2004年9月21日
文化庁長官 河合隼雄 様 埼玉県知事 上田清司 様 埼玉県教育委員長 稲葉喜徳 様 さいたま市長 相川宗一 様 さいたま市教育委員長 臼杵信裕 様 さいたま市遺跡調査会長 吉本富男 様
標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上きわめて重要な内容と意義をもつものであることが判明しつつありますので、貴殿において、遺跡の保存処理を速やかに講ぜられることを要望いたします。
なお、当件については、調査期間などの諸点におきまして緊急性を要しますので、具体的な措置、対策につきまして9月24日(金)までに、ご回答をいただきますようお願いいたします。
一、別添書類 一通
文化庁長官 河合隼雄 様 埼玉県知事 上田清司 様 埼玉県教育委員長 稲葉喜徳 様 さいたま市長 相川宗一 様 さいたま市教育委員長 臼杵信裕 様 さいたま市遺跡調査会長 吉本富男 様
さいたま市三室に所在する馬場小室山遺跡は、縄文時代中期から晩期までの長期にわたり継続して営まれた遺跡であり、埼玉県を代表する遺跡として全国的にも周知されております。1969年以降、十数回にわたる発掘調査行われており、考古学的に極めて注目される数多くの知見が明らかとなっております。
とくに縄文時代中期においては直径150メートルにおよぶ環状集落が形成されていること、後期から晩期にかけては竪穴住居跡とともに墓域や特殊な土坑が構築されるとともに、直径数十メートルにおよぶ環状盛り土遺構が形成されていることなどが挙げられます。また土偶装飾付土器・人面画土器(埼玉県指定有形文化財)の他、耳飾・土版・石棒・石剣・各種精製土器なども多数発見され、縄文時代後・晩期社会の儀礼と祭祀を巡る諸問題を総合的に解明するためには欠くべからざる遺跡となっています。
このように、馬場小室山遺跡は学術上の諸課題解明が期待できる重要な遺跡として位置付けられていますが、その中枢部と見なされる地域において今年度民間の宅地造成が計画され、現在さいたま市遺跡調査会による発掘調査が実施されております。調査の期限は9月末までと聞きおよんでおりますが、9月中旬までの進捗状況を見ると、計画予定地の約半分にあたる盛り土遺構および下位の遺構については、ほとんどが手つかずの状態にあります。このままでは調査未了のまま破壊に至ると危惧される状況にあり、埋蔵文化財保護行政上極めて憂慮すべき事態と考えます。
以上のことから日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、国民的遺産である遺跡の保護・活用の観点から、関係各位に対して以下の通り要望いたします。