一般社団法人日本考古学協会第89回(2023年度)総会報告
2023年5月27日、28日の日程で、東海大学湘南キャンパスにおいて第89回総会が開催された。東海大学湘南キャンパスでの開催は2008年度第74回総会以来15年ぶりとなる。富士山と大山、二つの霊山に迎えられキャンパスに向かった。2019年1月に発生した新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年度第86回総会は誌上開催、2020年度金沢大会は中止を余儀なくされた。2021年度第87回総会からは参加者を制限しながらのオンライン同時開催、2022年度福岡大会では対面・オンライン同時開催となり、本総会もようやく参加者制限のない、対面・オンライン同時開催となった。総会は、東海大学北條芳隆先生を総会実行委員長として東海大学関係者のみなさま、日本考古学協会企画担当理事を中心に運営された。なお、26日は同会場で理事会及び埋蔵文化財保護対策委員会が開催された。
【第1日:5月27日(土) 総会・公開講演会】
総会、公開講演会ともに2号館の大ホールを会場とした。2号館は、日本武道館等を設計したモダン建築の巨匠とよばれる山田守による設計の建物で、扇形に広がるホールは舞台に意識が集中でき、素晴らしいホールである。
9時に受付開始、10時に進行の谷口榮総務担当理事により開会が宣言された。総会の対面参加44名、委任状1,451名、合計1,495名であり、総会成立の定数を満たしていることが報告された。
辻秀人会長の挨拶に続き、北條総会実行委員長による挨拶があった。総会審議に先立ちこの1年間に他界された26名の会員の方々に対し黙祷を捧げ、弔意を示した。総会審議では定款第16条に則り辻会長が議長となり、副議長には田尾誠敏会員、宮原俊一会員、書記には丸山真史会員、東真江会員が選出された。議事録署名人には定款第21条の規定により総会出席者代表2名矢島國雄会員、長瀬衛会員が指名された。
第1号議案は新入会員の承認に関する件について、日沖剛史入会資格審査委員長と谷畑美帆担当理事から説明があり共に承認された。今年度の新入会員は33名、賛助会員のフレンドシップ会員7名である。その後、総会に出席している新入会員7名が登壇、自己紹介し、代表として村井大海会員が挨拶した。
第2号議案の2022年度事業報告・収支決算承認に関する件では、最初に日本考古学協会賞に関する事業について澤田秀実担当理事から説明があった。協会賞大賞は門田誠一氏の『魏志倭人伝と東アジア考古学』(吉川弘文館 2021年)、奨励賞は加藤一郎会員の『倭王権の考古学―古墳出土品にみる社会変化―』(早稲田大学出版部 2021年)、優秀論文賞は阿部 郎会員・栗島義明氏・米田穣会員の「縄文土器の作り分けと使い分け―土器付着炭化物の安定同位体分析からみた後晩期土器器種組成の意味―」(日本考古学協会『日本考古学』第53号 2021年)、光本順会員の「Bodily Representation and Cross-dressing in the Yayoi and Kofun Periods」(『Japanese Journal of Archaeology』第9巻第2号 2022年)が提案された。
2022年度事業報告については岩本崇総務担当理事が説明し、各委員会活動は、下記のとおり順次各担当理事が説明した。陵墓報告(岡林孝作)、研究環境検討委員会報告(亀田直美)、広報委員会報告(野口淳)、国際交流委員会報告
(溝口孝司)、社会科・歴史教科書等検討委員会報告(水本和美)、埋蔵文化財保護対策委員会報告(藤野次史)、災害対応委員会報告(田尻義了)、将来構想検討小委員会報告(藤沢敦)、アーカイブス小委員会報告(足立佳代)、理事選挙制度検討小委員会報告(小菅将夫)。続いて、2022年度収支決算について財務担当の肥後弘幸理事より説明があり、萩野谷悟監事から、都築恵美子監事との監査の結果、適正かつ正確であることが報告された。以上、第2号議案については、原案どおり承認された。
第3号議案は、常務理事専任に関する件で、佐藤宏之副会長が説明した。髙麗正前常務理事の退任に伴い、新たに山﨑和巳会員の選任が提案され、承認された。
第4号議案の名誉会員の承認に関する件は、大竹幸恵副会長より、木下正史会員を選任するとの説明があった。木下会員は、本会在籍54年を数え、1996年から2006年に至るまで委員・理事・監査役を歴任し、日本考古学協会が法人化された翌年の2004年からは、2期4年に渡り副会長として今日の協会の組織基盤を構築し学会活動の発展に寄与された。提案については、拍手をもって原案どおり承認された。
続いて報告事項が説明された。第1号報告として2023年度事業計画に関する件について総務担当藤沢敦理事より、 2023年度収支予算について肥後弘幸担当理事から報告された。第2号報告の永年在籍会員表彰の件については、佐藤宏之副会長から報告された。今年度の永年在籍表彰会員は24名である。
最後に第3号報告として追加報告等、会場への質問、意見が確認されたが、特に質問等はなく、拍手をもって了承された。以上で第89回総会議長団は解散・退席し、総会が無事終了した。
壇上では引き続き名誉会員、永年在籍者会員及び協会賞受賞者の表彰式が開催された。名誉会員の木下正史会員、永年在籍表彰会員のみなさまは総会欠席となったため、木下正史会員のメッセージを名誉会員選考委員である佐藤宏之副会長により、永年在籍表彰会員を代表して高倉洋彰会員のメッセージを司会より代読させて頂いたが、協会図書問題や一般社団法人化等を乗り越え、協会の運営、学会活動の発展に寄与されてこられた方々から後に続くものたちへの激励として拝聴した。協会賞の表彰は、大賞の門田誠一氏、優秀論文賞の阿部芳郎会員、光本順会員が出席され、辻秀人会長より表彰状が授与された。それぞれの方より受賞の挨拶が述べられ、会場からあたたかい拍手が贈られた。
最後に大竹幸恵副会長より閉会のあいさつがあり、総会終了となった。
午後1時からは別室にて臨時理事会が開催され、常務理事の選任が承認された。
休憩を挟んで2時から記念講演会となった。岩本崇総務担当理事の司会により進行され、辻秀人会長のあいさつに続き、東海大学ヒューマンソサエティカレッジ長の三佐川亮宏氏による歓迎の挨拶を頂いた。
講演は、東海大学北條芳隆教授による「古墳時代成立期の実像を求め続けて」、続いて、松本建速教授による「シン・エミシ論―国家による物語を越えて―」であり、講演に先立って実行委員の有村誠氏により、講演者の紹介がなされた。北條芳隆教授の講演は、長年にわたって追求してこられたテーマについて、現在の到達点を示された。松本建速教授の講演は、従来のエミシ観を広い視野で覆すものであった。講演会の参加者は非会員を含めて会場186名、オンライン260名、合計446名であった。
講演会の閉会にあたって、次回開催地である宮城大会(会場:東北学院大学)の佐川正敏実行委員長、第90回総会(会場:千葉大学)阿部昭典実行委員会事務局長より挨拶があり、次回大会、総会への期待が高まった。以上をもって 1日目のスケジュールは終了したが、懇親会はコロナ禍に配慮し、中止となった。
【第2日:5月28日(日) 研究発表会】
研究発表会では、口頭発表、セッション、ポスターセッション、高校生ポスターセッションが実施された。14号館の教室で開催され、口頭発表は第1会場(103教室)と第2会場(104教室)で、№1から№16までが発表された。セッションは、第3会場(202教室)から第7会場(205教室)を使い、セッション1から9までが発表された。口頭発表、セッションは、いずれも対面とオンライン同時配信のハイブリッド方式で、開会はじめに一部画面共有されない場面があったが、大きなトラブルもなく実施できた。参加者は会場330名、オンラインは口頭発表№1~8:259名、№9~ 16:174名、セッションは1・2:287名、3・4:午前150名・午後59名、5・6:163名、7・8:188名、9:42名であった。
ポスターセッション22件と9校10件による高校生ポスターセッションは、ともに14号館地階ホールを会場とし、あわせて協会公式サイトに5月28日9時30分から6月9日17時までそのデータが公開された。高校生ポスターセッションの審査は会長・副会長があたり、会場で表彰式が執り行われ、会長により講評があった。優秀賞は、岐阜県立関高等学校地域研究部・自然科学部の「長良川支流域におけるマガモ猟の調査―民俗調査と考古資料の検討から考える―」、愛媛県立今治東中等教育学校 生徒有志観光おもてなしEASTレンジャー「今治に国府が置かれた訳は古墳が教えてくれた!」、福岡県立糸島高等学校 歴史部の「革袋形土器の性格に関する一考察」の3件で、いずれも地域の歴史を調査・研究する力作であった。
以上、2日間にわたる総会が滞りなく開催できたのは、東海大学の全面的なご協力と総会実行委員長の北條芳隆先生率いる大学関係者、大学院、学部生、同窓生の方々のご尽力の賜物であり、厚く感謝申し上げたい。
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことでこれまでの制約が緩和され、非公式な懇親会や情報交換会が開かれたが、会場での図書交換会の開催は今回も見合わせられた。しかしながら、今回、ポスターセッション会場ではあちらこちらに話の輪ができて、交流の場としても賑わっていた。日本考古学協会が会員、および考古学を研究するもののプラットフォームとなっていることを改めて認識させられた。
また、コロナ禍によりやむを得ず導入されたオンライン配信ではあったが、遠方にあって、あるいは職務等によりこれまで現地参加ができなかった会員にとっては歓迎すべきこととなった。オンライン配信は、今後も必要なシステムであろう。コロナ禍がオンライン化を推進した形となったが、図書交換会の代替として始まった考古学スクエアも含め、今後さらなるデジタル化は止められない。
日本考古学協会もシン・日本考古学協会としてのあり方が問われるであろう。
(総務担当理事 足立佳代)
一般社団法人日本考古学協会第89回(2023年度)総会議事(抄録)
日 時 2023年5月27日(土)午前10時00分~12時00分
会 場 東海大学湘南キャンパス2号館大ホール
議長団 議長:辻秀人会長、副議長:田尾誠敏会員・宮原俊一会員 司会:谷口榮理事
本日の司会は本協会の総務担当理事の谷口榮が務める。国のコロナ禍緩和政策により、久々の対面方式による総会となった事を告げる。
続いて、2023年5月27日現在の会員数は3,783名、うち本日の総会出席者数は、午前10時時点で44名であり、委任状預り分1,451名を加えると合計で1,495名となる。総会議事を進めるにあたり、この1,495名は当協会の定款第18条の総会の決議に定める総正会員数の1/8以上(人数473人)を上回っており本日の総会議事は成立する旨の報告があった。また、本総会のオンライン視聴者は事前に委任状を預かっており、視聴のみで発言権がない旨を確認し、総会を開始する。
開会にあたり、一般社団法人日本考古学協会を代表して辻秀人会長から次の挨拶がある。本日は久々に、対面方式で総会を開催できたことは大変喜ばしい限りである。そして何よりも、素晴らしい会場をご提供いただいた東海大学、東海大学湘南キャンパスヒューマンソサエティカレッジ長三佐川先生はじめとして、北條先生を委員長とする実行委員会の皆様、学生諸君、教職員の皆様に心から感謝を申し上げたい意が先ず伝えられた。
さらに、本総会でこれまでの1年間の協会の事業報告・収支決算、新入会員の審議などや、2023年度の予算等々の報告をするにあたり、2020年に会長に就任した時がまさにコロナの蔓延が広がった時期で、その間日本考古学協会は「何とかコロナの中でも研究活動、学会活動を継続したい」ということで邁進してきて、2022年度になってようやく少しずつ平常の活動ができるようになってきた。本日の総会は、対面形式で2022年度の活動等について報告をし、ご審議、ご意見を頂戴したいという旨を述べた。
引き続き、第89回総会の実行委員会を代表して、東海大学教授、北條芳隆実行委員長からの挨拶があった。「今、お集まりいただいておりますこの会場ですが、山田守という武道館を設計した人物が40年前に設計し、50年経てば文化財になるような建物です。それと、この場を借りてお詫びをしなければならないことがあります。昨年、早稲田の会場で私は『今年こそ図書交換会を実現させたい』と言ってしまったのですが、なんともなりませんでした。申し訳ございません。誠に残念ながら、本来、図書交換会を予定していた会場は、明日はポスターセッションということでお許しいただきたいと思います。そうは申しましても、先程、辻会長からもありました通り、久しぶりの対面ということであります。2日間、この大会が成功のうちに進められるよう、私たち実行委員会が全力でバックアップさせていただきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します」、と結んだ。
次に審議に先立ち、司会からこの一年間に他界された26名の会員の氏名を読み上げ、参加者全員起立の上、黙祷を捧げた。
議 事
協会定款第33条の規定により総会議長は辻会長が議長となり、副議長・書記の選出方法については、定款では特に定めがなく、会場からの立候補もなかったことを受けて、副議長には神奈川県の田尾誠敏会員、同じく宮原俊一会員、書記には神奈川県の丸山真史会員、同じく東真江会員があたる。また、本日の総会議事録の署名には、協会定款第21条の規定により神奈川県の矢島國雄会員と東京都の長瀬衛会員に議長から指名があり、先の議長団と同様、会場からの了承を得る。議長から議事進行の概略、総会議案書の訂正等の説明がある。
なお、以下2022年度における各事業の執行状況説明等において、実施形態の違いや、中止や延期となった要因が新型コロナウイルス対策による事項に関しては、以下の各委員会等の記述において「コロナ禍」と略記する。
[審議事項]
第1号議案 新入会員の承認に関する件
日本考古学協会の会員には、正会員と賛助会員の2種類があり、先ず正会員については、入会資格審査委員会の日沖剛史委員長から説明がある。入会申請33名であり、2022年12月10日開催の第1回審査委員会で申し込み総数33名のうち資格基準を満たす方30名、保留3名とされた。その後、追加資料を基とした翌年の1月14日の第2回審査委員会では1名が辞退、また2名から追加資料が届き入会資格基準を満たすと判断された。さらに、学生会員として入会審査を進めていた方が1名おり、本人から正会員としての入会審査切り替え要望があった。本人から提出していただいた資料は、正会員としての基準に達していたので、正会員の資格基準を満たすと判断した。よって、2023年度の正会員入会資格審査では申し込み総数34名のうち、入会資格基準を満たす方33名、辞退者1名となった。この結果は2023年1月28日に開催された定例理事会で報告され、了承が得られた。さらに3月上旬に正会員に入会適格者33名の一覧表を送付し、意見を求めた結果、1名について異議申し立てのご意見があった。この1名については、2023年4月3日から同月7日の間で再審査を行い、当該者は正当な手順、資料の提示が行われていると再確認したため、資格基準を有すると判断した。以上33名の新入会員内定者について、5月13日の理事会で報告がなされ承認された。
賛助会員については谷畑美帆理事の説明による。同じく12月10日及び2023年1月14日に開催された資格審査委員会において、賛助会員申し込みのフレンドシップ会員7名、学生会員1名について審査した。このうち、学生会員1名については、日沖委員長からの説明のように、正会員としての入会審査に切り替えた。その結果、フレンドシップ会員7名、学生会員0名ということで2023年1月28日の定例理事会で審議、承認された。なお、今回は法人会員の応募はなかった。
議長から第1号議案について、会場に質問を求めた。質問はなく、拍手をもって原案どおり承認された。そこで会場参加の新入会員全員が登壇し、村川逸郎、武内樹治、矢部亮司、式田洸、前田仁暉、北野薫、村井大海の7名が都道府県とともに自己紹介した。長野県の村井大海氏から新入会員33名を代表しての挨拶があった。
第2号議案 2022年度事業報告・収支決算承認に関する件
配布資料記載の順に、最初に事業報告、次に収支決算についての順に説明と審議を行った。事業内容及び各委員会に関わる業務について、担当理事から以下の説明があった。
〈1〉2022年度事業報告
1. 日本考古学協会賞の報告
澤田秀実理事からの説明。2022年度、第13回日本考古学協会賞への応募件数は3件であった。応募審査は12月から開始し、本年3月7日にオンラインによる選考委員会で審査された。2022年度の協会賞選考委員会は、前年度から4名の委員の交代があり、6名で構成した。また、以下は3月25日開催の理事会において承認された。
大賞には門田誠一氏の『魏志倭人伝と東アジア考古学』が、奨励賞については 加藤一郎会員の『倭王権の考古学』の2篇が選ばれた。さらに協会機関誌『日本考古学』に掲載された論文で、機関志編集委員会からの推薦による優秀論文賞には、第53号に掲載された阿部 郎会員・栗島義明氏・米田穣会員3名の共著による「縄文土器の作り分けと使い分け」が選ばれた。また、英文機関誌『Japanese Journal of Archaeology』に投稿された論文でJJA編集委員会からの推薦による優秀論文賞は、第9巻第2号に掲載された光本順会員「Bodily Representation and Cross-dressing in the Yayoi and Kofun Periods」であった。各受賞作の選考理由と委員長講評については、会報及び協会ホームページを参照願いたい。
なお、2022年度の特徴を委員長講評では、応募件数が昨年度に比して激減したが、その要因は不明。2023年度もこの状態が続くなら要因を分析し、対応の必要性が委員会で議されたと説明(講評は『会報No.209』参照)。
2. 総会・大会・公開講座等 3.理事会等 4.年報・会報等 5.機関誌等
岩本崇理事から「総会議案書」に沿って、上記事項の特に例年とは異なる点を中心に報告・説明があった。2022年度事業は引き続き少なからずコロナ禍の影響を受けた。総会は早稲田大学を会場として、対面とオンラインの併用によって開催した。研究発表については、オンライン配信のみの形で行われた。大会については、九州大学伊都キャンパスでの福岡大会を対面とオンラインの併用により開催した。
理事会は、対面とオンラインの併用を基本として年間8回開催した。会議は対面とオンラインで併用し、日本考古学協会の活動実績は例年通り概ね確保できた。
6. 陵墓報告
岡林孝作理事からの説明。陵墓関係16学協会の幹事学会として、当協会が2022年度も陵墓公開運動全体に関わる連絡調整役を担当した。16学協会には、運動の立案と実務にあたる7協会の運営委員会が設けられており、これまで通り当協会が幹事を務めた。2022年度は、コロナ禍の一昨年度とは異なりほぼ例年通りの予定で活動が行えた。
まず、陵墓関係16学協会全体会議及び、宮内庁との陵墓懇談を昨年7月14日に開催した。主要議題は、(1)令和4年度陵墓保全整備工事に関して、(2)畝傍陵墓監区事務所建替に係る事前調査について、(3)立入り観察候補についてであった。2022年度は、(3)立入り観察について、未実施のまま積み残されていた誉田御廟山(応神陵)、大山(仁徳陵)、百舌鳥陵山(履中陵)の3古墳の取り扱い、問題解決を主要課題と位置付づけた。5月以来計4回の運営委員会開催、さらに8月に当協会理事が代表して宮内庁と交渉にあたり、12月の第2回の陵墓関係16学協会全体会議を経て、本年3月に誉田御廟山(応神陵)の立入り観察実施に至った。立入り人数を半分の8名とし、2カ年に分けて実施する形であるが、一歩前進と捉えられる。この他、12月に畝傍陵墓監区事務所建替に係る事前調査の限定公開、12月と本年3月9日に奈良県市庭古墳(平城陵)の立会見学、2月15日に京都府高倉天皇陵、3月14日に高知県越知陵墓参考地、3月17日に鳥取県宇倍野陵墓参考地の立会見学を実施した。例年になく立会見学が多く、場所も広範囲に亘ることから、立会見学に際して、当協会の理事2名も参加した。
さらに、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録を契機とした陵墓古墳の登録名称問題をめぐって、12名からなる陵墓学術名称ワーキンググループを新規に立ち上げ、本年4月に第1回のミーティングを開催した。
7. 研究環境検討委員会報告
亀田直美理事からの報告。本委員会は考古学に関わる研究環境を改善し、考古学の発展と広い理解の促進を目的として、行政、大学、博物館、調査機関、民間調査機関等、様々な組織に属する委員で構成された委員会である。2020年度から主にアイヌ民族における研究倫理問題に関する委員会の実務的な窓口として、委員会内に「研究倫理部会」を設置した。ただし、当部会は実務に特化し、情報や問題意識の共有はするが、通常の活動とは切り離されている。
近年、文化財関連業務の後継者育成と発掘調査技術の継承、さらに報告書の質の堅持を主な課題として取り扱い、総会でのセッション等も開催してきた。2022年度は本取組みの成果をまとめ、「研究環境検討委員会の問題提起2022―文化財行政における後継者育成に向けて―」と題したポスターを総会で、さらにこれを再構成した福岡大会版を大会で公表し、アンケート等で意見を求めた。
また、本協会のアウトリーチ活動である「カフェde考古学」の1回分を本委員会が担当し、「考古学の仕事場から」と題し、大学、研究所、行政、博物館、発掘・整理作業等、様々な場所で考古学に従事している方々にご登壇を依頼し、考古学に関連する仕事の実態と魅力を語る、オンライントークセッションを行った。本カフェには高校生、大学生も多く参加し、事前アンケートにも積極的な質問が集った。これらは、後継者育成の一つの実践例となり、今後も継続実施していくとされた。あわせて、継続活動として博物館法の改正の学習等の意見交換をするとともに、考古学や埋蔵文化財行政をめぐる環境変化について検討する定例委員会を設け、オンラインと対面のハイブリッドで6回開催した。今後も提起した課題の解決に向け、積極的に議論すると報告された。
8. 広報委員会報告
野口淳理事からの報告。本委員会は、会員及び社会に対して、本協会の活動を広く発信するために設置された常置委員会である。主な活動は会報の発行、公式サイトの企画・運営、カフェde考古学の企画開催・協力である。
2022年度はオンライン10回、対面1回による委員会を開催し、会報はNo.206~208の3号を発行。主な取組事業は、公式サイトのリニューアルに向けた検討。現公式サイトは2016年度に更新されたもので、デザイン構成の見直し要請、システムのセキュリティ対応の問題が指摘されていた。さらに総・大会のオンラインハイブリッド開催への対応をはじめ、Webサイトが担う役割が大きく変わりつつある状況下で、部分的改修ではなく、全面的更新に取り組むこととした。検討に際しては、実務に詳しい会員による公式サイトリニューアル検討ワーキンググループを組織した。また、カフェde考古学は昨年度の企画を引き継ぎ、2022年2月から2023年1月まで2ヶ月に1回のペースで各委員会により、テーマを設定し開催した。当委員会としては、主にポスター・チラシの作成等により開催周知を図っている。その他の活動として、昨年度に引き続き総会・大会会場における図書交換会の開催が困難となったため、公式サイト上で考古学スクエアを実施し、図書交換会の代替とし、次年度も実施予定である。2023年度は、引き続き会報の発行、カフェde考古学の企画・開催を行うとともに、公式サイトリニューアルの本格実施に取り組むべく、内容と実施計画について詳細の検討を進める予定と報告された。
9. 国際交流委員会報告
溝口孝司理事からの報告。文化庁『発掘された日本列島2022』展の内容に基づき、「Noteworthy Archaeological Sites, Issue 2022」「韓国語でみる日本考古学」「中国語でみる日本考古学」の作成と協会公式サイトへのアップロードを行い、英語・中国語・韓国語にて日本考古学の最新成果の紹介を行った。
10. 社会科・歴史教科書等検討委員会報告
水本和美理事からの報告。本委員会では「考古学の学問的特性や研究成果が学校教育に適切かつ有効に活用されるよう図るとともに必要な働きかけを行うこと」を目的として活動を行っている。具体的には、子ども達が学ぶ歴史教科書や歴史教育の指針となる学習指導要領の分析・検討を継続的に行い、その現状と課題を本協会の総・大会における研究発表の場や各種の誌上発表を通じて広く公開・発信し、情報の共有を図っている。
2022年度は、総・大会において小学校の教科書が作成されるまでの編集過程や授業の実践例、そして、中学校の現行教科書の内容を紹介するポスターセッションを行い、『教科書通信』第18号・第19号・第20号を発刊した。第19号では、現行の小・中学校の学習指導要領と教科書について総括的な考察をまとめている。なお、高校の新設科目である「歴史総合」、「日本史探求」の取り扱いについては今後の課題となっている。委員会発足の契機となった小学校の教科書への旧石器・縄文時代に関する記述の掲載問題については、文部科学省や中央教育審議会に対し、学習指導要領における位置付けを明確にする要望や声明文等を提出し、併せて両時代を学ぶ意義とその魅力を伝える対外的なシンポジウム等の開催を行ってきた。縄文時代の記載は、2012年から全ての教科書に復活したが、部分的取り扱いであった旧石器時代については、全ての教科書からその記載が消えているのが現状であり、この大きな課題については、今後、日本旧石器学会や人類学会等、他学会とともに関連機関への陳情及び懇談を行う方向で検討を重ねている。
また、対外的にはカフェde考古学を通じ、「ここまでわかった旧石器時代」として研究の成果や魅力を伝える講座を開催した。さらに、新たな取り組みとして、学校現場における探究学習・GIGAスクール構想の導入を射程とし、リニューアル計画が検討されている日本考古学協会の公式サイトを窓口に、旧石器時代から近現代に至る各時代の考古資料のWebコンテンツを体系的に案内する手法を検討している。授業の実践に繋がる本Webコンテンツの構築は、今後、課題改善において大きな役割を担うものと考えると説明された。
11. 埋蔵文化財保護対策委員会報告
藤野次史理事からの報告。以下の8項目の活動を報告。一つ目として、定例幹事会を毎月第2土曜日を基本に、毎月1回、計11回行った。二つ目、総会時の全国委員会開催。三つ目、福岡大会時の情報交換会の実施。四つ目に以下の要望書4件の提出。1件目、6月に「大社基地遺跡群主滑走路跡」南側市道予定地保存に関する要望、2件目、同じく6月に越谷遺跡(御所池地区)の調査に関する要望書、3件目、7月に広島市の文化財保護体制の整備・充実に関する要望書、4件目、今年1月に史跡広島城跡一帯における文化財の総合的な保存・活用に関する要望書4件である。 五つ目として、文化財保護法改正に関連し、文化庁が取り纏めた「これからの埋蔵文化財保護の在り方について」の第一次報告書(案)に対してパブリックコメントを提出した。六つ目、毎年実施している文化庁との懇談は、今年3月2日に文化庁において対面、オンラインで実施した。主な内容は「近現代の遺跡の取り扱いについて」、「文化財保護法改正後の埋蔵文化財の保存法の状況について」、「埋蔵文化財の保存問題について」の3点であった。七つ目として、島根県教育庁文化財課及び出雲市市民文化部文化財課と大社基地の遺跡群の取り扱いについて懇談した。八つ目に、総会時の研究発表において、「近代遺跡の調査保存の活用」をテーマとして企画、実施をした。さらに、カフェde考古学第1回目を担当し、「近現代遺跡をどう守り伝えるのか」をテーマにオンライン開催した。
12. 災害対応委員会報告
田尻義了理事からの報告。2022年度はオンラインで会議1回開催。それ以外は委員会委員において、メールを中心に災害による文化財の被害状況の情報共有を図った。昨年度は台風15号などの被害があったが、例年より比較的災害の少なかった年であり、本委員会ができる限り活躍のない年が続くことを祈念していると報告。また、国が主体として推進している「文化遺産防災ネットワーク推進会議」に3回出席し、本協会として埋蔵文化財に対する復旧状況の課題や防災への取り組み等を報告した。さらに、他の遺産分野に関する災害対応状況について情報交換を行い、3月開催の文化財防災センターシンポジウム「無形文化遺産と防災―被災の経験から考える―」に参加し情報共有を図った。
13. 将来構想検討小委員会報告
藤沢敦理事からの報告。本協会では、社会や経済の変化を見据えながら、協会の将来的な課題について協議するために、理事会とは別に、当小委員会を設けている。委員会構成は、正・副会長と総務担当理事及び常務理事という総務会と同メンバーである。不定期の開催で、コロナ禍の総会・大会でのオンラインを利用した開催方法等、当面の課題については 2021年度の当小委員会で検討され、その検討結果を踏まえて、2022年度の事業を進めた。
また、協会公式サイトの見直しの検討を2022年度に行ったことから、その検討状況を見た上で、当委員会での協議を行うこととした。そのため2022年度は、当小委員会は開催をしていない。公式サイトの見直しの方向性が定まってきたため、2023年度は将来的な課題について協議していく予定である。
14. アーカイブス小委員会報告
足立佳代理事からの報告。当小委員会は本協会の歴史的な歩みについて、証拠立てる文書等の記録を収集・整理し、その社会的責任をどのように果たしてきたのかを明らかにするとともに、将来的な検証・評価に備えるなど、本協会のアーカイブ資料の構築を目的に、2019年9月に設置された。現在、矢島國雄委員長ほか計4名で構成。
2022年度は資料のデータ化、分類・保存袋入れと、資料確認を実施。資料のデータ化は、『日本考古学年報』1~40、彙報・会報1~199、1950年度第5回総会~2000年度第86回総会における研究発表要旨、機関誌『日本考古学』第1号~第54号についてデジタルデータ化を外部委託により実施し、終了した。
協会の根本情報であり、劣化が進行している「会員調査票」については、協会事務所において委員の作業により、スキャンによるデジタルデータ化と中性紙封筒・箱に再収納する作業を実施し、会員調査票419件、会員名簿は設立時1948年~1956年の8件が終了した。
1960年度~2015年度版の会員名簿については2023年度に引き続き作業を進める予定。分類・保存袋入れは、高松塚・キトラ古墳問題検討小委員会についての資料が終了。弥生式土器文化研究特別委員会、西北九州総合調査特別委員会については、分類・保存袋入れおよびデータ化が終了した。
協会図書問題については、協会事務所で委員が作業し、資料確認が終了したが、分類等は未着手。この他、協会の文書ファイル及び、デジタルデータの保存活用の為のシステム構築について検討していきたいと説明された。
15. 理事選挙制度検討小委員会報告
小菅将夫理事による報告。当小委員会は、本協会理事選挙制度に関わる法人企画の確保と選挙事務の効率化について検討し、提言を行うことを目的として2020年に設置された。主な活動として、2022年理事選挙に向けて、選挙制度に関わる「日本考古学協会規則」を改定し、諸規定間の整合性及び投開票事務の簡素化、効率化を図った。
また、コロナ禍の影響により、前々回の理事選挙の開票状況では非常に混乱をきたしたが、その状況に鑑み、「危機管理マニュアル」を整備するなど、当初の活動目的を達成することができた。
なお、本小委員会の活動詳細については、総会資料及び『会報No.204』に掲載したが、2年間の活動を総括し、投票権の格差是正や選挙公募の欠員に関する規定等について、今後の審議課題として理事会に提言した。
〈2〉2022年度収支決算
肥後弘幸理事による2022年度の会計収支決算報告。貸借対照表及び正味財産増減計算書により、要点のみ説明する。貸借対照表は財務状況を示し、固定資産の基本財産は前年度と動きがない。流動資産43,320,804円であるが、その中には未収会費5,941,000円が含まれている。これは2021・2022年度の2箇年度分の会費滞納額の合計となる。さらに、貯蔵品は販売用の図書類。仮払金は、今年度総会の実行委員会への既支払金で、2023年度予算として執行されるもの。貸借対照表の考え方では、未収会費も債権という資産に含まれる。現在、会員の年会費は前納をお願いしている。滞納会員には、事務局あるいは理事から督促を行って会費の確保に務めた。会員の皆様には会費の納入に関して重ねてご協力をお願いしたい。正味財産は、現在の当協会の資産の合計で、968,949円が前年度に対する当年度増。
正味財産増減計算書で説明。経常収益43,252,068円、内訳は会費が大部分である。それ以外は、国庫補助金の 2,302,000円と雑収入の2,024,898円である。また、前年度に比して会費収入が760,000円少ないが、会員数の減少による。
国庫補助の収入について、前年度に比べて減少しているのは、コロナ禍により執行できなかった分を2023年度に繰り越したため。支出について2022年度は活動が本来の姿に近くなった。外注費の増は、対面とオンライン併用による総大会開催に伴う実行委員会への委託費等によるもので、旅費の増は各委員会での活動が活性化したためである。各種委員会等は対面とリモートを併用したハイブリッドに変更したが、実際にはリモートによる参加が予想を上回ることとなった。通信運搬費、印刷製本費が前年度より少ないのは、2022年度は選挙のない年度であったため。収入が支出を968,949円上回り、この額が今年度の繰越額となった。
続いて特別会計報告の科学研究費補助金。科研費補助金に雑収入を加えて、収入合計が3,900,100円。旅費交通費と外注費の一部が未執行だが、学術振興会と協議の上、繰り越して2023年度予算として執行することとなった。
監査報告
萩野谷悟監事からの報告。監査は、決算その他を含め、都築恵美子監事と共に、5月10日に考古学協会事務所にて財務担当理事2名及び事務局員との対面で実施した。そして当日、下記の監査報告書が提出された。
(1) 事業報告及び付属明細書は法令及び定款に従い当法人の状況を正しく表示しています。
(2) 理事の職務の遂行に関し、不正の行為又は法令もしくは定款に違反すく重大な事実はありません。
(3) 当法人の業務の適正を確保するために必要な体制の整備等についての理事会の決議の内容は相当です。
(4) 計算書類とその付属明細書は当法人の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示します。
以上、2023(令和5)年5月10日 一般社団法人日本考古学協会 監事 都築恵美子、監事 萩野谷悟
(質問)
次に質問を受ける。質問は対面型。質問者は挙手、起立の上で、所属の都道府県名と氏名を述べ発言する旨を案内した。質問はなかったため、第2号議案の復唱後、拍手により原案どおり承認された。
第3号議案 常務理事の選任に関する件
佐藤宏之副会長からの提案説明。本協会の高麗正前事務局長が、3月末日をもって定年、退職した。4月から、新たに山﨑和巳事務局長が任命されている。規則により常務理事は事務局長が兼ねることになっており、前事務局長は 3月末日をもって常務理事も退任している。常務理事を含む理事の選任は、定款により総会の承認が必要で、4月以降本日まで、常務理事は空席となっているため、新事務局長を常務理事へ推挙すると説明。
次に質問を受ける。質問がなかったため、第3号議案は拍手により原案どおり承認。
第4号議案 名誉会員の承認に関する件
大竹幸恵副会長から提案理由説明がある。名誉会員の選定に際して、名誉会員選考委員会より名誉会員に関する規定と、その推薦基準の内規に基づき、2023年度の名誉会員として木下正史会員の推薦が提案された。1月理事会で提案を承認。続いて木下会員の経歴や業績、推薦理由についての概略説明がある。
木下会員は奈良国立文化財研究所研究員、飛鳥・藤原宮跡発掘調査部室長として平城宮や飛鳥・藤原京の調査研究に従事され、その研究業績は東アジアにおける古代史や都城研究を中心に多方面に渡る。1990年からは東京学芸大学にて教鞭を取り、多くの研究者を育成し、現在は東京学芸大学名誉教授である。日本文化財科学会の会長として文化財に関する自然科学・人文科学両分野の学際的研究の発達及び普及に尽力され、その広い見識をもとに地域の文化財の保護活用に貢献されてきた。近年では世界遺産、飛鳥・藤原登録推進協議会専門委員会の委員長を務めている。本協会には在籍54年を数え、1996年からは長年に亘り委員・理事を歴任され、学会活動の発展に尽力された。特に、協会が法人化され翌年の2004年からは2期4年に亘り、副会長として今日の協会の組織基盤を構築した。これらの多大な貢献と長年の功績に感謝と敬意を込めて、名誉会員の称号を贈ることを説明。
質問を求めたが特になく、第4号議案は拍手により原案どおり承認。なお、次に第5号議案「その他」について、理事会から追加議案などの提案はなく、審議を全て終了する。
[報告事項]
第1号報告 2023年度事業計画・収支予算に関する件
〈1〉2023年度事業計画
藤沢敦理事からの説明。例年と異なるものを中心に説明。2023年度総会は、東海大学で全ての日程について、対面とオンライン併用での開催に漕ぎつけた。今年度の秋は宮城大会となるが、対面とオンライン併用での開催を予定。広報委員会活動報告にあったように、協会公式サイトのリニューアル方針についての検討が進んでいる為、2023年度はリニューアルの作業を進めることを計画。その他の各委員会は、例年通りの活動計画の予定である。
〈2〉2023年度収支予算
肥後弘幸理事から説明。先ず一般会計。収入について、正会員が3,837人で、正会員と賛助会員を含めた会費収入が 38,499,000円、雑収入を含めた収入合計が40,271,000円。これに前年度の繰越差額20,980,000円を加えた収入合計が61,251,000円である。支出については、会費収入の減少が著しいことから、昨年度の実績額をもとに旅費を大幅に見直し、各委員会の予算も切り詰めた。外注費が前年度に比べて5,706,000円の増。これは、新たな協会公式サイトを作成することによるもの。印刷製本費も1,286,000円の増だが、昨年度春からの物価高の影響により、印刷費が全般に大きく値上げしたことと理事選挙の実施に起因する。予備費は前年度に比べて3,962,000円減少している。この額が、今年度収入に対して繰越金を取り崩す額となる。特別会計としては、前年度国庫補助事業として3,900,000円申請した「科学研究費補助金」の内、1,598,000円を繰り越すことの承認を得て支出予定である。
第2号報告 永年在籍会員表彰の件
佐藤宏之副会長からの説明。当協会では、協会設立70周年記念事業の一環として、「会員の顕彰に関する内規」を制定し、2018年度総会において協会に永年在籍し、協会の事業活動に多大な貢献をされた正会員69名の方々を称え、表彰させて頂いた。翌年度、内規を一部改正し、永年在籍者の条件の一つに「正会員として50年在籍し、本会の発展に寄与したもの」を加えた。2019年度総会では1966年~1969年に入会された49名の該当会員を顕彰させて頂いた。本年度も引き続き、50年在籍された1974年入会の24名の正会員を対象者として顕彰させて頂いた。また、対象の正会員の方々には、そのご貢献を称えて協会からシニア・フェローの称号を贈らせて頂く(拍手)。
第3号報告 その他
理事会から追加報告の提案はなく、さらに質問を求めたが特になく、報告事項を終了する。
辻会長より議事閉会の挨拶があり、本日予定の審議・報告事項は全て終了し、議長団の職を解く。以上をもって、第89回総会を終了とした。
表彰式・記念撮影会の実施
名誉会員、永年在籍会員及び協会賞受賞の表彰式を執り行い、その後会場にて記念の写真撮影が行われた。名誉会員に表彰された木下正史会員から開始。表彰状の読み上げの後に、当日欠席により木下会員からの「謝辞」のメッセージが佐藤宏之副会長から代読披露された。次に、永年在籍会員の表彰式が実施され、24名を代表して、高倉洋彰会員から「謝辞」のメッセージが足立佳代理事から代読披露された。続いて、先に報告された日本考古学協会賞大賞、奨励賞、優秀論文賞授与者には、壇上において会長からの表彰状の読み上げがあり、終了後には恒例となった挨拶を頂く。対象となった著作、論文のポイントの解説や今後の研究に対する抱負等が語られた。
議事、表彰等全て終了し、最後に大竹幸恵副会長より閉会の挨拶があり、総て終了となった。
コロナ禍を経て対面を再開し、オンラインと共にハイブリッド方式という形の進行は、つつがなく終了した。この抄録には逐一掲げられなかったが、企画段階から携わった多くの関係諸氏や役員、また当日の裏方となって支えて頂いた方々も忘れてならない。本抄録作成にあたり、特に、書記及び東海大学の実行委員会の協力を頂き、前述に掲げた議長団、議事録署名の諸会員による了解・確認を頂いた。深く感謝申し上げる次第である。
(協会事務局長 山﨑和巳)