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埋文委 第8号

2004年8月2日

文化庁長官  河合隼雄 様
群馬県知事  小寺弘之 様
群馬県教育長 内山征洋 様
太田市長   清水聖義 様
太田市教育長 林 弘二 様
(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団理事長 小野宇三郎 様
日本道路公団東京建設局局長 大津健次 様
日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

成塚向山1号墳の保存に関する再要望について

 標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。

 なお、当件の具体的な措置、対策については8月23日(月)までに、ご回答を下さるようお願いいたします。

一、別添書類 一通

以上

埋文委 第8号
2004年8月2日

要望書

文化庁長官  河合隼雄 様
群馬県知事  小寺弘之 様
群馬県教育長 内山征洋 様
太田市長   清水聖義 様
太田市教育長 林 弘二 様
(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団理事長 小野宇三郎 様
日本道路公団東京建設局局長 大津健次 様
日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

成塚向山1号墳の保存に関する再要望書

 埋蔵文化財保護対策委員会では、去る7月12日に調査関係各位のご案内のもと現地を視察する機会を得、新たな調査成果がもたらされている事実を知るとともに、遺跡の学術的重要性を再認識いたすところとなりました。

 現時点において確認できる本古墳の重要性は、大きく別記の8項目に整理されます。とくに項目2と5に示した副葬品の配列・組み合わせ関係およびその推移や、3に示した墓壙にいたる通路跡の発見など、関東地方における古墳時代成立期の実相を如実に示す成果には注目すべきものがあります。また7に示した古墳と近接する住居跡群との有機的関連性につきましては、墳墓の築造と、それをとりまく古墳時代社会の実体を示唆する実例として、今後学界での議論を呼ぶであろうことが確実視されます。

 また成塚向山1号墳が立地する八王子丘陵を含む東毛地域は、古墳時代前期から後期にかけての古墳や首長居館跡などが数多く分布しており、優れた歴史景観を持つとともに、古代史上重要な意味を持つ地域であります。今後これらの遺跡を保護し活用していく上で、年代的にその起点となる本古墳の存在は、とりわけ重要な位置を占めるものと考えられます。

 以上のような観点から、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、成塚向山1号墳の重要性を再認識いただいた上で、現状のまま保存して史跡として整備し、国民的遺産として将来にわたり有効に保護・活用されますよう再度要望いたします。


別記(学術上の重要性)

  1. 成塚向山1号墳は、丘陵上に立地する群馬県下最古の方墳と考えられること。
  2. 構築墓壙の遺存状態が良好で、木棺を設置した後の丁寧な埋め戻し過程や墓壙上での葬送儀礼の実態、および2次埋葬施設(第2主体)の設置過程が正確に復元可能であること。
  3. 墓壙の北辺において、木棺を搬入する際に設けられ、埋葬の完了と同時に埋め戻された墓道ないし作業道と呼ばれる切り通し状の通路跡が完全な遺存状態で確認さ れたこと。本遺構は関東地方における初の発見としても注目される。
  4. 墓壙底に据え付けられた割竹形木棺ないし船形木棺(第1主体)の内部には各種の副葬品が、それぞれ元の副葬状態を保ったまま発見され、埋葬施設の遺存状態は良好であること。
  5. 第1主体における副葬品の組み合わせ関係は、弥生時代終末期から出現期古墳の特徴を保持しており、関東地方の前期古墳のなかでは古相を呈すること。
  6. 第2主体における副葬品の組み合わせ関係は前期後半の典型的様相を示しており、本古墳の中で前期古墳における副葬品の変遷過程をたどれる貴重な実例であるこ  と。
  7. 1号墳の北西側、すなわち南側の平野部から見て背後に隠れる斜面一帯からは17棟の竪穴住居跡が確認されており、これら住居跡群の空間的配列は1号墳を起点として扇状に広がることから、両者には密接な関係が指摘されること。
  8. 1号墳の南側には、約2世紀の後に横穴式石室を有する2号墳が単独で築かれており、その特異な位置関係からみて、古墳時代後期における祖霊祭祀の系譜付けないし由緒付け行為の跡が推定できること。
以上