HOME > 文化財保護 > 要望書


埋文委 第15号

2004年9月15日

文化庁長官   河合隼雄 様
新潟県知事   平山征夫 様
新潟県教育長 板屋越麟一 様
柏崎市市長   西川正純 様
柏崎市教育長  小林和徳 様
柏崎市議会議長 今井元紀 様
独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長 鈴木孝男 様
日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

柏崎市軽井川南遺跡群の保存に関する要望について

 標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容をもつものでありますので、貴殿において、その保存の対策を速やかに講ぜられることを要望いたします。

 なお、当件の具体的な措置、対策については10月1日(金)までに、ご回答を下さるようお願いいたします。

一、別添書類 一通

以上

埋文委 第15号
2004年9月15日

要望書

文化庁長官   河合隼雄 様
新潟県知事   平山征夫 様
新潟県教育長 板屋越麟一 様
柏崎市市長   西川正純 様
柏崎市教育長  小林和徳 様
柏崎市議会議長 今井元紀 様
独立行政法人中小企業基盤整備機構理事長 鈴木孝男 様
日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 近藤英夫

柏崎市軽井川南遺跡群の保存に関する要望について

 新潟県柏崎市の市街地南西方約3qの丘陵地帯に展開する軽井川南遺跡群では、「柏崎フロンティアパーク」建設事業(産業集積団地造成)に伴う大規模な発掘調査が2003年度から継続的に実施され、奈良〜鎌倉時代のきわめて大規模な製鉄遺跡群が良好な状態で検出されております。

 開発対象地域内からは試掘調査の結果、現在までに32遺跡が把握され、そのうちの19遺跡が製鉄関連遺跡であることが明らかとなっており、これまでの調査では製鉄炉21基、鋳造用溶解炉3基以上、鍛冶炉5基をはじめ、木炭窯101基以上が確認されております。とくに溶解炉は県内で初めての発見であり、獣足ほかの鋳型片も検出されるなど、数多くの注目すべき成果が上げられております。

 これらの遺構群は開発地域内の広大な範囲に濃密な分布を示しており、鉄生産にかかわる製錬・精錬・鋳造・燃料生産等の作業工程の全貌が把握できる、稀少な製鉄遺跡群であります。その規模は、福島県金沢製鉄遺跡群や福岡県元岡遺跡群に匹敵するもので、日本海沿岸のみならず全国的に見ても屈指の質と量を有する遺跡群であることは明白です。また、遺跡近郊の海岸部には豊富な砂鉄資源が存在することを含めて、柏崎周辺地域における古代社会から中世社会への転換の原動力になったとも考えられるその歴史的役割については、計り知れないものがあります。本遺跡群は、古代〜中世の鉄生産技術や手工業生産体制の実体・変遷を復原するばかりではなく、越後地域ひいては日本海沿岸地域の歴史を明らかにしていく上で、きわめて高い学術的価値を持つものであると考えます。

 しかしながら、現状の調査体制や予算・期間で十分な発掘調査を行うことは、到底困難と言わざるを得ません。さらに、製鉄関連遺構群の分布が谷部の沖積範囲にまで及ぶ可能性も看過できず、このままの状態で調査が進めば、文化財保護の観点から将来にわたり大きな禍根を残すことにもなりかねません。

 以上のことから日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、国民的遺産である遺跡の保護・活用の観点から、下記のとおり要望いたします。

  1. 軽井川南遺跡群における製鉄遺跡群について、谷部分の未調査区域を含めた詳細な範囲確認調査を行った上で、十分な調査体制・期間により発掘調査を行うこと。
  2. 産業集積団地造成事業を見直して、軽井川南遺跡群を地域の文化遺産として周辺の歴史的環境とともに保全し、国史跡化を含めた十分な保護・活用の措置を講じること。
以上