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理事の杉井です。

2017年7月5日から9日にかけて九州北部を豪雨が襲い、甚大な被害が発生しました。

まだ行方の分からない方も多く、事態はきわめて深刻です。

そうしたなか、7月12日付けの読売新聞にて、この豪雨災害による文化財の被災状況が報道されました。

以下にwebサイトのアドレスを貼り付けておきます。

http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20170712-OYS1T50056.html

http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20170712-OYS1T50047.html

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理事の杉井です。

7月5日の今日、「災害と考古学」と題したブログが公開されました。

その使い方を学ぶこともかねて、最初の記事をアップします。

平成28年熊本地震の発生から1年3ヶ月になろうとしています。そうした今週、日曜日と水曜日に2つのシンポジウムが熊本で開催されました。

1つは、7月2日、「石垣復旧と石工のあり方」と題して、熊本大学工学部百周年記念館で、もう1つは、7月5日、「大規模災害時における博物館の役割」と題して、くまもと県民交流館パレアで。

どちらにも参加しましたが、いずれも100名を超える聴衆が集まり、みな熱心に議論に耳を傾けていました。その様子をみながら、意識的に仕掛けていくことの大切さを実感しました。

忘れないためにも、覚えているためにも、そして文化財への関心を高めるためにも・・・

「大規模災害時における博物館の役割」の様子

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 日本考古学協会東日本大震災対策特別委員会では、活動を終えるにあたり、5年間の活動をまとめた報告書を刊行いたしました。ここに公開いたしますので、是非ご覧ください。

※新聞社との著作権交渉・契約により、新聞記事を削除した部分があります。

報告書

目次

序  文                      一般社団法人日本考古学協会会長 谷川 章雄 ⅰ

はじめに        一般社団法人日本考古学協会東日本大震災対策特別委員会委員長 渋谷 孝雄 1

第Ⅰ部 特別委員会報告
第1章  特別委員会設置の趣旨と経緯
(1)特別委員会設置の経緯                           佐藤 宏之 5
(2)設置の趣旨と委員会の体制                         佐藤 宏之 6
(3)特別委員会活動の概要                           佐藤 宏之 7
第2章  被災状況と対応
(1)会員の被災状況と対応                           佐藤 宏之 12
(2)文化財レスキュー活動への支援                       佐藤 宏之 12
第3章  特別委員会の活動
(1)被災直後の実情調査                            石川日出志 14
(2)被災自治体へのアンケート調査                       渋谷 孝雄 16
(3)被災自治体への実情調査 
             佐藤 宏之・石川 日出志・渡邉 泰伸・高倉 敏明・玉川 一郎・菊地 芳朗 21
(4)被災3 県教育委員会との面談                        渋谷 孝雄 34
(5)声 明                                  佐藤 宏之 41
(6)総会セッション                              佐藤 宏之 42
(7)文化庁面談                                渋谷 孝雄 44
(8)文化財防災ネットワーク推進会議への参画                  飯島 義雄 50
第4章  復興調査への対応と調査の成果
(1)岩手県                                  八木 光則 54
(2)宮城県                                  高倉 敏明 72
(3)福島県                                  玉川 一郎 93
(4)福島第一原発事故への対応                   菊地 芳朗・玉川 一郎106
(5)復興調査成果報告会                            河野 一也114
(6)第Ⅰ部のまとめ                                佐藤 宏之136

第Ⅱ部 学会・博物館の活動と埋文行政の取り組み
第5章  文化財レスキューの取り組み
(1)岩手県                                   鎌田 勉 139
(2)宮城県                                   藤沢 敦 141
(3)福島県                                   本間 宏 143
(4)茨城県                                   田中 裕 148
第6章  文化庁の諸政策とアンケート結果
(1)復興事業に伴う埋蔵文化財の取扱いをめぐる文化庁の政策           渋谷 孝雄150
(2)復興事業に関連する発掘調査についてのアンケートと結果           八木 光則167
第7章  マスコミ報道と復興調査
(1)復興事業と埋蔵文化財に関する報道                     渡邉 泰伸191
(2)マスコミの復興調査報道の課題              岩手日報論説委員 黒田 大介196
第8章  震災に関する研究・普及活動
(1)考古学関連学会・研究会・科研費                      富山 直人200
(2)学術会議                                 石川日出志204
(3)博物館等の展示普及活動                    富山 直人・飯島 義雄206

第Ⅲ部 総括と提言
第9章  特別委員会活動の総括
(1)職員派遣と調査体制及び発掘調査                      渋谷 孝雄219
(2)発掘調査報告書                              渋谷 孝雄225
(3)復興調査の意義と活用                           渋谷 孝雄226
(4)考古学の力の再確認                            渋谷 孝雄228
第10 章 今後への提言
(1)復興調査の見通し 報告書積み残し問題                   佐藤 宏之229
(2)文化財行政の再建                               佐藤 宏之229
(3)原発事故に伴う今後の埋蔵文化財行政                      佐藤 宏之230
(4)将来の大災害に向けた対策                         佐藤 宏之230
(5)学協会・自治体・国の連携                           佐藤 宏之231

英文要旨                        Robert Condon & Katsuyuki Okamura 232

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災害対応委員会
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平成28年熊本地震対策特別委員会の委員を務めている杉井健です。

 このたび、日本考古学協会のホームページに本特別委員会のブログが開設されました。

 どのようなニュースでもそうだとは思いますが、激烈な災害であっても、その発災当初は頻繁に報道され人々の注目を集めますが、時がたつにつれて報道の頻度は低くなり、人々が災害について思いを致す機会は大きく減少していきます。被災地に暮らすものでさえ、自身が日常生活を営む場所以外の情報は、とくに意識しない限り、なかなか入手が困難になります。

 被災文化財についての情報も同様の状況にあるのではないでしょうか。いやむしろ、人々の日々の暮らしに直結しないものであるため、文化財の情報はより伝わりにくいと思われます。

 2016年4月14日の前震、4月16日の本震に始まった平成28年熊本地震では、多くの文化財が被災しました。特別史跡熊本城跡の被災については、多くの皆様の知るところだと思います。

 でも、発災から1年以上が経過したいまの熊本城の様子は、どの程度知られているでしょうか。ましてや、それ以外の被災文化財の現状はどの程度伝わっているのでしょうか。

 私は、特別委員会委員としてはもちろん、被災地熊本に住むものとしても、また文化財にかかわる仕事をしているものとしても、そうした現状につよい危機感を抱いています。

 こうした現状を少しでも改善するべく、被災文化財の現状や文化財に対する被災地熊本の動きなどの情報を発信するため、本ブログを始めます。

 日本考古学協会は、2017年度の総会において、常置委員会としての「災害対応委員会」の設置を議決しました。したがって、本ブログで発信する情報は、平成28年熊本地震に限ったものである必要はないと思います。多くの皆様からも情報をお寄せいただければと思います。

 協会としても(また杉井個人としても)はじめての試みですので、どの程度の頻度で更新できるのか、また適切な情報をお伝えすることができるのか、大いに不安なのですが、ときおりのぞいて下さいますと幸いです。

 よろしくお願い申し上げます。

 

 

前震直後の熊本城(2016.4.15)

本震後の熊本城(2016.4.26)

 

発災1年後の熊本城(2017.4.29)

熊本市中心街からみた熊本城の現状(2017.5.24)

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社会科・歴史教科書等検討委員会
本文

歴史教科書を考える 第15号
2017.5.28 日本考古学協会 社会科・歴史教科書等検討委員会

 昨年発行した『歴史教科書を考える』第14号では、社会科・歴史教科書等検討委員会の10年間にわたる活動の内容をまとめ、全ての協会員に配布した。また、日本考古学協会のホームページの刷新にあたり、近年発行した12号~14号までの『歴史教科書を考える』PDF版をのせたところである。協会員各位への本委員会の活動内容の周知は、さらなる積極的かつ多様な働きかけが必要であることは言を俟たないが、この『歴史教科書を考える』の発行を通じて、本委員会の活動を継続的に発信していくことも極めて重要であると考えている。
 本号では第81回総会(帝京大学)から第83回総会(大正大学)までのポスターセッションの内容について、その概略を説明していきたい。また、2016年度において提出した2つのパブリックコメント(2016年10月、2017年3月)についても資料を提示し説明していきたい。
ポスターセッションについて
・第81回総会(5月、帝京大学) テーマ「小学校学習指導要領等の改訂に対する要望」
 2015年2月2日付で文部科学省に提出した「小学校学習指導要領案の改訂に対する要望書」および「小学校学習指導要領等の改訂に対する改正案」について、その趣旨と具体的内容について述べたものである。
 歴史教育に考古学の成果が適切に生かされるよう、以下の点について強く要望した。
 1.    日本列島全域に普遍的に存在する考古資料を十分に活用し、身近にある郷土の歴史を学ぶ態度を養うこと
 2.    人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、世界史的な視野から人類の歩みを考える視点を育むこと
 具体的に学習指導要領の当該箇所について改正案を提示したものである。詳細な内容は『歴史教科書を考える』13号(2015年5月発行)で示しているのでそちらを参照してほしい。ちなみに、要望書等に先立つ1年前には「小学校学習指導要領案の改訂に対する声明」を提出している。声明から要望書に至る経緯については、『日本考古学協会内81回総会研究発表要旨』を参照してほしい。
 ・2015年度大会(10月、奈良大学) テーマ「小学校社会科(歴史)教科書における弥生・古墳
時代について」
 ・2016年第82回総会(5月、東京学芸大学) テーマ「小学校社会科(歴史)教科書における弥生・
古墳時代」について
 2015(平成27)年度から小学校6年生の社会科(歴史)の授業で新たに改訂された教科書が使用されていることを踏まえ、歴史教育における現状と課題を整理し、日本考古学協会として取り組むべき点を明確にするために、東京書籍、教育出版、日本文教出版、光村図書が発行した教科書について、上記のテーマで検討をおこなった。それぞれの教科書の明らかな間違いを指摘するとともに、2011年版の教科書と比較しながら加除・変更点等について検討した内容を掲示した。詳細は『日本考古学協会第82回総会研究発表要旨』を参照してほしい。
 ・2016年度大会(10月、弘前大学) テーマ「2016年度中学校社会科(歴史)にみる旧石器~古
墳時代の扱い」
 ・2017年第83回総会(5月、大正大学) テーマ「2016年度中学校社会科(歴史)にみる旧石器~古
墳時代の扱い」
 2016(平成28)年度より、中学校の社会科(歴史)の授業で新たに改訂された教科書が使用されていることを踏まえ、歴史教育における現状と課題を整理し、日本考古学協会として取り組むべき点を明確にするために、東京書籍、教育出版、清水書院、帝国書院、日本文教出版、育鵬社、自由社、学び舎の合計8社を対象としてその内容を検討した。それぞれの教科書の明らかな間違いはもとより、中学校段階の教科書の問題点は、続縄文文化や貝塚文化など、北海道・東北北部、南西諸島の歴史を記述した教科書がほとんどないか、あってもコラム程度という現状である。現行学習指導要領には「身近な地域の歴史」とあり、それは最新の学習指導要領(案)においても踏襲されていることからすれば、北海道・東北北部、南西諸島の子どもたちは自らの住む地域の歴史を教科書では学べないということになる。また、いわゆる天皇陵古墳(同一の古墳)の表記が教科書によって異なっているという現状は、現在の考古学界ならびに歴史学界における混乱をそのまま示しているともいえよう。詳細は『日本考古学協会第83回総会研究発表要旨』を参照してほしい。
2016年10月に提出したパブリックコメントについて(3頁1~4)
・「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に対するパブリックコメント
 1.134頁4行目 「博物館や資料館、図書館などの公共施設についても引き続き積極的に活用すること」
について
日本列島全域に普遍的に存在する考古資料は、それぞれの地域の博物館・資料館等に保管されているものなので、体験プログラム等、博物館・資料館の積極的かつ具体的な活用の方法を次期学習指導要領・学習指導要領解説に明示すべきとした。
 2.135頁 社会科、地理歴史科、公民科における教育のイメージ 別添3-1【高等学校】①、【中学校】社会科③、【小学校】社会科(第3~6学年)③について
 日本列島における弥生時代以降の歴史について、北海道および沖縄の独自な文化の存在を次期学習指導要領に明確に位置づける必要性を述べた。
 3. 141頁 小学校社会 考えられる視点例 5~6行目 「時代、起源、由来」について
 「起源」という視点が新たに示されたことを評価しつつ、人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、グローバルな視点を学ぶよう次期小学校学習指導要領に盛り込む必要性を述べた。
2017年3月に提出したパブリックコメントについて(4頁1~4)
・「小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案」に対するパブリックコメント
 1.30頁の第1目標(1)および(3)、42頁の[第6学年]2内容(2)ア(ア)、46頁の第3指導計画の作成と内容
の取扱い2(1)および(3)について
 小学校学習指導要領案の上記の箇所には、地域や我が国の歴史や伝統と文化、あるいは身近な地域および国土の遺跡や文化財といった記述があるが、日本列島における決して一律ではない歴史の流れ、すなわち北海道や沖縄の文化について子どもたちが学べるよう小学校学習指導要領および同解説に正確に位置づけられることを要望した。
 2.42頁の[第6学年]2内容(2)ア(ア)、43頁の2内容(2)イ(ア)および45頁3内容の取扱い(2)キについて
小学校学習指導要領案の上記の箇所に「起源」という視点が新たに示されたことを評価しつつ、その始まりである日本列島における人類の出現、旧石器時代を学ぶことは不可欠であり、人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、人類の歩みをグローバルに考える視点を育むことを小学校学習指導要領および同解説に盛り込むことを要望した。
 3.45頁の[第6学年]3内容の取扱い(2)カについて
 小学校学習指導要領案の上記の箇所の「年表や絵画」の前に「遺跡や文化財」という文言を加えることを要望した。
 4.34頁の2内容B(1)ア(イ)および40頁の3内容の取扱い(3)アについて
 中学校学習指導要領案の上記の箇所について、日本列島における弥生文化以降の歴史の流れが一律ではないことから、北海道や沖縄の文化を学習できるよう中学校学習指導要領および同解説に位置づけられることを要望した。
             
2016年10月に提出したパブリックコメント
           
日考協第56号
2016年10月5日

文部科学省 初等中等教育局教育課程課  様
一般社団法人日本考古学協会
会 長  谷 川 章 雄
 平成28年9月9日に公表されました次期学習指導要頷等に向けたこれまでの審議のまとめに対するパプリックコメントの実施について、一般社団法人日本考古学協会としての意見を申し述べることにいたします。学習指導要領の改訂にあたり、歴史教育に考古学の成果が適切に活かされるよう、以下の点について強く要望します。なお、一般社団法人日本考古学協会といたしましては、次期学習指導要領改訂に係る協力は惜しまない所存です.

1.134頁4行目 「博物館や資料館、図書館などの公共施設についても引き続き積極的に活用すること」について
2.185頁  社会科、地理歴史科、公民科における教育のイメージ  別添
3- 1【高等学校】①、【中学校】社会科③、【小学校】社会科(第3~6学年)③について
3.141頁 小学校社会 考えられる視点例 5~6行目 「時代、起源、由来」について

件名:【次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめへの意見】
氏名:一般社団法人日本考古学協会
職業:団体
住所:東京都江戸川区平井5-15-5-4F
電話番号:03-3618-6608
意見:分類番号⑨第2部2.(2)社会、地理歴史、公民
•134頁4行目 「博物煎や資料館、図書館などの公共施設についても引き続き積極的に活用すること」について
 博物館や資料館、図書館などの公共施設の活用については、これまでも行なわれてきたことですが、引き続き積極的な活用を促していることは極めて重要かつ評価できると考えます。そのためには、日本列島全域に普遍的に存在する考古資料を保管する地域の博物館・資料館の充分な活用や、それらの館における子供たちの発達段階を踏まえた体験学習プログラムの活用が不可欠です。博物館・資料館を積極的かつ具体的に活用する方法を次期学習指導要領・学習指導要領解説に明示すぺきと考えます。社会科教育からの視点のみならず、この審議のまとめの眼目である「主体的・対話的で深い学び」の実現にも大きく寄与すると考えます。

件名:【次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめへの意見】
氏名:一般社団法人日本考古学協会
職業:団体
住所:東京都江戸川区平井5-15-5-4F
電話番号:03-3618-6608
意見:分類番号⑨第2部2.(2)社会、地理歴史、公民
•135頁  社会科、地理歴史科、公民科における教育のイメージ 別添
3 – I【高等学校】①、【中学校】社会科③、【小学校】社会科(第3~6学年) ③について
 日本列島における弥生文化以降の歴史の流れは一律ではなく、北海道には続縄文文化・擦文文化・オホーツク文化・アイヌ文化、沖縄には貝塚文化・グスク時代の文化があり、それぞれ独自の文化が存在します。これらの文化について、子供たちが学習できるよう、次期学習指導要領に位置づけられることを要望します。
件名:【次期学習指導要領等に向けたこれまでの寄儀のまとめへの意見】
氏名:一般社団法人日本考古学協会
職業:団体
住所:東京祁江戸川区平井5-15-6-4F
電話番号:03-3618-6608
意見:分類番号⑨第2部2.(2)社会、地理歴史、公民
•141頁 小学校社会 考えられる視点例 5~6行目 「時代、起源、由来」について
 今回の審議のまとめにおいて、新たに「起源」という視点が示されたということは、極めて重要かつ評価できると考えます。その点について、人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、グローバルな視点から人類の歩みを考える視点を育むことを次期小学校学習指導要領に盛り込むことを要望します。具体的には、日本列島における人類の出現、すなわち旧石器時代を是非とも明示すべきであると考えます。現生人類は10~7万年前にアフリカ大陸を出て何世代もかけて世界各地へと拡散し、遅くとも4~3万年前には日本列島に人類が出現することは定説です。日本列島における人類の出現を学ぶことは、グローパル社会に生きる子供たちの国際理解を深めることは間違いないと確信します。
2017年3月に提出したパブリックコメント
提出意見1:42頁の【第6学年】2内容(2)イ(ア)および45頁の3内容の取扱い(2)キについて
 2016年9月9日に公表されました審議のまとめにおいて、 新たに「起源」という視点が示されたということは、極めて重要かつ評価できると考えます。
 しかし、【第6学年】2内容(2)ア(ア)では現行学習指導要領と同じ「狩猟・採集」という表現であり、日本列島における人類の出現・旧石器時代が明示されていません。現生人類は10~7万年前にアフリカ大陸を出て何世代もかけて世界各地へと拡散し、遅くとも4~3万年前には日本列島に人類が出現することは定説です。日本列島における人類の出現を学ぶことが、グローバル社会を生きる子供たちの国際理解を深めることは間違いないと確信します。
 また、2内容(2)イ(ア)には「我が国の歴史上の主な事象を捉え、我が国の歴史の展開を考える」、3内容の取扱い(2)キには「我が国は長い歴史をもち伝統や文化を育んできた」とあります。我が国の歴史を学ぶためには、その始まりである日本列島における人類の出現・旧石器時代を学ぶことは不可欠ではないでしょうか。人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、人類の歩みをグローバルに考える視点を育むことを小学校学習指導要領および同解説に盛り込むことを要望します。
提出意見2:小学校学習指導要領案:45頁の【第6学年】3内容の取扱い(2)カについて
 「年表や絵画」の前に「遺跡や文化財」という文言を加えることを要望します。
提出意見3:中学校学習指導要領案:34頁の2内容B(1)ア(イ)および40頁の3内容の取扱い(3)アについて
 2内容B(1)ア(イ)の表題を「日本列島における国家形成と多様な文化」に訂正することを要望します。また、「農耕を行わない地域や大和政権(大和朝廷)の勢力が及ばない地域があることにも留意すること」という文章をこの項目の末尾に加えることを要望します。
 3内容の取扱い(3)アには「農耕の広まり」と「古墳の広まり」という文言がありますが、日本列島における弥生文化以降の歴史の流れは一律ではなく、北海道には続縄文文化・擦文文化・オホーツク文化・アイヌ文化、沖縄には貝塚文化・グスク文化があり、それぞれ独自の文化が存在します。子供たちが自らの地域のこれらの文化について学習できるよう、中学校学習指導要領および同解説に位置すけられることを要望します。
おわりに
 近年の本委員会の活動内容を紹介してきたが、今後、正式に発表される学習指導要領およびそれに基づいて発行される教科書の内容について、本委員会さらには日本考古学協会として注視し、検討を加えたい。 

発信者
研究倫理
本文
 かねてより協会が参画してきた3学協会(北海道アイヌ協会・日本人類学会・日本考古学協会)によるラウンド・デーブルの議論を取りまとめた標記の最終報告書が出来上がりましたので、会員の皆様に公表させていただきます。よろしくご参照ください。 最終報告書  
発信者
埋蔵文化財保護対策委員会
要望書の内容

埋文委 第12号
2017年3月31日


文化庁長官 宮田 亮平 様
福岡県知事 小川 洋 様
福岡県教育庁 城戸 秀明 様
筑紫野市長 藤田 陽三 様
筑紫野市教育長 上野 二三夫 様

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
教育長 藤沢 敦

筑紫野市前畑遺跡の保存に関する要望について

標記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上極めて重要な内容をもつものでありますので、貴殿におかれましては、適切な保存の対策が速やかに講じられることを要望いたします。
なお、誠に恐縮ですが、当県の具体的な措置、対策については2017年 4月14日(金)までに、
当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛にご回答を下さるようお願いいたします。


一、別 添 書 類 一通


以上


埋文委 第12号
2017年3月31日


文化庁長官 宮田 亮平 様
福岡県知事 小川 洋 様
福岡県教育庁 城戸 秀明 様
筑紫野市長 藤田 陽三 様
筑紫野市教育長 上野 二三夫 様

一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
教育長 藤沢 敦

筑紫野市前畑遺跡の保存に関する要望書

一般社団法人日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、筑紫野市大字若江及び筑紫地内に所在する前畑遺跡で発見された古代の土塁遺構の適切な保存を要望します。
 2016年12月28日に筑紫野市教育委員会から発表された調査成果によれば、前畑遺跡で、南北方向に総延長500m弱にわたる古代の大規模な土塁遺構が確認されています。この土塁遺構は、7世紀後半に築造された可能性が大きく、調査地の北側・南側にさらに伸びることも確実なようです。
 発見された土塁遺構の性格については、天智2(663)年に、朝鮮半島の白村江において、
わが国と百済の連合軍が、唐・新羅連合軍と戦った結果・配線し、次の敵軍襲来に備えるため、国の総力を挙げて構築された大宰府都城の防衛ライン(羅城)の一角を占める可能性が高いものと考えられます。
この防衛ラインについては、大宰府の北側においては。水城や小水城群を繋げたラインが確実となっていましたが、
南東側では十分に確認がとれていませんでした。前畑遺跡における土塁遺構は、そうした大宰府を取り囲む防衛ラインの一端と想定され、大宰府のみならず日本古代都城の中で構築された本遺跡は、学術的価値が極めて高いといえます。
隣接する自治体と協力した調査により、広域にわたる大宰府都城の防衛ラインの実態解明が進めば、その歴史的価値はいっそう明確になることは間違いありません。
 以上に鑑み、一般社団法人日本考古学協会埋蔵文化保護対策委員会は、
前畑遺跡の土塁遺構の保存のために、以下の措置が取られることを要望します。


1.前畑遺跡の土塁遺構およびこれに連続すると想定される関連遺構の有無について実態の解明を図り、
これらの遺構群を一体として国史跡に指定し保存すること。


以上
 

掲載開始日
発信者
社会科・歴史教科書等検討委員会
本文

提出意見1:42頁の【第6学年】2内容(2)イ(ア)および45頁の3内容の取扱い(2)キについて
2016年9月9日に公表されました審議のまとめにおいて、 新たに「起源」という視点が示されたということは、極めて重要かつ評価できると考えます。
 しかし、【第6学年】2内容(2)ア(ア)では現行学習指導要領と同じ「狩猟・採集」という表現であり、日本列島における人類の出現・旧石器時代が明示されていません。現生人類は10~7万年前にアフリカ大陸を出て何世代もかけて世界各地へと拡散し、遅くとも4~3万年前には日本列島に人類が出現することは定説です。日本列島における人類の出現を学ぶことが、グローバル社会を生きる子供たちの国際理解を深めることは間違いないと確信します。
 また、2内容(2)イ(ア)には「我が国の歴史上の主な事象を捉え、我が国の歴史の展開を考える」、3内容の取扱い(2)キには「我が国は長い歴史をもち伝統や文化を育んできた」とあります。我が国の歴史を学ぶためには、その始まりである日本列島における人類の出現・旧石器時代を学ぶことは不可欠ではないでしょうか。人類の発生から始まる歴史を明確に位置づけ、人類の歩みをグローバルに考える視点を育むことを小学校学習指導要領および同解説に盛り込むことを要望します。

提出意見2:小学校学習指導要領案:45頁の【第6学年】3内容の取扱い(2)カについて
 「年表や絵画」の前に「遺跡や文化財」という文言を加えることを要望します。

提出意見3:中学校学習指導要領案:34頁の2内容B(1)ア(イ)および40頁の3内容の取扱い(3)アについて
 2内容B(1)ア(イ)の表題を「日本列島における国家形成と多様な文化」に訂正することを要望します。また、「農耕を行わない地域や大和政権(大和朝廷)の勢力が及ばない地域があることにも留意すること」という文章をこの項目の末尾に加えることを要望します。
 3内容の取扱い(3)アには「農耕の広まり」と「古墳の広まり」という文言がありますが、日本列島における弥生文化以降の歴史の流れは一律ではなく、北海道には続縄文文化・擦文文化・オホーツク文化・アイヌ文化、沖縄には貝塚文化・グスク文化があり、それぞれ独自の文化が存在します。子供たちが自らの地域のこれらの文化について学習できるよう、中学校学習指導要領および同解説に位置すけられることを要望します。

掲載開始日
発信者
埋蔵文化財保護対策委員会
回答内容

加危管第764号
平成29年2月15日


一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長藤沢敦様


加古川市長岡田康裕
加古川市教育長田渕博之


加古川市中道子山城の保存に関する要望について(回答)

2017年2月2日付埋文委第8号により要望のありました標記のことについて、下記のとおり回答いたします。

1.要望事項「中道子山城における無線塔の建設の撤回を指導すること。」について
中道子山城跡においては、平成29年1月30日から放送事業者による中継局設置工事が開始されております。
本市では防災行政無線が未整備であり、土砂災害のような局地的な災害時に、避難情報等を伝達する手段の整備が懸案事項となっていたところ、一昨年に当該事業者より、市有地である当地への中継局設置について相談を受けました。
当該事業者によって提供されるV-Lowマルチメディア放送は、細かな地域を限定した災害情報伝達が可能であり、本市懸案事項である局地的災害時の情報伝達に有効な手段となり得ることから、当地への中継局設置によって市域のほぼ全域が受信可能エリアとなることは、公益上望ましいことです。
中道子山城跡については本市においても重要な遺跡のーつと認識しており、今回の中継局設置については、文化財に対する影響が可能な限り無くなるよう指導を行いながら、関係機関と協議を重ねてまいりました。その過程で、遺構が破壊されることが無いよう、工事計画をその都度変更していただきました。
要望書の中で、事前調査で発見された石積み遺構やピットなどの遺構が破壊されることは大きな問題であることが記されています。これらは、曲輪縁部の礫敷きや岩盤のピット状の掘込みのことを指していると察しますが、これらの遺構の可能性のあるものは、工事区画を変更することで、破壊されることなく保存されています。
また、今回の設置工事につきましては、兵庫県立自然公園条例に基づく県の許可を得、また森林法に基づく市への届出を行った上で事業が進められていること等から、手続きについても問題がないものと認識しております。
以上のことから、中継局の建設について、撤回の指導を行うことは考えておりません。


2.要望事項「城跡の正確な範囲と構造を確認し、国史跡指定を視野に入れた保存措置を講じること。」について
中道子山城跡については、国史跡指定を視野に入れ、昭和62年度から平成2年度まで市有地において発掘調査を行うなど、城跡の正確な範囲と構造の確認に取り組んでまいりました。
今回の工事に際しては、事前調査の結果も合わせ、城跡の範囲と構造を把握した上で、事業者に指導を行い、遺構の保存措置を行ったところです。
今後とも、この遺跡の保存と活用に努めてまいります。
 

掲載開始日
発信者
埋蔵文化財保護対策委員会
要望書の内容

埋文委 第8号
2017年2月2日


文化庁長官 宮田 亮平様
兵庫県知事 井戸 敏三様
兵庫県教育委員会教育長 高井 芳朗様
加古川市長 岡田 康裕様
加古川市教育委員会教育長 田渕 博之様


一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢 敦

加古川市中道子山城の保存に関する要望について

表記の件について、別添書類の如く、当該遺跡は学術上極めて重要な内容をもつもので
ありますので、貴殿におかれましては、適切な保存の対策が速やかに講じられることを要
望いたします。
なお、まことに恐縮ですが、当件の具体的な措置、対策については2017年2月17日(金)
までに、当協会埋蔵文化財保護対策委員会委員長宛に回答を下さるようお願いいたします。




一、別添書類 一通


以上



埋文委 第8号
2017年2月2日


文化庁長官 宮田 亮平様
兵庫県知事 井戸 敏三様
兵庫県教育委員会教育長 高井 芳朗様
加古川市長 岡田 康裕様
加古川市教育委員会教育長 田渕 博之様


一般社団法人日本考古学協会
埋蔵文化財保護対策委員会
委員長 藤 沢 敦


加古川市中道子山城の保存に関する要望書  

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、中道子山城主郭脇に計画されている無線
塔建設に強く反対します。
中道子山城は、中世後期から戦国時代にかけての播磨国を代表する山城です。国史跡置
塩城と並ぶ、守護赤松氏による東播磨支配の拠点と位置づける説もあります。山麓からの
比高約250m、周辺の主要城郭を眼下に望む眺めは、「遠見の城」と呼ばれるように、本城
がこの地方の中心的な地位にあることをよく表しています。山上の主要遺構にほとんど損
傷はなく、土塁・切岸・虎口・横堀などが往時の姿を良好にとどめています。土塁の基底
部に設けられた石垣は、城郭に石垣が用いられる初期の事例として、学術的価値はきわめ
て高いものです。播磨の地域史のみならず、戦国期の城郭を研究する上で全国的にも重要
といえるでしょう。
本無線塔の予定地は、主郭とされる郭直下の腰郭部分です。事前調査で発見された石積
み遺構やピットは、城を構成する建造物の一部である可能性があり、無線塔建設によって
これら遺構が破壊されることは大きな問題と考えます。加えて無線塔により、城跡からの
北・西部分への眺望は遮られ、中道子山城の存在の根幹をなす「遠見の城」という意義が
大きく失われ、同時に城跡全体の景観も損なわれます。
以上のことから、日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会は、下記の通り要望いたし
ます。



1.中道子山城における無線塔の建設の撤回を指導すること。
2.城跡の正確な範囲と構造を確認し、国史跡指定を視野に入れた保存措置を講じること。


以上

掲載開始日