている
ため、2009年からの嶺岡牧調査で、近世から牛馬の飼養区画を細かく区切り管理型放牧が
行われていたことや、30間おきに木戸を設け日常的に住民が牧に出入りしていたこと、牧
内のコモンズ利用を通し江戸幕府と野付村の住民とが互酬性により牧経営が維持されてい
たことなど、これまで確認できなかった江戸幕府直轄牧経営の実態が明らかとなりました。
この、歴史的価値が極めて高い嶺岡牧が、イノシシにより野馬土手が一日で60mほど石
積みをすべて堀に落とし、土手を崩して1/3の高さにする、石切丁場の木端石塚を崩すタ
ヌキ、アナグマ等により仮囲遺構の土壁に穴が掘られるなど、野生動物による遺構破壊が
著しく広がっています。これにより、国指定史跡に匹敵する遺跡としての価値が減じてい
ます。
以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記の通り要望いたし
ます。
記
1 野生動物により嶺岡牧の遺構被害の実態を確認し、旧状に復すること。
2 露出している嶺岡牧遺構の3D測量など記録化を行い、野生動物による被害を受けた
場合でも復原ができるようにすること。
3 嶺岡牧の遺構に対する野生動物の被害が発生しないよう、荒れた山林を開地化し日常
的に人が管理を行うなどの対策を講じること。
以上