2004年10月29日
文化庁長官 河合隼雄 様 埼玉県知事 上田清司 様 埼玉県教育長 稲葉喜徳 様 さいたま市長 相川宗一 様 さいたま市教育長 臼杵信裕 様
標記の件について、別紙書類の如く、当該遺跡の学術上の重要性に鑑み、早急なる保護・保存対策を実施されるよう、改めて要望させていただきます。現在、充分な保護・保存対策が執られないまま、民間業者による開発行為が進行しつつあります。文化財の保護は行政の責務であることを深く認識され、馬場小室山遺跡の保護・保存対策を速やかに講じられますよう再度要望するものです。
なお、当件の具体的措置・対策につきましては、11月12日(金)までにご回答いただきますようお願いいたします。
一、別添書類 一通
文化庁長官 河合隼雄 様 埼玉県知事 上田清司 様 埼玉県教育長 稲葉喜徳 様 さいたま市長 相川宗一 様 さいたま市教育長 臼杵信裕 様
さいたま市三室に所在する馬場小室山遺跡は、埼玉県を代表する遺跡として全国的にも広く周知されており、学術上きわめて重要な内容と意義をもっています。本委員会ではその重要性に鑑み、埋文委第16号(平成16年9月21日付)で、遺跡の保存を前提とした発掘調査体制・期間の見直しや史跡化を含めた整備・活用の措置を要望し、多大な期待をもって調査の推移を見守ってまいりました。
その後の発掘調査では、遺跡の重要性を更に高めるような成果が相次ぎ、多大な関心を寄せていた次第です。すなわち、9月中旬以降の段階で御柱の存在を想起させる大形ピット群が発見されたこと、盛土状遺構では縄文時代中期から晩期に至る竪穴住居跡群等の重層的な形成がみられること、完形土器をはじめとした遺物が大量に出土していることなど、新たな知見が続々と明らかになってきておりました。しかしながらこうした状況であったにも拘わらず、9月30日(木)をもって調査は強制的に打ち切りとなり、およそ3割ほどの調査未了地区を残したまま、遺跡は開発業者に引き渡されてしまいました。
10月27日現在、開発予定地区内では伐木作業が終了した段階で、土器をはじめとして多くの遺物がまだ散乱したままの状態にあり、工事の進捗状況によっては盛土状遺構を含む未調査区の遺構群は、すぐにでも破壊されかねない切迫した状況となっております。開発予定地内のこうした状態を放置することは、看過することができません。
もし遺跡が破壊されることにでもなれば、埋蔵文化財保護行政上きわめて憂慮される事態であり、将来にわたり大きな禍根を残すことは必至です。文化財の保護は行政の責務であるという文化財保護法の精神を遵守し、馬場小室山遺跡の保護・保存について適切な措置を再度ご検討いただきますよう、強く要望いたします。